戦慄!!ギャルゲ主人公!!
んん、本日もお日柄がよく、晴天が続く中、朝日を浴びて爽やかに登校也!!
さーて、今日はどんな一日になるのかねぇ?
「おーい!朔弥!」
背後から聞こえて来たイケボは間違いなく………イケメンだ!!
「おぅ、イケメン野郎!」
クルリと振り返って挨拶を交わした俺に、イケメン神レイジ・ザ・マミヤ様が…
「おっす………って、ヤベーな顔!あれから何があったんだよ?」
そう、イケメン様が言う通り、今の俺の顔はボコボコのデコボコなのだ。
「いやー、ちょっとな。妹にボコられた。」
「え?マジで?………まぁ余り馬鹿な事ばっか言うからだろうけど」
ヒデェやイケメン神。………実際は修行による所が多々あるのだが。
「所でお前…ササラちゃんの彼ピって奴に興味無いか?」
俺は思わずピクンと反応してしまった…が、極めて冷静を装って。そしてクールに決めてこう言ったのさ。
「フッ………レイジ君よ、ヤブヘビってヤツは尻に火が点いちまうもんさ。」
「デバガメな。お前が行かなくとも俺は行くけどな。」
おい待てコラ。折角クールに決めたのにお前行くんかい!!………ってあっあっ、置いてかないでー!
ー
ーーー
ーーーーー
こうして俺とレイジは一年A組手前の廊下にやって来た。
どうやらレイジの調べた筋によると、このクラスの男子が先日、紗沙羅と体育館裏で話してるのを見掛けたとの事で…昼休みにも一緒に居た所を目撃されていたそうな。
「なぁレイジ、やめとこう。流石に本人達に悪いだろ?」
そんな俺の言葉をどう受け取ったのか…恐らくは尻込みして聞こえたのだろう。レイジは溜め息を吐いて俺に忠告したのだった。
「お前は馬鹿か?…別に呼び出してどうこうしようって訳じゃ無い。…が、お前にとってササラちゃんは大事なんだろう?…それを横から掻っ攫われたようなものだ。………それならせめて任せても安心出来るかどうか、見極めたいと思わないか?」
まぁ…一理ある。
しかし、呼び出された方は堪ったものじゃないだろう?なんて言うか…レイジはこう言う所が時代錯誤と言うかなんと言うか…。
「おっ、アイツじゃないか?」
レイジの言葉を聞いて思わずギュルンっと首が捻じ切れる勢いで向けられた方向を向いてしまった。
ーーーすると、1組の男女が仲睦まじく隣り合わせで歩いてるじゃあないか。
片や、今正に学年問わず話題の的となっている転校生で、赤い髪を肩辺りから結んでる為、動きさえしなければお淑やかにすら見えそうな元気いっぱいの美少女。………そして俺の思い人でもある佐々木紗沙羅その人である。
そしてお相手の男子は………なんと言うか…地味だ。
目元まで隠れた黒い髪は、揺れれば漸く瞳が拝める程度で、しかし身長が高い訳では無く165cm程度の中型身長に中肉中背。頭の先がアホ毛っぽく髪の毛のツノが生えてやがる。
そして制服も特に改造してる訳でも無く、………なんて言うか………地味???
…………アレだ。ギャルゲーの主人公的なアレだコイツ!!!
………しかも人が見てないと思ってキスしやがった…!!
あの野郎………絶対成績は平均程度で、運動神経も並で何の特徴も無いごく一般的な男子高校生とか言い出すタイプだ!!
アイツ絶対間違い無く裏で変なチート能力とか持ってる!!絶対持ってる!!!
後、世界救ってる!!間違いない!!だって何故かアイツの周囲の空気、他と違うもん!!!
それから多分ハーレム築いてる!!!ハーレム王に、アイツはなりそう!!
………って、背後からやって来た女子に後頭部叩かれた!!アレ絶対幼馴染だ!!間違い無い!!
なんか紗沙羅と幼馴染キャラが喧嘩を始めたぞ!?
後、あの男子の端で水色っぽい髪のちっこい女子が本を読みながら輪に加わってる!!
間違いない!!アイツハーレム主人公だ!!!
おぉう………続けて金髪美少女があのハーレム主人公野郎に飛び付きやがった…。
ーーーなんと言う事でしょう。
金髪美少女に押し倒された主人公野郎の手が胸を弄りながらスカートの中に顔面突っ込んでやがる………。
………アイツ、ラッキースケベ主人公でもあったのかよ…
ーーー待て、これ絶対勝ち目無くねぇ?
………いい………ヤツ………なのかも知れないし、違うかもしれない………。この手の男はイケメンからクズ野郎まで様々だ。正直言って付き合って見ないと分からないが、この手の奴と関わるのは御免被る。
これを共に眺めてたレイジさんも、遠い目をして俺の肩に手を置いて言った…。
「……やぁジョニー、聞いてくれるかい?」
「ははは、なんだい?ボブ。かみさんの愚痴ならよしてくれよ?」
「そんなんじゃないさ。ただーーー」
少し溜めてボブはこう言ったのさ。
「世の中には絶対に歯向かっちゃいけない相手も居るって事さ。ーーーぶっちゃけアイツからヤバい位主人公補正感じるわー。」
寄寓だな、ボブ。俺も同じ気持ちだよ、両想いじゃないか。
ー
ーーー
ーーーーー
「………二人とも、どうしたの?」
「いや、何でもない。ーーーちょっと世の中の理不尽ってヤツを味わって来ただけだ。」
「そう言う事。………朔弥、気を落とすなよ?お前に似合いの女子なんて探せば幾らでも居るさ。」
俺とレイジさんは互いに互いの目を見合わせると、ガッチリと手を組んだのだった。
ーーーそして、間に入れなくて困ってる奏は、オロオロしながらも俺たちの手の上から両手で包んだ。
ーーーーー天使かこやつ。
「いやいやいやいや!!男同士で何やってんのよ!キモい!!」
そんな俺達に水を差すように現れたのは、サラッとした綺麗な黒髪を腰まで伸ばして、左の方を編んでる純和風な顔立ちの美少女。胸が豊満である。然し少しキツそうな顔付きの所為で男との付き合いが殆ど無いと豪語する…高身長で巨乳。そしてサッパリした性格が付き合い易い、委員長オブ委員長!…と、多分に属性持ちの女子。後、なんか刀が似合いそう系女子。それからおっぱいがデカい。
九重 由乃である。
まぁ何の委員でも無いが。ーーーだが委員長だ!
俺とレイジは能面の様な表情で、奏はどうしていいか分からずオロオロしながら委員長を見詰めて居たのだった。
「何って………なぁ?」
「あぁ、俺達はさっき、雄としての敗北ってヤツを味わって来たのさ。」
「えっえっ?ええっ??」
俺とレイジが男の友情を確かめ合う中、置いてけぼりの奏きゅんと、穢らわしい物を見る目の委員長がこの場を温めていた。
「ーーー真夏日にやる事じゃないでしょう…。………いい加減暑苦しいからやめなさいよ。倉敷くんも困ってるじゃない。」
「え?うん?ごめんね?」
ふっ、ヴァカめ!!今の俺とレイジの仲を簡単に取り払えると思うなよ?ーーーそう、今の俺達は熱く固い絆で結ばれてるのさ!!………ってアレー?どうして離しちゃうんだい?ボブ?ボーーーーーーーブ!!!!
「ま、それもそうだな。………所で委員長。」
「委員長じゃない。」
「ははは、まぁまぁ委員長、そんな事より何か用事でもあったのか?」
レイジが涼しい顔をして由乃委員長へと問い掛ける。俺は諦めて椅子に着座したまま話を聞くのさ。
「あぁ、うん。なんでもお昼休みに生徒会の方で会議があるらしいから、レイジに伝えとけって先生から。………分かった?『い・い・ん・ちょ・う』?」
「あぁ、了解。悪いな朔弥、奏。昼は二人で食ってくれ。」
何を隠そう、レイジは俺達のクラスの委員長なのだ。
イケメンで委員長で、学力も実は高くて、しかし気の良い馬鹿野郎。そして運動神経も良いとか、天は二物も三物も与えるとはよく言ったものだ。
ーーーふと、俺は昨日の件を思い出した。
「あー、レイジ?」
「ん?」
俺が声を掛けるとイケメンは俺に振り向いた。ーーーーそして、先日の顛末を話してやったのさ。
………すると、少し考えてレイジは言った。
「三人組の件は分かった。上手くやっておくさ。………しかし朔弥、お前は本当に…たまに訳の分からない事をするよなぁ。」
ーーーーぐっ、イケメンゴッドに言われると、マジで軽々しい事をするべきでは無かったと諭される。
しかし、レイジはクスッと笑って俺の自嘲を吹き飛ばすのだった。
「間違った事をしたつもりは無いんだろう?ならいいじゃないか。…前から言ってるが、迷惑とも思わんから頼ってくれればいい。そして、お前が助けたいと思って行動する所。俺は嫌いじゃないよ?」
照れ臭い事を言ってくれるキザな野郎だよ、親友。
「うん、…僕も…誰よりも先に助けてくれたのは朔弥だから……分かる。」
上目遣いで見つめて来る奏は女の子そのものの様で、男だと分かっていても思わず可愛く見えてしまう程だ。
奏かわいいなーこいつ。
「まぁなんだ。貴方達の事情は理解した…けど、余り深入りしない方がいいわよ?」
ーーーと、委員長様からのお言葉である。
「小清水清莉って子…色々と噂があってね。………なんでも随分と問題があるって噂を聞いてるし。それ以上に女子同士のその…イジメとか、そういうのって結構エグいし、助けたとしても陰で色々される事も有るし。………最後まで責任を持てるなら兎も角、その気が無いならこの辺で適当に身を引きなさい?あ、これマジの警告だから。」
女子の気持ちは女子のみぞ知るというヤツですな。
ーーーかと言って、キアさんに任せたまま途中退場と言うのもなんと言うか、座りの悪い話だ。
今後、どうたち振る舞うべきかと、俺が真剣に身の振り方を考えていたその時だった。
キアさんが到着し、教室に入って来た途端に教室内が騒がしくなった気がした。
そして、キアさんが外に向かって手を振っていた。
相手は今正に話題になっていた小清水清莉だった。
こちらに気付いたきよりんが、小さく俺に向けて会釈をした様に見えたんだ。
ーーーー噂がなんだ。
一度力になるって決めたんだから、最後まで突っ走ってやりますかーーー!
目隠れ系主人公は世界を救ってる法則