え?あの形式で行くと思った?残念!
「出会いが欲しい…」
そんななんでもない欲望にまみれた願望を呟く俺は、篠長朔弥。純和風な顔立ちで、黒髪ショートのフツメン野「おいコラ、朔野郎。」
何気無しにヒョイと顔を見上げると、そこには眩いばかりのイケメン様がいらっしゃった。
「お前昨日あの転校生二人の家に行ったって?マジかよ?詳しく聞かせろよ!!」
イケメンゴッド・レイジ様が何か突っ掛かって来やがりましたわ。
「は?誰から………っつーか、別に何もねぇよ?」
「いやいや、男女が二人…あ、いや三人か。なんかあったろ!?聞かせろよ!!」
レイジ・オブ・ザ・イケメン・ゴッドが鼻息荒く聞いて来た!!
「何にもねぇよ?ーーーただ、」
ー
ーーー
ーーーーー
「………クソ兄貴の野郎遅過ぎない?何処までタピオカミルクティー買いに行ってんだよ。」
そんな時、窓から聞こえる喧騒。
「やっ!!ちょっ!!ダメっ!!そんなトコ!!」
「オラオラオラ!!ここが弱いのか!?弱いんだな!?グハハハ!!!タップリいじめてやんよぉぉ!!」
「ふふふ、朔弥隙だらけ…。タップリ入った。」
「ちょっ、急には狡いだろっ!!おまっマジかよ!?」
「ちょっと!?三人だけで遊んでないで!!ミサさんの事無視すんなし!!」
「はぁぁぁ!?上等だ!!テメェら纏めてイキやがれ!!」
「「「ちょっ!?ああああああっ!!!」」」
はい、ソッコー隣家へお邪魔しましたよ?
何いきなりタラし込んでやがんだあのクソ兄貴!!
クソ兄貴の妹たる私こと沙耶さんが殴り込みましたよ?
クソ兄貴をボコる為に金属バットを持って。
ーーーそこで見たものは。
「はぁ…マジ勇◯とかやめろし。」
「運ゲー」
「くっそぉぉ…ミサさんのジョー◯ー様が…」
「ふははははは!!好きなだけ吠えるがいい!!勝ったもんが勝者なんだよ!!(至言)」
何処からどう見てもスマ◯ラです。
やり切れないこの気持ちはどうすれば良いのでしょうか?
「ふはははははは!!!お?沙耶も来たのか!!よーし、今度は5Pしようぜ!!俺様の美技を魅せてやるわ!!」
あ、タピオカミルクティー。
とりあえずタピオカの分だけブン殴って置きました。
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ーーー
ーーーーー
「………ったく、マジムカつくよなぁ、ウチのクソ妹。」
「はぁ?」
………おおう、随分と冷え込んだ目を向けて来やがりましたわ。
「……まぁ、朔弥はやっぱり朔弥よなぁ。」
「うん…そこは良い所だと思うけど。」
………おおう!?
いつの間にか会話に紛れてたもう一人の男子生徒なのだが。名前は倉敷奏。
ちっこい身体付きに病弱な身体。大人しめな顔付きな為か割とイジメられる光景をよく目撃する。………ので、何度か助けてレイジのグループに入れたら何かイジメが減少したっぽい?
やっぱイケメン様つよい…。
まぁ俺もその一人なのだが。
「まぁそんな訳でだ、特になーーーーんにも無かった訳よ。フツーに会って、フツーに遊んで、眠いから部屋に戻って寝て、今日この頃?」
「お前、気を付けろよ?」
嫌に真面目な表情のイケメン様が仰ります。
「ぶっちゃけサラサちゃんもササラちゃんもめちゃくちゃ可愛い。んで、ウチのセンパイ達も誰があの子達を落とすか狙ってるって話だ。昨日来たばっかであの目立ちっぷりだ、早く行動しないと色々と手遅れになっちまうかもって事だ。」
「いやいや、レイジさぁ…ほら、いきなり付き合ってとか何とか、引かれるじゃん?ちゃんと良い関係を築いてからでも遅くは…」
そう短絡的に考えてる俺に、横からまさかの刺客が!!
「………でもそう思ってたら転校したんだよね?」
…………何も言い返せねぇ。
「っつーか、まさかお前…二人纏めてハーレムとか、アホな事考えてねぇよな?」
「いっ………やぁ………まさかぁ。」
「………考えてたんだ。」
レイジと奏の両方から冷たい視線が突き刺さる。痛え…痛えよぉ。
「とにかくアレだ!!キチンと好きな方をしっかりと選んで、後悔しない様にぶち当たって来い!!いいな?」
そんな訳でだ。
イケメン神に後押しされて、俺はスタンガン女の元へとやって来た。
「よぉ勇者厨。何か用?」
あ、コイツ遂には隠しやがらねぇ。
「あや………なんだ、その…。」
ヤバい…思わず胸が高鳴る。
………収まれ!!収まれ心臓!!
「俺と………付き合ってくれ!!」
開始四話にしての大快挙である。
メインヒロインに告白し、今まさに返事待ち。
俺は震える体を必死に押さえ付けて返事を待った。
「あぁ〜〜………マジ?」
………なるほど、絶望しか無い訳だ。
…俺は恐る恐る顔を上げて、見ると、………顔を真っ赤に染めて佇むちっこい子の姿が目に映った。
………これは………今はダメだとしても、矢張り今後の付き合い方次第ではもしかすると…?
「ごめん、嬉しいよ?嬉しいんだけど……。」
あぁ、やっぱりそうか…。
………くっそぉぉ…。やっぱつれぇわ…。
「ごめん、今朝告白されて…付き合ってる人居るから。」
……………は?
「いや、あの…ね?朔弥?……私ね?付き合ってる人居るから、ごめん…。嬉しいよ?でもごめんね?」
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「ーーーーーなんか、悪ぃ。」
「ーーーーいいって。」
「朔弥、元気出して…?」
「ーーーーおう。」
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男達は肩を並べた。
現実ってヤツは辛ぇ事も悲しい事も有るもんさ。
そして野郎共は走った。
とにかくとにかく走って走って走って走った。
嗚呼、野郎共の馬鹿野郎狂想曲。
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一人、ポツンと河原に佇む影があった。
雨も降って無いのにずぶ濡れの姿で、身体中に痣が浮かんだ姿で。
「ーーー世界中、皆死ねばいいのに。」
少女は呟いた。
小清水 清莉は、引き摺る様に、その身体を家路へと向けたのだった。
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