勇者召喚編
勇者や魔王がたくさん召喚される宇宙間国家コミュウ連邦。
理不尽な生き物というターゲットとして彼らが召喚されてしまうのだ。
そんな世界に対抗するための組織「リアル・ファンタジー研究所」、略してRF研。
そんな彼らと召喚されてしまったもの達が綴る日常?である。
リアル・ファンタジー研究所、略してRF研。ここでは、ファンタジーな存在について研究する特別な研究機関だ。
数多の星系を有するコミュウ連邦では、ときにファンタジーな存在が突如出現する。勇者、魔王、魔獣その他もろもろが平和な社会に出現するのだ。これらに備えてRF研は設立されたのである。
3つの役割がある。
①出現地、出現者、出現理由を探り、今後現れるポイントを特定する
②出現者、主に魔王や魔獣の生態を調査し、クローン化などの追試を行う
③勇者は、元の世界に送還。できない場合、連邦の保護、魔獣討伐制度の活用を。
魔王は、彼らが使用する魔術研究もしくは連邦の保護を行う。
設立されて日は浅いものの、年間500万件という余りに多い実態に惑星内で使用可能な極短距離転移陣(50km程度)が試作27回目で実用化してしまうほどだった。
そんな研究所の日常は…
「はい、こちらリアル・ファンタジー研究所です。タニシ連邦、ファランクス星系の第3惑星キュペリアのガストップ食堂さん、どうされました?」
『えー、勇者たちが現れました』
「わかりました。研究員を送りますので、勇者たちをなんとか留めておいてください」
『分かりました』
◇◆◇◆◇
ところ変わって、ファランクス星系第3惑星キュペリアにあるとされる主邪神グローの豪邸。
彼は退屈であった。
「はぁ、面白いことでもないかな~」
惑星を検索。旧文明の召喚陣を発見した。
「これだっ!これでやつらをギャフンできるかも!どれどれ、召喚!」
◇◆◇◆◇
「ここはいったい?」
ガヤガヤと騒がしい食堂。
ん?食堂っ!?こういう転移ものって王宮とか神殿とかに出るんじゃ?
あれは突然だった。
昼前の4時限目が終わって、さあ昼ごはんだと全員が考えたのと同時に、教室と同じくらいの大きさの転移陣みたいなものが床に広がった。それの全体が眩く光ったらここに出た。
先生もクラスメートも動揺している。腹が減った…。
「な、なあ木谷根、これってあの転移、だよな?」
「そうだと思うけどね、拓梨。ただ、召喚者が神の可能性はあるが」
「なぜだ?」
「だって、食堂はないでしょ、食堂は。王女なり大神官なりがいたらここはない」
「それもそうだな。にしても、腹が減ったな」
「まったくだ。だが、ここは食堂だ。注文とかできるんじゃ…、はっ!ここで使えるか?円」
「「「「あ」」」」
まさしく注文しようとしたクラスメートと教師の36人は木谷根によってそれを思い立った。
そこにこの食堂の店主?が近づいてきた。人間ではないらしい。いや、周りを確認しても人間がいなかった。まさしく異世界のようだ…。
「まあまあ、そこらのテーブルに座って待っていてください。料理出しますから」
ん?人間ではない生き物の言葉がわかる?
みな同じようだ。
「あー。よくある異世界語認識ってやつか。チートだな」
同意する声多数。そこに待ったがかかる。
「え?あなた方は日本出身者では?」
耳をかっぽじる。聞き間違えか周囲と目を会わせ会話する。どうやら現実のようだ。
「日本?ここにもあるんですか?」
店主がびっくりしていた。
「他にもあるの!?平行世界か何かか?ま、まあ取り敢えずRF研頼みだな」
そそくさと店の奥に向かっていった。
「どういうことだ?」
「まあ、平行世界ならあり得なくもないが、おい拓梨、隣の客見てみろよ」
「な!?明らかに電話しているようだが、前になにか透明なものが浮いて!?」
「可能性としてだが、ここは日本より遥かに科学技術の進んだ異世界ということが浮上した」
「マジか。ウソだろ。あり得ない。で、なんで時代錯誤な召喚をされたんだ?俺たち」
「神のいたずらかもな。ただの暇潰しかも」
「あり得そうなのがなんとも癪にさわる」
「はーい、できましたよー。各テーブルに持ってって」
「「セルフかよっ!」」
「ナイス!」
周囲から拍手が沸き起こった。いつものことらしい。
「「スゴいオムレツ!ふ、ふわとろだー!」」
女子が歓声を上げ、オムレツに取り付く。おそろしく旨かった。
そんなこんなが繰り広げられているところに、突如床が光る。
また転移させられるのかと思いきや、多民族が出現した。
人間と店主の仲間とペンギンとピンク色の生き物などである。有名ゲームキャラのピーチュウやらミューによく似ていた。
「どうやら今回はうまく作動したようだな。目的地に到着だ」
「えーと、試作なんだったっけ?」
「えー、試作586型超長距離転移陣、通称“星系跳び”」
「いや、通称は要らん」
なにやら実験結果の話し合いをしている謎のヒトビト。そこに拓梨が割り込む。
「あのー、あなたたちはいったい何者?」
「「「あっ!興奮して忘れてた!」」」
「では、改めて。我々はリアル・ファンタジー研究所、通称RF研の勇者部に所属している研究者のアズニードだ。周りから課長と呼ばれる。今回、あなた方がこの世界に召喚されたということでよいか?」
「ええ、その通りです」
「突然の事態に戸惑っていたことだろう。神のような存在になにか言われたりしてないか?例えば“世界をお救いください”とか“魔王・魔神・邪神を倒せ”とか」
「グローという神に“邪悪なる根源出ずる時、かの根源を攻め滅ぼせ”と言われました」と寡黙なる秀才、龍郷が言う。
「他になにかないか?」
「「特に会ってないかなぁ。龍郷、いつ会った?」」
「え?白い空間で会ったけど?」
「「???」」
「まぁ、そんなものだろうな。ところで…」
「課長!ちょっと耳を」
「む?なんだ?………!はぁっ!?や、やつがこの惑星に!?魔王部に早く通達しろ」
◆◇◆◇◆◇◆
コミュウ連邦代表者の集う場所、『コミュウ家』。
ここでは、連邦加盟国同士を繋ぐ役目を背負った実力者たちがいる。
その中の代表者、コミュウ。
彼の名を取ってこの集合体は作られている。
コミュウ家は宇宙規模の大財閥であり、各実力者それぞれが宇宙に与える影響が大きい。
そんな彼らは今回の召喚を察した模様だ。
まだ報告も来ていないのに。
「ピングー、どこかのアホ神が時代錯誤な召喚をかましやがったらしい」
「へー、どこの神?」
「ある伝手では、タニシ連邦の忘れられた神とのこと。我ら亜神としての最初の撃滅だね(笑)」
「あー、あの宇宙神から。納得。亜神は認めたくないがね」
◆◇◆◇◆◇◆
◇◆◇◆◇
一方の主邪神グローは、勇者ご一行を召喚してご満悦であったが、彼らと相対する魔王的存在を思いだし、召喚することにした。
「勇者と言えば魔王。定石をすっかり忘れてた。じゃあ、やってみよーっ!しょーかん!」
◇◆◇◆◇
〈魔王side〉
俺はとある世界で代々魔王を世襲している魔王族だ。我らを撃滅せんと欲するヒューマノイド系種族、ユラニー連合王国による連合勇者軍が力をつけていた。それらに対抗して我らも魔王軍の勢力拡大および強化を魔王城周辺で執り行っていた。
その日は突然であった。魔王城の周囲5kmに黒い召喚陣が出現し、すべてが別の世界に移動した。俺だけは転移した世界の邪神と相対し、理不尽な生物を退けるよう要請を受けることとなった。
転移直後は夜ゆえに静けさが満ちていたため、魔王城周辺にいた重鎮と魔王軍の兵士全員との確認がとれた。
「魔王様!ここはいったい何処なのでしょうか?」
「俺も詳しくは分からんが、この世界の邪神グロー様から“理不尽な生き物を退けよ”と仰られた」
「「邪神様に会われたのですか!魔王様!」」
「うむ」
「それは喜ばしいことです!」
と、魔王軍重鎮と共に喜び合っていたところに、兵士長が駆け込んできた。
「陛下ーっ!城下に不審なヒューマノイドどもが現れました!巨大な陣が出現しています!」
「耐魔術結界を10層で固める!気合い入れるぞ!」
「「「おうっ!」」」
その直後、魔王城に大規模殲滅型拘束魔術陣による爆風が吹き荒れ、耐魔術結界10層のうち8層がズタズタにされたが、無事であった。
「ギリギリだったな…。ヒューマノイドどもに対する戦の準備だ!」
「「「うぉおおおおっ!」」」
〈魔王部side〉
我らはリアル・ファンタジー研究所魔王部の対処・拘束課に所属する魔術師集団だ。
タニシ連邦に魔王が出現したと聞いてやって来たのだが、やつら、我らの大規模殲滅型拘束魔術陣を防ぎやがった。
「ヤバい。至急ミュウ連邦魔術庁に応援を」
「了解」
超広域秘密通信魔術でミュウ連邦に応援要請をする。
「課長代理!すぐ来るそうです」
「分かった。てめえら!戦の準備だ!気合い入れろぉ!」
「「「アイアイサーっ!」」」
魔王部と魔王軍による激しい魔術戦争が勃発し、双方大規模魔術によって吹き飛ばされながらも戦闘が続いていた。
「こりゃ、大変だな」
「遅くなってすまない」
「ようこそ戦場へ」
「なかなかの事態だな」
「まったくだよ」
戦争勃発から30分経過した頃にミュウ連邦魔術庁の応援部隊が到着した。
これで勝つると喜ぶ課員が多いが、はたしてそれはどうなんだろうか。あの魔術陣を防いだしなぁと、内心不安であった。
「超極悪なメテオストライクを執行するが、土地は大丈夫だろうか?」
「どんなメテオストライクだ?」
「推計値50cmの火球が100m四方に600万個、といったところか」
「ヤベエ。滅多打ちの大流星群だな。土地なら、あの城の周囲5kmはよその土地だから気にすることはない」
「そうか。周囲5kmに集中砲火しよう」
「(やつらが哀れだな)」
ミュウ連邦魔術庁、認定大魔術師50名による超極悪なメテオストライクの攻撃はただただ凄まじいの一言に尽きた。まるでゲリラ豪雨のように火球が空から降り注ぐ。耐魔術結界があって無いようなものだった。
魔王城は当然のように大破し、部下が敗北して拘束されるなか、それでも魔王と重鎮は耐え抜いたのであった。
〈魔王side〉
辛くも生き残れたようだが、甚大な被害を受けた。
なんだあのメテオストライク。というか、あれはメテオストライクなのか?
あれはひどすぎる。一緒に転移してきた魔王城の周囲5kmは穴ぼこしかない。
外に出ていた部下達は次々とヒューマノイドどもに捕まっていった。
彼らと無事に再会できるといいが…。
「魔王様!ご命令を!」
「取り敢えず第1段階が終結しただけのようだ。やつらはまだ蠢動している。魔王城の修繕と共に耐魔術要塞の設置に取りかかる。生き残るぞ!」
「「おうっ!」」
〈魔王部side〉
「やつら、しぶといな」
「計算外ですね。あれを生き残るとか、冗談じゃない。自治領のミュウなら瞬殺ですよ」
「それ以外のミュウなら無事なのか?」
「レベル差はありますが、無事なほうでしょう。連邦は怪しいですが」
「自国に対してそりゃないだろ」
「事実ですし。実際、すべてのミュウが上流以上なら良かったのですが」
「無理だな。種族レベルは劣化する一方だ。成長著しいペンギンを見ればわかる」
ミュウ部隊の第2作戦が幕を上げた。次は溶岩流が魔王城を襲い、魔王城は炎上、灰となった。が、防壁魔術を駆使した魔王と重鎮たちは魔術要塞を築城。耐魔術防壁を展開し、ミュウ魔術部隊の打つ手がなくなってしまった。
〈勇者side〉
「課長!魔王ども耐魔術要塞を築城した模様です」
「ヒュ~。ミュウの大規模魔術攻撃を防ぎきったってのか?スゲー」
「そんなこと言ってる場合ではないのですが…、次はやつらですか?」
「そうだな。物理攻撃においてはやつらの得意分野だからな。可哀想に」
「ミュウ種族の攻撃を防ぎきったんだろう?次に何が来るってのさ」と拓梨。
「次か?次はな、本物の地獄さ」
〈魔王部side〉
地獄の使者が空から舞い降りた。
「ミュウが敗れたって聞いてきたんだが、ここか?」
「ええ。魔王どもは耐魔術要塞を築城し、徹底的なFK系殲滅をお願いしたい。その上でやつらに大規模拘束魔術を行使して捕獲する方針だ」
「うむ、了解した。これより、10km四方の立ち入り厳禁を各方面に通達してくれ。攻撃開始は2時間半後の夜明けと同時に衛星軌道上からの放射を執行する」
実際のところ、「地獄の使者」と言う表現は間違ってはいない。
彼らは「銀色の地獄艦隊」、ピングー艦隊ハテノハテ司令部の第47雷撃部隊だ。
ピングー艦隊はミサイルを扱わせたら宇宙一の艦隊。ワープ・ミサイルを独自開発するほどだ。
FK系は魔術師泣かせの最悪な物理攻撃だ。釘のたくさん刺さった棍棒で思いっきり殴られるようなものである。
〈勇者side〉
「課長、ピングー艦隊ハテノハテ司令部所属の第47雷撃部隊が軌道上に到着したようです」
「そうか。どうせFK系なのだろうな。憐れみすら覚える」
「FK系ってなんですか?」と木谷根。
「ファンタマズル・キラーの略で、要はアンチ魔術ってとこだ。やつらの耐魔術、耐物理の防壁をアンチ魔術で解除した上で、軌道上からのミサイル攻撃で徹底的な破壊を行うってことだろうよ」
「そ、それは…」
「な?可哀想だろ、魔王たち。ここまでしてでも拘束される存在だってことさ。さてと、我らも移動するか」
「???いったいどこへ?」
「我らの研究所の本部研究所ってとこだが、船の用意はできてるか?」
「ピングー艦隊から移動用高速艦を提供していただけました」
「そいつは有難い。あとでお礼状を送ってもらおう。我らが所長に」
「ですな」
魔王と重鎮は夜明けと共に放射された大量のミサイルによって徹底的に耐魔術要塞を粉々にされ、僅か5分で敗北。RF研魔王部によって拘束、連行された。
《つづく》
いかがだったでしょうか。
ころころ視点が変わるのはよくないとは思いますけど、勢いで書いた当時のままとさせていただきました。
タグでは不定期となっていますが、時々現れるので気長に待っていただければ幸いでございます。