第二話続き
第二話続き
「この事件、私が解決します!」
この時、僕は確信した。この娘はなんにでも首を突っ込むタイプなのだと。このままでは本題からそれかねない。それに伴い僕の残りの学生生活も侵食されるかもれない。早い段階で
軌道修正をしておこう・・・。
「確かに、不審者を野放しにし、被害者を増やすのはよくない。しかしそれは警察に任せて僕たちは君のお母さんが遺した『大切なもの』を探すことに専念しよう」
「ええ、確かにこの事件は警察に任せるべきことだと思うわ」
物分かりがよくてよかった。
そう思いほっと胸をなでおろしたのも束の間。
「でもね、私たちだからできることも何かあると思うの。それに私たちは組織に縛られているわけでもないから自由に捜査できると思うわ。ということで私の事は置いといて捜査を開始するわよ!」
どうやら何を言ってもダメなようだ・・・。こうなれば早々に解決するのは難しいかもしれないが、どこかで落としどころを見つけて、自分の時間を取り戻そう。それにこの娘の件も、事件が終わり次第、管理人さんに尋ねてその結果を伝えれば僕のお役目も御免だろう。とりあえず今日はなんだか疲れた・・・。明日から捜査は始める旨を伝えよう。
「わかった。とにかく明日から捜査は始めよう。今日はもう遅いし、僕は空腹だ」
「ダメよ。こうしている間にも被害者が・・・」
ぐう~
どうやらお腹は正直なようだな。黒髪の少女は一つ咳ばらいをした。
「あ、明日から本気を出すわよ!」
「そうだな。とりあえずバス停まで送らせてくれ。この辺は街灯も少ないし不審者の件もある」
「いいと言っているのに・・・。分かったわ。バス停までお願いするわ」
「ああ、しっかり送らせてもらう」
そう言って僕と黒髪の少女は部屋を出て、狭い歩道を歩きバス停へと向かった。携帯の天気予報の通り外は肌が痛いほど冷えている。それに濡れ雪がちらほらと降っている。噂の不審者はこんな寒い中でも不審活動を行っているのだろうか。もし行っているのなら大したものだな。その努力を別の方向にもっていけば成功の道を歩めるだろうに・・・。などと考えながら歩いていると、黒髪の少女は何かを思い出したかのようにしゃべりだした。
「そういえばあなた」
「どうかしたか?」
「あなた、さっき僕たちは君のお母さんが遺した『大切なもの』を探すことに専念しようといったわよね」
「ああ、確かに言ったと思うが」
「それならよかったわ。あなたに頼るのは管理人に連絡を取ってもらうくらいまでかと思っていたのだけれど、その調子だと最後まで付き合ってくれるみたいわね。ありがとう、助かるわ」
「!?」
どうやら僕の発言は最後まで『大切なもの』探しを手伝うものだと思われてしまったらしい。さらに僕の発言さえなければ思惑通りお役目はすぐに終わっていたみたいだ・・・。ちゃんと言い直そうか。しかし感謝の言葉まで言われて今更言い直すのもばつが悪い。こうなれば最後まで付き合うしか無かろう。さよなら僕の学生生活。
「あ、ああ。明日からな。明日から頑張ろう」
これからしばらく顔を合わせるのだ。名前を聞いておこう・・・。
「君の名前を聞いていなかった。僕の名前は船隠一会大学四年生だ。よろしく頼む。」
「分かったわ。私の名前は桐光高校三年生よ。私の事は好きに呼んだらいいわ。あなたのことはそうね、船隠だと言いにくいし、一会先輩と下の名前で呼ばせてもらうわ。」
「なら、光、よろしく」
「ええ、これからよろしく頼むわ一会先輩」
先輩か、久々に聞く響きだな。悪くない。
お互いの自己紹介を済ませるうちに大通り沿いにあるバス停に到着し、ちょうどバスも来た。僕が住む市が運営するバスだ。
「それじゃ今日は急に押しかけてごめんなさい。また明日行くわ」
そう言って光はバスへと乗り込んだ。そしてバスはすぐに出発し夜の道路を進んでいった。
「嵐のような子だったな。明日からも騒がしくなりそうだ・・・。おなかがすいた、今日はコンビニでいいか。部屋も片付けないと・・・・」
こうやって僕の騒がしい一日は終わった。