リユニオン!
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少女達の自己紹介が終わって、日下部先生により席に通されると、赤い子は俺に気付いた時にニコッと笑い掛け、青い子はフニャっと何か安心した様に笑い掛けて来たのだった。
ーーー気がしただけだがな!!
とにかく一瞬の事だったが、俺は心臓がドクドクと高鳴るのを感じていた。
かく言う彼女達とは俺がイジメられる前、小学校高学年の頃に転校した事で離れる事となった。理由としては良くある話で、彼女達のお父さんの仕事の都合で他県に行く事になったからだった。
ーーーで、今もまたこうして此方に来たと言う事は、お父さんの仕事の都合で戻って来たのだろう。
まぁなんて言うか、とてもチープな話ですまんが、俺はこの姉妹に恋をしたのだ。
小さな頃に実った恋心を拗らせている訳だが、まさか小学生時代から余り見た目が変わってないとは思いもよらなかった。
俺は授業が終わったら二人に声を掛けようと決意した。
ーーーじつに実のある授業が終わって、早速二人に声を掛けようと………掛けようと………したのだが…
二人の間には案の定、男女交えての人集りが出来ていたのだった。
楽しそうに質問攻めに答える赤い髪の子に対して、青い髪の子はとても落ち着かない様子で、何処かオドオドして見えた。
どうやら人に囲まれて気分が悪くなってる様だ。
俺は助け舟を出そうと立ち上がり掛けるのだが…。
「皆さん、サラサさんは具合が悪いみたいなのでゆっくり、少しずつ接して行きましょう?」
ーーーと、声を掛けたのはキアさんだった。
キアさんもまたこの人集りに混ざってたみたいだが、紗羅砂の様子を見て即座に対応したらしい。
今は紗羅砂に気分が悪く無いか?とか保険室に行くか?とか、小声で語り掛けていた。
やっぱり優しい人だなぁ。
因みに紗紗羅の方は紗羅砂の様子が気になりながらも、集まってくれた人達を蔑ろに出来ないのか質問攻めを捌き続けていた。
ーーーで、俺の隣にはやはりイケメン野郎さんが聳え立っていた。
因みにイケメン野郎は俺が突破出来なかった身長175センチを軽く超えた180台の巨漢で在る。ふざけんなイケメン野郎!結婚してくれ。
「朔弥、もしかしてお前もあの中に混ざりたかった系?」
耳元で語り掛けるイケボはまるで宮○真○様や島○信○様みたいな爽やか重厚イケメンボイス過ぎてマジで男の俺でも惚れそうだった。
「いやいや、なんつーか…久し振りだなぁ〜って」
俺がヘヘッと笑って言うと、レイジさんはちょっと引き気味に。
「おいおい、お前はあの子達の親戚か何かかよ?『俺達、昔どこかで会った事ない?』とか、引かれるよ?マジで」
ーーーと、御高説賜りましたわ。
イケメンでも駄目なんですかね?
「何それ、実体験?」
俺が何気なく聞いて見ると、レイジは暗い顔をして
「運命とかどうとか、関係無いんだよ?ガツガツ来られると警戒して最悪警察のご厄介なんてザラにあるから。センパイが言ってた。」
イケメンでも駄目なんですね。
「まぁとにかく、お近付きになりたかったら少しずつ少しずつ歩み寄って行くしか無いんじゃないかな?」
なるほどなー。
ーーーまぁ機会はこれから幾らでもあるんだ。
帰りでも良いし、なんならその内クラスに溶け込めた頃に二人と話せたらそれで良いじゃないか。
うん!イケメン様の言うことは黙って聞くに限るな!
こうして俺は結局二人と話せずに一日を終えたのであった。
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放課後の事。
教室に残る生徒の各々が部活だったり、生徒会や役員だったり、または帰宅部と言う崇高な部活に勤しんでる頃、俺はキアさんと道場に向かう為にその人を待って居たのだが…。
「あ、……あの…」
消え入りそうな程小さな声が聞こえた気がして後ろを振り向いたが、そこには誰も居なかった。
俺が気のせいかと首を傾げていると、もう一度
「……あの……」
………と、今度は下から声が聞こえたので下を向いてみると
「気付いて…くれた…」
髪の青い子が今にも触れそうな程近くで俺を見上げていたのだった。
紗羅砂の方だ。
まさかこんなに早く話せる機会が訪れるとは思わず、面を喰らっていたのだが、青い子はオドオドとした様子で俺に問い掛けた。
「……もしかして…朔弥…?ささおさ…?」
「あ、あぁ…うん。そうだよ。うん。」
俺は冷静さを保てずついしどろもどろになってしまった。
そんな俺に構わず俺の腹に抱き着いて来た少女を払い除けられず、固まってしまった俺に紗羅砂は呟いた。
「久し振り…会いたかった…よ?」
まるで猫の様に甘える素振りを見せる紗羅砂に困った俺はとりあえず頭を撫でて見たのだが、そこにやって来たキアさんと目が合ってしまった。
「えーっと……あの、お二人は一体どう言ったご関係ですか?」
背後に阿修羅像が見えますよ?騎亜沙様。
ニッコリとした笑顔を崩さないまま鞄を持って俺に歩み寄るキアさんの姿は思わず漏らしそうになる程恐ろしかったです。
「あの…朔弥と私、…幼なじみ?」
疑問符を付けて下さる紗羅砂さんに、俺はもう言い知れない死を覚悟したのですが、その時は訪れなかったのでございますです。
「幼なじみ………ですか。………本当ですか?朔弥くん。」
キアさんが北欧系混じりの美しい顔を俺に近付けて来るのだが、とにかくコクコクと頷きながら
「はい!マジ!あ、いや本当です!!俺が道場に来る前にこの子達が転校しちゃって、それっきりで!!」
………と、説明を加えると、まぁとりあえずは納得してくれた様だった。
「なるほど、…それならつまりササラさんとも幼なじみと言う事ですよね?…ややこしいです。」
困り顔もまた天使ですよこの人は。
「いや、もう一人居るんですが…」
………と、俺が付け足すと、キアさんはキョトンとしてらっしゃった。
「美沙紗ちゃん…学年下だから…。」
地味にキアさんには慣れたのか?紗羅砂は辿々しくも普通に答えていた。目は合わせて無いが。
「えっと、要するに紗沙羅と紗羅砂は一月生まれなんですけど、美沙紗って子だけは十二月生まれなんですよ。」
はい、キアさんがすっげぇ混乱してらっしゃる。
仕方ない、俺も混乱する。
まさか同じ年に月が離れて生まれた三人姉妹だとは誰も思うまい。
「なるほど、とても複雑な家庭環境だと言う事は概ね理解出来ました。」
ハハッ!キアさんが困ってらっしゃる!やべぇかわいい。
「それと朔弥くんがサラサさんを掠取しようとしている事実はまた別の話ですよ?」
ーーーと、問われた所で紗羅砂が俺の腹に豊満な胸を押し付けている事実を認識するには十分だった。
「ごめんごめん紗羅砂!ちょっと校内を案内してもらって……ってナニコレ?」
元気な声が聞こえた時、俺の身体は地面に突っ伏し片手をしっかりとキアさんに決められていた所だった。
いつもは優しい美人さんだが怒らせるとマジでコワイ!絶対血筋だコレ!
「ササラさん、お二人の事はサラサさんからお聞きしました。………けど、サラサさんにエッチな事をしようとした不届き者に制裁を与えている所です。」
どうやら俺の弁明は却下な模様。
スレンダー美人なキアさんにガッチリ決め技をされたら抜け出せる訳が無いじゃ無いですかーもー。
因みに紗沙羅は俺と紗羅砂を交互に見やって何やら考えていた様だった。
「あぁ、うん…大体把握したけど、紗羅砂…もしかして抱き着いたりした?」
紗沙羅の質問に、青い子がコクコクと頷き答えた。
「………はぁ、やっぱり。……確認は二人でって決めたよね?…まぁいいけど。」
そう言うと紗沙羅は俺の前にしゃがみ込んで改めて挨拶をした。
「久し振り、朔弥!…しばらく見ない内に随分と男の子らしくなったね?…これからまたよろしくね?」
挨拶をする紗沙羅のニッコリと太陽の様に明るい笑顔とは裏腹に、俺はしゃがみ込んだ紗沙羅のスカートの隙間から覗いた桃色の布から目を離せないでいたのだった。
「おーい朔弥!たまには俺と帰ろ………ナニコレ?」
爽やか重厚イケメンボイス様がやって来た時、俺の身体は逆さまに掃除用具入れに括り付けられていたのだった。
ーーーー教訓、かわいい子達はコワイ!