5.凌辱
サブタイトルは釣りです。実際には凌辱はないので、ご安心ください。
無事、ムーン共和国との国境を抜けて安心した
「クリス様、無事、共和国に!」
「おお、あーちゃんのおかげだぜ!」
俺様結構テンションハイになっていた。だが、この後、飛んでもない事が起こる事になる。そう、初めての貞操の危機が!!(今後時々あるよ!)
「ここからはしばらく、何も無い街道です。お嬢さんもフード外しても大丈夫ですぜ!」
冒険者の一人、トーレが声をかけてくれる。彼らは俺様が訳あり物件だと気づいているのだろう。当たり前か、アトランティス王国内では、一度もフードを外さなかった。怪しさ満点だ。
「ふぅぅぅぅぅーーー」
俺様は彼の言う通り、フードを外した。ホント、この季節、暑くてたまらんかった
涼しい風が俺様の髪をすくう、髪が風で流れる。
「お嬢様!」
あーちゃんが俺様を見て驚く。
「あーちゃん大丈夫だよ。もう、ムーン共和国だぜ。流石に俺様の事知っている奴いないだろ?」
「それはそうですが、用心には、用心を重ねた方が宜しいかと・・・」
「大丈夫、大丈夫。何、何かあったら、俺様がガツンとやってけてやるからさ!」
だが、危険は身内に潜んでいた。国境から3時間以上馬車で移動した。もう、周りには何もない。トーレの話だと、ここから先3時間位、滅多に人が通る事はないそうだ
ガタンガタン、ガタ
馬車が急に止まった。???
「どうしたんだ?」
「あーちゃん、何か聞いてる?」
「何も聞いてません。変ですわね。休憩は次のオアシスで行う筈なんですが・・・」
三人の冒険者が集まってきた。顔は皆、ニヤついていた。
「お前たち馬鹿だな」
「え?!」
「まだ、判らないのか? 自分達の置かれている立場が?」
「あなた、何を言っているの? まさか、私達に何かするつもりじゃないでしょうね?」
「そのまさかに決まってるだろ?」
「へっ、へへへ」
俺様は怖くて、膝が笑っていた。だが、やるべき事はわかっていた。なまじ、子供の頃、アルとちゃんばらやっていたわけじゃない。手元に剣が無いのが残念だ。ちくしょー。だが、アルとはプロレスだってやってたんだ! 空手の練習もした!
「あーちゃんは俺様が必ず守る!」
「お嬢様! いけません。あなた達、私達をどうするつもりなんですか?」
「知れた事よ。二人も上玉が入ったんだぜ。たっぷり楽しませてもらった後は、娼館にお前らを売り飛ばす。そちらの金髪、かなりの値段で売れそうだぜ」
「お、お嬢様を、しょ、娼館に売るですって!」
あーちゃんが激怒している。俺様も、又、怒りに震えている。こいつらぶっちめる!
俺様の前に立ちふさがるものは、たとえ誰であろうと叩き潰す。それが俺様のやり方だ!
「お前ら、俺様がぶっちめてやる!」
「はぁ!・・・ホント馬鹿なお嬢様だな」
「いいからかかってこい!」
「ホントまだわかんねぇのか、自分の立場が?」
「御託はいい、さっさとっかって来いや!!」
「じゃ、たっぷりとわからせてやるよ!」
俺様は一番前の小柄な男、アーネに向かって、走った。アーネが驚く。当然だろう。お嬢様がこんなに素早く、動けるとは思ってないだろう! 小学生の時はかけっこでいつも一番だったんだぜ!
急速に近づくと、アーネは驚いた表情をしていた。先手必勝は喧嘩の上等だ!
お嬢様だからってなめてんじゃねーぞ!
俺様はアーネに必殺のパンチをぶち込んで、一発で沈めるつもりだ。1対3、圧倒的に不利だ。この状態を打開するには先手の攻撃で、一人を瞬殺する必要がある!
「くらえ! ゴッドパーーンチ!」
俺様の必殺のパンチがアーネのテンプルをぶち抜き、一発で気絶させるつもりだった。だが、
「あ、あれ?」
「なあ、ようやくわかったか? お嬢様、そんな細腕で殴られてもな、痛くもかゆくもないんだよ!」
「そ、そんな、俺様の渾身の一撃が!」
「これがか? こんなへなちょこパンチがか?」
アーネは俺様の渾身の一撃を片手で受け止めていた。
「ぢ、ぢきしょーーーーー!」
「今度はこっちの番だぜ!」
アーネは俺様の腕をねじり伏せた。
「い、いだい゛……ちぐしょう、おまえっ! あぐっ、いだい゛よぉ……」
「はは、いい声で鳴くなー」
「や、やめて、やだ、やめ――――あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「ほれ、ほれ!」
「あぐっ、いだ”い、いだ”い、いだ”い、よぉぉおおおおお!」
「「「ぎゃはははははっはははっ!!!」」」
「このお嬢様、こんなで本気で俺らと戦うつもりだったんか?」
ぢ、ぢきしょう。こんな奴らに!!!
「お金なら、全部上げます。だから!」
有能なあーちゃんがお金の交渉し始める。ごめん。あーちゃん。俺様が情けないばっかりに。
「ダメだな。そんな金額じゃ、お前らを娼館に売った方がいい稼ぎになる」
「それに、こんな上玉、何もしないなんて手はないぜ!」
俺は覚悟を決めた。俺様は、
「ゆ、許して下さい。何でもします」
「はぁ? この後に及んで、何言ってるんだ? このお嬢様は?」
一瞬、アーネの手が緩む。俺様は、日本で培った英知を、今ここで披露する事にした。
「大変、申し訳ございませんでした・・・・・・」
俺様は一瞬の隙をつくと、頭を地にこすりつけて、土下座した。もう、顔面を地面にこすりつけている。ドン引きのする位、見事な土下座だ
「・・・・・・」
冒険者は無言になった。ここまでの見事な土下座を見たことがないのだろう。俺様、この土下座には自信がある。学生時代にヤンキーに絡まれた時も、会社で失敗した時も、この手で切り抜けた。渾身の土下座だ!!
「許して下さい。何でもします。だから、娼館に売ったり、乱暴するのは止めて下さい」
俺様はちらりと上目遣いで、冒険者を見た。一瞬、リーダーのシモンと目が合うが・・・にやり、という、あれは悪い眼だ。まだ、足らない!
「ごめんなさい。ごめんなさい。何でも言う事を聞きます。だから、許して下さい。お願いいます。ホント、何でもします。だから、娼館と乱暴だけは勘弁してください!」
俺様、涙が出てきた。ちきしょー、悔しい、力が無い事には日本でも慣れていた。所詮、普通のサラリーマンなんて力なんかない。でも、好きな女の子さえ守れないなんて!
「ダメだな・・・・・・」
「そうだな。お嬢様の土下座はびっくりしたが、俺達、そんないい人な訳、ねーだろ?」
「そうだぜ、こんないい女、逃す馬鹿がいるか!」
「じゃ、せめて、あーちゃんだけでも助けて下さい。お願いします。おねかいします。おべがいします。うぇぇぇぇぇえええーーーーーん」
だが、俺様の渾身の土下座も、このあくどい冒険者達には効き目が無かった。
「あきらめろ! これからいいことしようぜ!」
アーネが乱暴に俺様を組みひしぎ、そして、そのまま俺様に覆いかぶさった。抵抗したが、両手とも組み敷かれ、全く身動きができない。
「や、やめれ、はなちて!」
「だめだな。お嬢様! これからがお楽しみの時間だろ?」
組み敷いている手をなんとか退かそうと力を振り絞ったがビクともしなかった。
男の力がこんなに強いものなんて、子供の頃はアルとあまり変わらなかったのに。
「お願いらから、許して....」
小さな声で俺間は屈辱的なセリフを吐いた。だが、このアーネという冒険者は俺様の顔に近づき、ぺろりと唐突に俺様の頬を舐めた。
「き、きゃ!」
びっくりして、普段出した事の無い声が出てしまう。
最悪だ。男に頬を舐められるなんて、屈辱の上、気持ち悪い事この上ない、できれば一生経験したくなかった。
「なんだ、このお嬢様、男みたいなしゃべり方してるけど、ちゃんとメスの声もだせるじゃないか。やっぱり、極上の女だな!」
「まずはお前から、たっぷり楽しませてもらおう」
「ゆ、許して下さい!」
俺様はもう必死だ。ああ、もう、アルでも、あの帝国の王子でもいいから助けて!
ばたばたと両脚をもがくが、それがかえって彼らに嗜虐心に火にがついた様だ。
「だ、られか、た”れか、た”す”け”て”て”て”ぇぇぇぇえ!」
俺様は必至に誰かにすがった、誰もいる筈もないのに・・・ああ、漫画とかだと、ここで、力が欲しいか? とか囁く神的な存在が出てくる筈なんだが・・・
「貴様ら! よくも僕のクリスをこんな目にあわせたな!」
それは、アルの声だった!
「嘘、なんで? なんでこんな処にアルがいるの?」
アルの目には信じられない光景が映っていた。クリスは暴漢に組み伏せられ、許しを願う懇願を無視して、クリスを彼らは凌辱する気だったのだ。
アルは怒りに満ちていた。孤独な僕を救ってくれたクリス。僕の大切な人、そのクリスを慰みものにしようなど、殺意しかわかなかった。
「なあ、お前さん、一番最後になら、してもいいぜ」
「ああ、お互い面倒はごめんだろ?」
『ぶちん』
アルの中で何かが切れた音がした。彼らは、自分達の死刑執行書にサインをしてしまった事に直ぐに気が付くだろう。そう、血の雨が降ることになる!!!
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