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未来都市編

 

 〈神side〉

 タニシどもがファランクスと呼ぶ星系の第3惑星キュペリアの神界にある彼専用の豪邸で、主邪神グローはゆったりとしたカウチに腰を掛けてまったりしているところだった。

「下界はどうなったかなー、!?なっ!ま、魔王はどこに!あの穴ぼこはいったい?」

『教えてあげようか?』

「ん?そ、その声は!」

「やっほー!よくもとんでもないことをしてくれたね。成敗してあげるよ」

「ど、どこから入った!神をも恐れぬコミュウ!」


 怒りのあまり思わず立ち上がってしまう主邪神グロー。


「神?しっちゃかめっちゃかにする役にもたたないペーパーの間違いじゃないの?」

「こ、この!言わせ…」

「ておけば、なんて言ったら負け犬確定だよね。このペラペラさん。所詮今では信仰すらされてないただの惑星神ごときができることってたかが知れてるよね(笑)」

「だ、だが、魔王には痛い目にあったであろう?」

「ん?ピングー艦隊のFK系ミサイルで木っ端微塵にしたけど?て言うか、そもそもこの世界最早ファンタジーですらないのだが」

「なっ!」

「ああ!ちなみに勇者達は送還するけど、どこから連れてきた、いや誘拐してきたの?」

「誘拐ではない!世界を邪悪な手から救うためだ!」

「邪悪って僕のこと?信仰もされないからってそんな下手な妄想するだけ無駄だと思うけど?」

「いちいち一言多いな」

「否定しないってことは当たりな訳だね。そっかー、邪悪なのかー。言われたことはなかったなー。(…知ってたけどね)」

「なんか言ったか?」

「いいや、空耳じゃない?」

「まあいいか。神界では仮想敵筆頭だが?この世界の民も言わないだけだろう」

「神界、味方以外滅ぼすべきかな。そろそろ整理ぐらいしないと」


 ちなみに、神界の整理が達成されるのはコミュウらの死後、神界に上って『コミュウ家』派閥を結成。神界の有力派閥『オリュンポス』、『日本神城』、『ヴァルハラ』と激烈な戦争をして、神界、天界の全統一を成し遂げた後になる。


 それはさておき。


「で、なんでここに来た?」

「え?自分で藪突いちゃう?」

「何かあるのか?」

「これが答えだよっと!」


 コミュウから繰り出された目に見えない豪速(かるめ)の正拳によって、主邪神グローの意識は一瞬で刈り取られ、ギュルルルルと高速回転し、凄まじい勢いで壁に激突。ドサッと地に落ちた。


「ふっ、ざまあ(笑)。…さてと、元凶をボコったし、直近の召喚履歴を解読して帰りますか。ピングー!解析できた?」

「ああ。至極簡単だった。タニシ・ウィルスですぐだったよ。セキュリティゆるゆる」


 タニシ・ウィルスとは、コミュウ家サイバー空間軍タニシ部隊のことであり、コミュウ家のサイバー空間に侵入しようとする主に地球人類のコンピュータ・ウィルスどもと日々小競り合い(人類側は聖戦)している。そのため、ハッキングの経験値はかなり豊富。人類側の敗北と同時に国家機密文書をインターネットに無条件(かってに)公開するまでがお約束。


「ま、信仰すらされてない惑星神ってこんなもんだよね。ぼくらが不本意ながら亜神だし、すぐ侵入できちゃうから、なんか物足りない」

「それを言っちゃうとそこの駄目神が可哀想じゃないか(笑)」

「言えてる(笑)」


 コミュウとピングーはひとしきりそこで神?を笑い、本題に戻ることにした。



「さて、まずは勇者ご一行についてから。どこ出身なの?彼ら」

「それがねえ、よりにもよって他の宇宙から誘拐してきたみたい」

「それほどの力がまだ残ってたの!?こんなぼろ神に」

「ぼ、ぼろ神……ククッ。………ともかく、勇者達は履歴によればマウンタント・スタリオン(ミュウ語で巨星)宇宙からとなってるね」

「はぁっ!?この宇宙(ここ)から8宇宙先じゃないか!位置的には近いけど移動すると遠いあの宇宙出身!?」

「そう。ちなみに魔王どもは隣のコミュウ所有宇宙、ベストル・コミュウから来てる」

「……なんだそりゃ。まあ、あそこは色々と混沌だしあり得るけど、勇者達はひどいな」

「さて、どう送還する?」

宇宙跳び(そらとび)、使うしかないじゃん。50人乗れるくらいの船を作るしかないけど」

「うちの造船所使っても1ヶ月はかかるなぁ。先が思いやられる…」


「「はぁああああぁ~…」」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 〈魔王side〉

「魔王さま~、われわれどこに向かってるんですかね~」

「知らん。が、少なくとも島流しだけはなさそうだ」

「大きく揺れないからですね!」

「うむ」


 魔王どもはピングー艦隊のFK系ミサイルで木っ端微塵にされ、RF研魔王部に拘束された。

 現在47万6千弱という、あまりの拘束人数のため大型輸送艦5隻に分かれて運搬されていた。


「しかし、なんで全員生きてんだ?あの惨劇の中で」

「さあ…」


 魔王軍で沈黙が走る。誰も答えなど持ち合わせていなかったからだ。

 そこに魔王部課長代理が答えを与える。


「それはな、この世界じゃ生命ほど貴重なものはないと言うことで特殊魔術『ライフ・シールド』が開発され、今回も使用されたからだ」

「「「「「なんだ(じゃ)そりゃーっ!」」」」」

「あり?それってあり?」

 あまりの衝撃的事実に魔王の語彙が崩壊したようだ。


「ありもなにも宇宙艦隊戦でさえ使われてるとんでもない魔術だぜ。ただでさえ人手不足のこの国に生命軽視はあまりにも無体だ、と上は考えている」

「…人手不足かよ」

「だって、加盟国は年々増える数あれど全国民数、微々たるものの増えてないからな。それどころか国籍の重複すら推奨されているんだ。これのどこが人手が足りてるってんだ」

「じゃあ、あの監視員は?どう見ても生物じゃなさそうだが」

「あれか?あれは自律思考型のロボットだ。いや、勝手に動くゴーレムといった方がいいか」

「「「はぁ!?ゴーレム!?」」」

「ここ、科学社会だよな?な?」

「もちろん。魔術的なものは一切ない純粋な科学技術の結晶だ」

「科学とは恐ろしいものだな。あのゴーレムと同じになるとは」

「進んだ科学は魔術と似たもの、とよく言うしな。最終的には同じ領域に達するんだろうよ。実際、お前らが食らったあのメテオストライク、科学で簡単にできるし」

「「「「はぁっ!?あの常識的に超極悪なあれが!?」」」」

「なんでもありだな、本当に」

「それを言うなら魔術もそうだがね。魔術でできることを科学で再現していっただけだし」

「どっちもどっちだな」

「「わははははは!」」


「結局、魔王様なついちゃったね」

「はじめての友達ができて、じいは嬉しゅうございます」

「あー、部下はいれど友は無しといった感じだったんだね」

「正統の魔王族ゆえ」

「それは仕方ないか。同等の王族はヒューマノイド系だけだし」


「ときに、我らはどこへ行くのだ?」

「ん~、何て言えばいいか…」

 殺されるのかとその場の全員が青ざめる。魔術の準備をするものもいる。


「いや、さすがに殺しはしない。何のための『ライフ・シールド』だよ。それはない。ありえない」

「では、どこに行くのだ」

「我々魔王部の拠点研究所だ。そこは魔王たちが召喚されたところから恐ろしく離れていて、もはや別世界と異っていいだろう。ピンと来ないだろうが」

「「「「???」」」」

「そこは安全なのか?」

「別に取って食う奴はいない。ちょっとした研究の試験に参加してもらうかもわからんが、そこでも『ライフ・シールド』は掛かっているから安心してくれ」

「そこまでとんでもないのがあるのか?」

「たまにあるんだ。研究所がある試験で大爆発したとか」

「「「「………」」」」

「ま、それは着いてからだな」そそくさと離れていく課長代理。

 あまりの無言に耐えかねて脱走したとも言う。


「「「「…逃げたな」」」」




 〈勇者side〉

「なっ、なんだここは!」


 勇者ご一行はタニシ連邦、ファランクス星系を離れ、現宇宙の中心とおぼしきビックバン共和国連邦に来ていた。

 地上に降下した宇宙高速艦と言う船に課長たちと乗り込んだあとは、無音で軌道上に上がり、その後も無音航行した。よって、宇宙航行していることにまったく気づかなかったのだ。


「ええっと…、ここはどこですか?」

「この宇宙の中心ビックバンだ。君たちが召喚されたファランクス星系からは約95億光年離れている」

「「「「「え?95億光年!?い、いつの間に!?」」」」」

 ショックで倒れる者、逆に好奇心のあまり目がギラギラしている者など多数に分類できた。

「いや、5時間半でだが。いやー、さすが軍用艦だな。普通に行くよりも早い」

「「「え?」」」「どこのSFだよ…」

「そのー、普通に行くとどのくらいかかるんです?」

「えーっと、1泊2日くらいだな」

「「「「「……ま、まじかよーっ!!?科学が進みすぎてありえない!?」」」」」

「ここじゃ、これが普通だ。慣れろとは言わんが、努力はしろよ。最低1ヶ月は住むんだからな」

「「「「えー」」」」



 勇者ご一行とRF研関係者たちは広大な敷地を持つ研究施設に来た。

 惑星軌道上の軍港から地上に軌道エレベーターで降下し、地上基地から専用のシャトルで15分。基地から西に約170km離れており、時速680kmで研究施設のあるグリーセ旧大陸の専用滑走路に到着したのであった。

「さあ、我らの本部に到着だ!って大丈夫か?」

「うう…、酔ったかも…」

「そら、エチケット袋だ。そこらに行ってこい」

「は、はい」


「「「「な、な、な、なんだここっ!!」」」」勇者ご一行は揃って唱和した。

「どうだ?広大だろう?」

「「「「「研究施設って、工場かなにか?」」」」」

「あー、島国ならありえんな、たしかに。ここは地球の2倍の大きさのある惑星の大陸だから、土地は余ってんだ。この研究所のオーナーはとんでもない資産家だからこのぐらいになったのさ」

「「「「「………(唖然)」」」」」


 ◇◆◇◆◇◆


 ピングー財閥傘下、コミュウ造船(株)地球・ヘビ王国・アンナナ造船所、所長室にて。

 ここの所長は、獅子人のガリアス・フェイ・グリアード。ピングーの古くからの盟友のひとりだ。

 だからと言ってここの所長にピングーが押したわけではない。ヘビ王国きっての秀才である。


「は?今なんて言いました!?」

「だーかーらー、コミュウ家の宇宙跳び(そらとび)船をコミュウ艦隊に組み込むから、専用艦隊の製作」

「どのくらいかかると思ってんですか!」

「1艦最低半月はかかるよなー…」

「分かってるんなら無茶言わんでください!」

「だって、これコミュウの依頼(ようきゅう)だぜ。手伝うけどさ」

「当然です!じゃ、こちらの仕事をお任せしますねー」


 と、そこらに積み重なっていた書類の山を指差す。


「なっ!めんどくさい書類作業、全部投げやがったなっ!」

「誰かさんたちのせいでとてつもなく面倒な仕事を仰せつかったのでね」

「そりゃないよ…」

「自業自得では?」

「いや、余計な手間ばかり増やしやがったあのアホペーパーが悪い!ついでに丸投げしたコミュウも悪い!」

「そうです!我らは被害者なんですよ!」

「そうだそうだ!」

 被害者であることを両者賛呼する。


 と、造船所筆頭秘書マルエリーナ(虎人)が現れた。


「いい加減にしなさい!!」


「「すみませんでした~!」」


 唐突にコミュウも出現した。


「ピングー、連呼してたけど、そんなに増給されたいのかい」

「滅相もございません」

「そうだろう?」


 このコミュウ連邦では減給が非常に尊ばれる。壮絶な金余りによるものだが、増給なんてされると家庭内での夫婦喧嘩もよくある。普通の社会の増給と同じ意味合いをこの国の減給は持っている。


「はい、あげる」

 ピングーに赤紙を渡す。

 赤紙は、悪夢の増給証明書だ。これが出たら即反映されてしまう。上司の特権の1つ。

 ちなみに、幸せの減給証明書は青紙だ。


「ひっ…」ガクブルしているピングー。

 チラッと覗きこむガリアス。その目に飛び込んできたのは残酷かつ冷酷無比な内容であった。

「今月の給与は、普段の給与の50%増給!?ありえんわ」


「以後、僕の命令に対し被害者面するのであれば、来月はこの倍になるから覚えておきなさい」

「ははー…。ガクッ」


 上機嫌で去っていくコミュウと消沈するピングー。

 コミュウ家のトップと幹部の差は歴然たるものであった。


「ピ、ピングー、元気出せよ」

「はは、ははははは」

「どした?壊れたか?」

「わはははは!さて、ガリアス君、君に連帯責任というのがあると思うのだが、どう思うかね?」

「ま、まさか」と言って所長室から脱走する。

『逃がさんぞ~!』

 ガリアス、後ろを振り向くと、悪鬼のごとく迫ってくるピングーがいた。

「こぇーよ!ピングー!つか、増給なんてされてたまるものかーッ!」


 この追いかけっこはマルエリーナの出現まで続いた。

 そして、しこたま怒られたのであった。


 《つづく》

いかがだったでしょうか。

とんでもない技術が勇者たちに襲いかかってきました。

なお、この宇宙世界は核融合を実用化し、最新技術としての永久炉、超時空跳躍ミサイル、超光速船が研究段階ですが存在します。

超光速船なんて、有事の際にこっそり活躍さえしてます。出てこないけど。


次回も是非拝見していただければ幸いです。

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