ネイブリングハウス!
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道場での訓練 (ーーーと言う名の虐め)を終え、家に帰った頃、俺は母さんから話を聞いた。
「あれ?話して無かったっけ?お隣さんの佐々木さん、帰って来たって。」
聞いてない………のか、聞いてても疲れ果てて聞こえて無かったか。
実は俺が道場に通ってる間に挨拶に来たり、何気に部屋に通されてたりと、色々有ったらしいが、帰りが遅くなる事が多かった為にすれ違ってたそうで、だから俺の認識としては「おっ、隣に誰か引っ越して来たんだなぁ」程度しか無かったんですよ?ホント。
本来は前日にあの姉妹が越して来た事に気付いてて当然なのだが、気付かなかったのは仕方ないよね?ね?
「とにかく、三人共あんたに会いたがってたから、ちゃんと挨拶して来なさい?」
そう掻き立てる母さんに、鬱陶しく感じるのは仕方ないよね?な?だろ?
でも黙って言う事を聞く事にした。何故なら俺は母さんには口喧嘩で勝てる気がしないからだ。
挨拶に…と持たされたドーナツの箱を小脇に抱えて玄関に向かうと…
「アニキ出掛けるの?」
ーーーと、偶々二階から降りて来た妹こと沙耶がパーカーを着た姿で声を掛けて来た。
キャラクター物の…なんと言ったか。………アレだ、ス○ィッ(この文は検閲されました)
「あぁちょっと行ってくる。」
「コンビニ行くならついでにタピオカ買って来てよ」
どうやら兄をパシリとして使う気らしいですよ?って言うかコンビニにタピオカ売ってるの?
「いや、隣に挨拶に行くだけなんだが。」
「えー?いいじゃん!ついでだからさー。買ってきたら雑巾よりは好きになってあげるから!」
「おいこら、俺は雑巾以下か。現時点」
「うっざ。」
ーーー仕方ない、このアホには煮豆でも買って来てやるか。なんか似てるし?似てるくね?
とりあえずアホの妹の事は置いといて、俺は眠い瞼を擦りながら空腹のまま隣家を訪れた。
しかし、一応夕食後の時間帯とは言え遅くに迷惑だよな?でも挨拶しないままなのも気持ち悪い話だ。
………まぁ明日は休みだし…と、自分勝手に自己完結をして俺は佐々木さんの御宅の呼び鈴を鳴らしたのだった。
「はーい!」
何やら声高いお返事が聞こえて来ましたよ?
「あら?……えーと、…もしかして朔弥くん?あらあら随分と立派になったわねぇー。」
見た目年若く見える目の前の女性は佐々木詩織さんと言って、紗沙羅、沙羅砂たち姉妹の母親だ。
とても気立てが良く優しそうなお母様なのだが、ちょっとぽやんとしていてせっかちなウチの母とは相性が良くないらしい。
「はい、ご無沙汰してます。挨拶が遅れてすみません。これ、良かったらどうぞ」
ーーーと、挨拶に持たされたドーナツを詩織さんに手渡した。
「あらぁありがとう。ホント朔弥くんったら立派な上に丁寧で、うちの子達に見習わせたいわぁ。」
いやまぁうちの母さんに持たされたからなんですけどね。言いませんが。
「あ、そうそう。折角だから上がって行って?…うちの子達もずっと朔弥くんに会いたがってたのよ。」
ーーーと、成されるがままに手を引かれた俺は佐々木家へとお邪魔したのだった。
…そうして居間に通されると、先客が居た。
「…んぁ?…誰?」
眠そうな表情でクッキーを頬張りながらテレビを見ていた桃色の髪を小さく数カ所編み込んだ流行り髪っぽい少女は俺を見るなり怪訝な視線を向けて来た。
思わず固まってしまった。
だってどう見てもギャル系のメイクでだらし無いTシャツにジャージ(当人曰く、サイドラインパンツらしい)とか、ギャップが激しくて、でも何処と無く懐かしくて………しかも例に漏れず低身長巨にゅ…うごぉっ!?
ピンクの女から腹にヘッドバットを喰らってしまった…痛くは無いけど。
「いった!!……もしかして朔弥?朔弥だよね?」
おおう…その通りだが、確定だ。…って言うか痛がるなら突進すんなし。
それにしても、あの二人を見てから予想はしてたが、身長低いなぁ…。145センチ前後って所か?
「久し振り、美沙紗。元気だったか?」
自分から突撃しておいて額を摩ってるピンク頭に俺は涼しい表情で挨拶をした。
してるつもりだ。してるよね?
「あー、そのエロな顔、間違いなく朔弥だ!覚えてる?昔あたしにお医者さんごっこって言って胸とか弄ったの!!」
ちょっと待て、そんなの記憶に無い!捏造だ!!冤罪だ!!!
「待て待て!記憶に無いぞそんなの!?」
「ほら、された側はいつまでも覚えてるってやつ?理解ったらおわびして貰わないと…だ・よ・ね?」
にまーんと妖艶に笑うピンクの悪魔から目を逸らしてお母様に助けを求めると…
「美沙ちゃん、ちゃんと学生の領分と節度は守るのよ?」
「はーいママ!」
ちょっと待ちやがれですわ。
こうして手を引かれて美沙紗の部屋へと連れ込まれた俺は、とてもとても居た堪れない気持ちに陥りましたよ。
だって女子の部屋だぞ?キアさん以外の!!
すっげえ甘い香りとかする気がするし!なんかかわいい小物とかぬいぐるみとかたっぷりだし!!
そんな俺の心境を知ってか知らずか俺の頭に脱ぎたての服を投げ捨てて来やがりました。
「おい、美沙紗!」
「あー、あっち向いててよ。」
言われるままに反対側を向く俺だったが、服を着る時の衣擦れの音でもう一杯一杯ですよ、心が。
しかも脱いだ服からも良い匂いするし。ボディーソープの香りとか混じってねぇか?
…しかし女子の…しかも中学生の服の匂いを嗅ぐ変態扱いされても敵わんから修行で鍛えた精神力を披露する事にした。………まぁ所謂無心ってやつだ。
……………
………
…いやこれ無心出来てねえ。
「もーいいよ、こっち向いて。」
言われるままに美沙紗の方を向くと、さっきまでと打って変わってとても可愛らしい白トップスに黒のワンピースでモノトーンコーデだった。パーカー女子も良いが、こう言う可愛い系のコーデはヤバイよね。
あ、もちろんアホ妹のキャラ物パーカーは無いけどな。
そんな可愛く変身したピンク髪の子は、徐に俺の膝の上に向かい合わせで座って来るじゃないですか。
あぁ、キアさんと違って鍛えて無い女の子って触れると壊れそうな位華奢なんだなぁ…。
あ、キアさんも女の子らしいしなやかさですよ?組手の時とか柔軟さ的な意味で。
「久し振り!さーくやっ!」
妙に擦り付いて来るんだが、気持ちを察してみると………そうだな、小学校の4、5年の頃以来だから、実に5年ぶり位になるからな、久し振りに会えた嬉しさとか色々と込み上げてるのかも知れん。
それなら確かに俺も感じてる。
うん、懐かしくてつい顔が緩んでしまう。………決して豊かな胸が胸元に当たって嬉しい訳では…あるけどね!!
「あぁ、久し振り、美沙紗。随分と大人っぽくなってて驚いた………驚い……いや、身長あんま伸びてないな。」
「むがっ!?………いやいや、ミサさんだって結構成長しましたけど?10センチ位?」
「そりゃ大した成長振りだ。」
こうして美沙紗を弄ってると、懐かしくて心が高鳴るのを感じた。
「むぐぐ………って、朔弥ってばミサさんで興奮しちゃってる?」
妙に小悪魔地味た笑顔で俺を品定めする美沙紗にそんな事無いと返すも、余裕の表情で
「分かってる分かってる、朔弥も男の子だもんねー?こーんな可愛い女の子に甘えられちゃったらキスとかしたいって思うのも仕方ないよね?」
やけに主導権を握りたがる様な言い方をする美沙紗だが、まぁ否定はしない。
………俺はこの美沙紗とここには居ない紗沙羅、沙羅砂の三姉妹全員に恋を抱いてしまったのだから。
所謂、初恋ってやつだ。
三人全員に………って言うのが実に軟弱だが。
「そうだな、否定はしない。」
俺の素直な言葉に腕の中の少女が思わず固まったのを感じた。
そして、すぐに顔を真っ赤に染めて照れ始めたのだった。
「あ、うん…なんかごめんね?ちょっとテンション上がって変なってた。…朔弥もマジヤバイよ?なんか男らしくなってるし。」
今度は先程までと違って随分と塩らしくなった。
「はは、有難うな?」
俺が美沙紗の頭を優しく壊れない様に撫でてやると、俺の胸に顔を埋めて恥ずかしがって来るのだが、そこがまた可愛い。
ーーーと、そこで部屋の扉が開かれた。
「美沙紗ー!朔弥来てるー?」
「美沙紗ちゃん…独り占め…ダメ」
赤い子と青い子が部屋に入った所で、俺の太腿に向かい合わせで座ってる美沙紗といった姿を見られて俺の顔面から血の気を引いたのは言うまでもなく。
その後、美沙紗さんが退けた後、俺の首に沙羅砂さんのキレのある回転蹴足が食い込み、紗沙羅さんが徐に取り出したスタンガンを腹にたっぷり戴いたのもまた言うまでもなかった。
ん?赤い子と青い子が逆じゃないかって?…いや、これで正しいんだよ。
ーーーボロボロな俺にこっそりとペコペコ謝る美沙紗を見て、改めてこう思ったのだった。
三人とも、本当にギャップが激しいなぁ………って。
美沙紗さん登場回です。
ギャップ三姉妹です。