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17.第二回破滅フラグ回避会議

第二回破滅フラグ回避会議です。

 俺様は13歳になった。随分と大人になってきた。鏡に映る自分はどこから見ても女の子だ。体つきも変わってきた。丸みを帯びて、出るところが出始めて、引っ込む処が引っ込み始めてきた。少々恥ずかしい・・・


そして、俺様は魔法学園中等部に進学する事になった。俺様は12歳の時、神殿で、光の魔法の才能を見出された。この国では、魔法の才があると、もれなく、魔法学園への入学を強制される。そして、魔法学園には平民も入学する。魔法の才能には貴族も平民も関係ないのだ。そして、魔法学園では、基本、身分は関係無いものとされる。もちろん、建前だが、ある程度、わきまえないと、まずい事由だ。そして、一番大切な事はこの魔法学園中等は乙女ゲームエターナルラブの始まりの場所なのだ。メインヒロインのアン・ソフィがカール王子と接点を持つことができたのも、この魔法学園に平民も貴族、王族も入学できたからだ。


 魔法学園中等部から、メインヒロイン、アン・ソフィとサブヒロイン、アリス・ヴァーサが登場する。そして、入学式の時、悪役令嬢である俺様クリスティーナ・ケーニスマルクは早速意地悪をする設定なのだ。そして、サブヒロインのアリス・ヴァーサとの邂逅もある。入学式はとても大切なエピソードなのだ。この乙女ゲームにとって・・・


 俺様は魔法学園中等部に入学するにあたって、第二回破滅フラグ回避会議をあーちゃんと開催した。エピソードはあーちゃんが良く知っている。俺様にとって、あーちゃんはとても大切なブレーンなのだ。


「それで、俺様は入学式で一体、何をするんだ? ゲームの世界では?」


「クリス様は平民出身のアン・ソフィさんと王子カール様が廊下の曲がり角でぶつかってしまい、接点ができたのを、嫉妬して、アン・ソフィさんに絡むのです。そして、かなり酷い事を言います。平民風情が・・・なんて事を・・・」


「俺様、酷い奴だな。けしからん!」

「いえ、だから、クリス様がそうするのですよ」

「うーん。そうすると、俺様がそれを放置すれば、いいだけじゃないか?」

「もちろん、そうです。このエピソードはとても大切で、アン・ソフィさんだけでなく、もう一人のサブヒロイン、アリス・ヴァーサ様との絡みがあります。アリス様はアン・ソフィ様をクリス様から守るのです。そして、王子様は平民出身のアン・ソフィー様、貴族のアリス・ヴァーサ様に心を奪われるのです。」

「あれ、むしろ、その方が良くね? 二人のどちらかに王子を寝取ってもらって、俺様が解放されれば、何もかもハッピーじゃない?」

「忘れたのですか? このゲームでは、悪役令嬢のクリス様はアン・ソフィーさん、アリス様がハッピーエンドを迎えても、バッドエンドを迎えても死刑になるのですよ!」

「忘れてたけど・・・暴言を叶かなければ?」

「そのケースはゲームでは無いのですが、クリス様が邪魔なので、やはり違う理由で死刑か良くて追放かと」

「そんなの、嫌!」


 俺様はしばし、考えたのだ。そして、あーちゃんに相談した。


「ねえ、とりあえず、アン・ソフィーさん、アリスさん、両法共と仲良くなればいんじゃ無いか?」

「アン・ソフィーさんに対しては有効だと思います。しかしアリス様に関しては難しいかもしれません」

「なんで?」

「アリス様は左大臣ヴァーサ家のご令嬢、右大臣クリス様のお父様の政敵です。そんな簡単に仲良くなれるとは思えません」

「そうすると、とりあえず、アン・ソフィーさんと仲良くして、アリスさんとは関わらない作戦でどうだろうか?」

「それがいいかもしれません。クリス様がアン・ソフィーさんに嫌がらせをしたり、いじめをしなければ、アリス様もクリス様との接点が無くなると思います」


 これで、方向性が決まった。妹のベアトリスの時と同じ様に、仲良くなれば、破滅フラグ回避できそうだ! 流石に仲良い友達の婚約者寝取らんだろう。ちなみに、ベアトリスも魔法学園への入学が決まっている。


 こうして、俺様は魔法学園の入学式に向かった。いつもの様に馬車で、ベアトリスと一緒に通学する。ベアトリスはすっかり、俺様と仲良くなった。俺様も愛らしい妹を可愛がるの大好き。二人には絶対の信頼関係が構築されていた。


 入学の手続きやら、なんだで、忙しい中、俺様は目撃してしまった。それは、王子カールとアン・ソフィの初めての出会い。廊下の角でぶつかるというベタなシチュエーションだ。それを俺様は目撃した。だけど、放置した。俺様はゲームの世界のクリスじゃない。王子にときめいてなんていないし、嫉妬もわかない。もしろ、アン・ソフィーが王子と結ばれた方が俺様の結婚という破滅フラグから逃げられるかもしれない。その方がいい。


 しかし、俺様の目論見は意外な形で、もろくも崩れた。ゲームの世界では、俺様がアン・ソフィに絡むシーン。学園の庭で、取り巻きを連れて、アン・ソフィーを囲んで虐めるシーン。それはなかった。そもそも俺様、ぼっちで、取り巻きもいないし。俺様はアン・ソフィーを追い詰める様な事はしなかった。しかし、妹ベアトリスの時と同様、他の者が放っておかなかった。


 俺様は一人で光魔法学科の手続きを行って、受付から入学式の行われる講堂に向かっていた。ベアトリスやカールは別の学科だった。ベアトリスは水魔法、カールは火魔法の適正を見出されていた。つまり別々のクラスになる。


 そして、おそらくここで、俺様はアン・ソフィーと初めて逢う事になる。田舎育ちのアンは迷子になっていて、俺様に道を尋ねるのだ。しかも、貴族の事を良く知らないアンは少々無礼な口を聞いてしまう。もちろん、我儘お嬢様で性格の悪いクリスはアンを取り巻きとボコボコに虐めるのだ。だが、今の俺様には取り巻きはいないし、アンに優しく接すればいだけだ。


 歩いていると、アン・ソフィーが目に入ってきた。慌てている様子だ。彼女は到着が遅れ、光魔法学科の受付もまだだ。だから、彼女は受付の場所を俺様に聞いてくる。


 アン・ソフィー、愛らしい娘だ。平凡な少女? という設定が笑える。こんな美少女のどこが普通? ありがちだが、言葉の設定と違い、アン・ソフィーの美しさは際立っていた。ボブの柔らかそうな栗色の髪も紫の瞳も日の光を帯びて光り輝いているかの様だ。だが、初めてのイベント、俺様頑張る! アン・ソフィーが近くまで来て、まるで小動物の様な目と俺様の目が合う。困って、助けを求めている人の目だ。それもとびっきり可愛い、大きな綺麗な目だ。


「あの、あなたは……光魔法学科の生徒さんですよね?」

「そうだよ。俺様、光魔法学科の生徒だよ。クリスティーナ・ケーニスマルクって言うんだ」

「ケーニスマルクって、もしかして、あの有名なケーニスマルク家の方ですか?」

「そうだけど、気にしないで、ここ魔法学園では身分は関係ないだろ?」

「そうですけど、そんな筈は・・・」

「まあ、光魔法の受付を探しているんだろ? 受付はこの庭を真っすぐに行って、突き当りを右に行けば、すぐだから。それと入学式の講堂はあっちの、あの立派な建物だからね」

「あ、ありがとうございます・・・」


 これで、最初のイベントを完了! という瞬間に思わぬ邪魔が入った。かつて、妹ベアトリスを責めたあの三人だ。しばらく彼女らと交友はなかったが、彼女達も魔法学園の生徒だった。


「ちょっと、あなた、慣れ慣れしい口を聞いて、失礼でしょ! まさかケーニスマルケ家を知らないだなんて事ないでしょうね!」

「まあ、マルシアさん、庶民のこの方とは世界が違うんですもの、分からなくっても仕方ないわね。貴方、お名前は?」

「アン・ソフィーです。今日からこの魔法学校に通うことになりました、よろしくお願いします!」


「あら、私達が庶民のあなたなんかと仲良くできるとお思いで?」


 冗談はやめてちょうだい、という三人が冷ややかな目でアン・ソフィを見下す。その仕草と目線はかなり、感じが悪い。これはおそらく本来、俺様のセリフだ。


 そんな三人に対してアン・ソフィは僅かに息を飲み、眉間に皺を寄せると「なんやねん、モブ貴族の癖に!!……」と小さく呟いた。


「ちょっと、あなた、今なんて言ったの?」

「あり得ませんは! 平民が何て事を!」

「まさか、あなた、幼年学校にも行ってないの? 貴族との接し方も知らないでこの魔法学園に入学するなんて、浅はかも良いところよ。貴族と平民がこの学園では公平でも、接し方は別よ、常識じゃない」


 俺様はみんなの勢いに押されて、尻込みしてしまったが、頑張る事にした。このままだと、俺様まで感じ悪く思われる。


「いや、みんな、いくら貴族でも、そんな言い方無いぜ! 知らないだから仕方無いじゃないか」

「クリス様、何てお心のお優しい。クリス様の広いお心は一庶民に対しても向けられるのですね」

「ああ、やはり、クリス様は特別なお方なのですね。私達とは考え方の基本が・・・その慈愛・・・素晴らしすぎます!」

「クリス様、ごめんなさい。私達、クリス様の為と思いまして・・・でも、クリス様はやはり、クリス様、申し訳ございません」


「なあ、アン・ソフィーさん、三人を許してやってくれないかな? あと、アン・ソフィーさんも、ちょっと言葉が悪かったぞ。ここはお互い、謝るって事でどうかな?」


「えっ! えっ! あなたがそう言うんですか! えっと、はい、わかりました。皆さん、うっかり、本音が出てしまいまして申し訳ございません。以後気を付けます(汗)、(汗)、(汗)」


 いや、つい本音がって、この娘天然?


「まあ、お互い様、という事で、許してくださらない?」

「私も謝罪しますわ。でも、私達はともかく、ケーニスマルク家の方には留意するんですよ。私達とは次元が違う世界の方でしてよ。これは、忠告ですわ。悪い方にとらないでくださいね」

「ごめんなさい。私、心を入れ替えます。貴族だからといって、とても感じ悪かったですね」


「な、なんでこうなる?」


 アン・ソフィーは不思議な事を言った。俺様は気になって、声をかけた。


「どうしたの? みんな謝ってるんだから、許してあげて欲しいな」

「いや、だから、なんで悪役令嬢のクリスティーナ・ケーニスマルクがこんないい人な訳? ここは散々、私が罵倒されて、それをカール様がこっそり見てる処の筈!」


 俺はピンときた。『悪役令嬢』、この世界にそんな言葉はない。俺様は転生者だ。あーちゃんも・・・そして悪役令嬢という言葉を知っている、このアン・ソフィーも・・・おそらく・・・


「みんな、この子はどうも気が動転しているみたい。ここは俺様に免じて許してあげて欲しいな。みんなはもう、許してくれているんだろ?」

「ええ、私達はもう、平民だからと言って、見下したりしません。同じ魔法学園の生徒、決まり通り、対等に接します」

「本当にクリス様は尊い、私も見習います」

「アン・ソフィーさん。私、もう、何も気にしてないし、許してください」


 アン・ソフィーは三人と俺様を見比べて、戸惑い気味だが


「こちらの方こそ、すみませんでした。私なんかが気安く声をかけてしまって……あの、本当にごめんなさいです……」


 アン・ソフィーとは仲良くする必要がある。だけど、このアン・ソフィーは俺様の知っているアン・ソフィーとは違う人間の様だ。俺様と同じ転生者。そして、ちょっと、ドジらしい。


 アンは大きな荷物を持って、ガチャガチャと音を立てて受付に走って行った。荷物・・・この学園の最初の門の処で預かってくれる筈なんだよな。ちゃんと入学説明書にも書いてある・・・

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読んで頂いた読者様ありがとうございます☆ 本作について、 「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
『連載版』クラスで最低と蔑まれた上、幼馴染に振られたけど、後輩を助けたら、超グイグイ来た~俺が無実な上、実はweb小説の神作者だとわかってももう遅い~
― 新着の感想 ―
[気になる点] アンが転生者の可能性は無いと思っていたけど、まさかの転生者でした。 しかも『なんやねん』って中身は関西系の人!? 一話&二話のアンのイメージが少し壊れました(笑) [一言] この物語の…
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