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80話:公務員の神話10分の1。

 不況になると公務員が人気になる。

 まあ、公務員にもいろいろあるのだが……かつて、当たり前のように語られたお話。

『デモシカ教師』という言葉があった時代の常識が、今も成り立つのかどうかはちょっと疑問。

 ちなみに、『デモシカ教師』という言葉には二つの意味があるのですが、ここでは高度経済成長期における『教師でもやるか』、『教師にしかなれない』の、意味合いで用いてます。

 ははは、今からするととんでもない話ですよね。(笑)

 今の時代、教師を目指すというだけで周囲からは尊敬の眼差しで見られますよ。

 その割には、相変わらず志望倍率は高く……それだけを見るなら、人気職種とも言えるのか。

 教師に限らず、公務員全体の倍率は高い水準で推移し、サラリーマン志向も上昇しているあたり、目指すものは安定なのだろう……的な認識に、異議を唱えるつもりはありません。

 成績が良ければそれだけで『医者を目指せ』などと親に言われた時代もありましたが、今は『医者を目指せ』という親はかなり覚悟完了の人か、世の中が見えてないかどちらかではないかと。

 医者は医者でも、最も訴訟リスクの低いと言われる歯医者の数はどんどこ増えてるそうな。

 保健医療費の削減について色々と国が取り組んでいますが、スウェーデンをはじめとした虫歯予防の取り組みの成功例に対して、ある時期から国がものすごく距離をとり始めたのはなかなかに興味深いですね。


 さて、公務員に対する八つ当たり気味の攻撃理論がやたら激しかった時期がありましたが……一言で言うとマスコミは怖いなあと。(笑)

 まあ、その正否というか正誤というか妥当性云々の話はさておいて、批判的な攻撃理論を端的にまとめると……。


 給料が高い。


 地方公務員、国家公務員の知人が居る私としては、口元半笑いにならざるを得ませんでした。

 一般平均に比べて公務員がいかに恵まれているか……みたいな論理展開を繰り広げるのが常でしたが、企業によって給与が違うのは当たり前だよなあ、と。

 いわゆる民間企業で給与が多いところを羨む声はあっても、批判する声はない……というか、そもそも批判する権利も根拠もないですからね。

 なのに、対象が公務員というだけで、正当性が与えられたかのように批判していたのはなぜか。

 結局、公務員だから?(笑)

 公務員だから、安い給料で働けと。

 公務員の給料は国民の税金で賄われているから、低賃金とまでは言わないが、平均以下の給料で馬車馬のように働けと。

 この考えになんの疑問も抱かない人は、多分、民主主義と資本主義のセンスがないよなあと私は思ってしまいます。

 まあ、需要供給の関係で、賃金が下がれば基本的に希望者は減少します。

 みんなが嫌がる仕事は、希望者が減って不足するので賃金を上げて調節しなければいけません。

 一般的に、優れた人材は高い賃金に集まります。

 公務員の人材レベルが落ちると……どうなりますかね?

 そもそも公務員というか、国なり地方自治が統括する事業は、社会に対する影響力が大きすぎるとか、採算は取れないが社会維持のために必要なものなわけで。

 まあ、現代の社会モデルはそんなに単純なものではありませんが、公務員に限らず、各種方面に人材を振り分けなければ社会運営に軋みが出ます。

 教師に対し、生徒のお手本となるようなとか、生徒が憧れるような聖人君子でなければいけないみたいな幻想を抱いている人がいますが、そんな人材は希少な存在だからこそ貴重なわけで。

 教育は国の柱の一つであることに間違いはありませんが、教育という一つの柱に貴重な人材が集中させたら社会運営に支障が出ます。

 冗談抜きで、今は教育現場や医療現場から人材が逃亡している状態ですからね。

 リスクに対して賃金が見合っていないと判断する人間が多いわけです。

 社会的貢献とか、仕事のやりがいとか、各個人の献身によって維持されるシステムは遅かれ早かれ破綻します。

 数、質ともに適切な人材が供給される給与……これが求められる水準となります。


 極論ですが、あなたが公務員の働きに満足していないとすれば、それは給与水準が低くて人材のレベルが要求水準に達していないからかもしれません。


 まあ、給与の話は個人の主観もからんでくるし、そもそも平均とかの統計のあり方も怪しいですしね。

 職種別とか、年代別とか、勤続年数とかの数字が示されていない時点で、比較対象もあやふやになりますし。

 それと、公務員に関してよく語られる……残業もなく定時上がり。(仕事が楽)

 公務員に限らず、どの職場でも他人に仕事を押し付ける人間はいますし、仕事のできない人間は上司が仕事を与えなくなるのはどこでも同じ。

 もちろん、状況の変化に対する人材の流動性が厳しいので、時代の流れによって仕事量は減ったけど働く人数はそのままで……みたいな職場があるのは確からしいですが。

 基本的に、うわさ話とか、美談とかは、珍しいから話題になります。

 当たり前の話は当たり前だから話題になりません。

 公務員が暇という話は、風評被害である可能性が高いと私は思ってます。

 いや、私の知人のそれから考えると……そうとしか思えません。


 ついでにいうと、公務員は政府方針を率先して守らされることが多いです。

 週40時間労働とか、残業は何時間までとか。

 最初は、残業しても残業時間がつかないなどの対応。

 公務員だから当然監査とかが入りやすくて、現実として守られていないことがバレる。

 無理矢理でも守らせろと上司が上から命令される。

 仕方ないので、上司は部下に定時になったら帰れと言う。

 仕事は家でやってこいと。(笑)

 アピールの為、何時になったらフロアの電源を落として、『ほら、うちは指示されたとおり定時に帰ってマース!』などと、物理的に職場での残業が不可能になる。

 データを家に持ち帰って事実上の残業をする。

 情報漏えいなどの不祥事が発生。(笑)

 職場からのデータのもち出しを禁止。

 これで、データ漏洩のリスクは減少しました。

 いや、課長、データの持ち出し禁止って、仕事ができないじゃないですか?

 ちゃんと定時に帰れよ、仕事はちゃんと家でやってこいよ。

 課長、何むちゃくちゃ言ってるんですか?

 うるせえ、そもそも上がむちゃくちゃ言ってんだよ!

 電源が落とされたフロアで、ノートパソコンでこそこそと仕事をする。

 監査にバレて、上司が叱責される。

 上司が部下を叱責する。

 上司、部下ともに、精神を病み始める。


 ……この物語はフィクションです。

 日本各地で、このまんまの現象が起こっているかもしれませんが、それはあくまでも偶然に過ぎません。


 と、いうわけで……公務員が定時に帰っているのは、定時に帰らされているからかもしれません。

 公務員に限らず、民間企業でも普通に起こりえていることです。

 ノー残業デイなどと世間にアピールする裏で、社員は理不尽にまみれていたりします。

 どの職場であろうと、結局は人間のやることですからね。

 決して公務員が特別ではありません。


 私は、公務員の神話なんて信じません。(笑)

 神話はあくまでも極少数の例外なのです、きっと。


 

面白くない話は噂にならない。

面白い話は、ありふれていない。

つまり、噂は真実の一端を示すことはあっても、全体的に見ると希少なネタであると同時に、脚色が加えられていく。

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