63話:走る走る。
イチゴの収穫にはちょっと早いか。
内容を裏切るタイトルというか、ひねるのが好きです。
と、言うわけでいちごの話。
家庭菜園レベルのお話ですが、私が子供の頃、実家でいちごを露地栽培してました。
田舎育ちの人間にとって、農業は触れる機会が多いのですが、専門的な知識を持つには至らないのが普通です。
家庭菜園では定番の、トマト、キュウリ、ナス、ネギ……まあ、土地だけは余ってましたから。
色々やってましたが、きちんとした育て方は知らないのです。
私の父親にしたって、『肥まこか』などといって、発酵もさせてない人糞を(以下略)。
一応説明しておきます。
今はほぼ伝説の存在となる肥溜め。
子供が落ちて……などというネタは、既に漫画でも使われない状態ですが、肥溜めで数ヶ月発酵させるという過程には大いに意味があります。
まず、発酵することで温度が上がり、人糞内に含まれる寄生虫などを死滅させます。
というか、発酵にはほかにもいろいろ意味はあるのですが、とにかくここ大事。ものすごく大事。
徹底管理の進んだ現代において寄生虫の存在はレア化してます(その反面、無知化が進む)が、生産消費のサイクルで拡大再生産が(以下略)。
もちろん、父の行動は周囲の農業を営む者にとっては明らかに『奇行』であり、陰で思いっきり馬鹿にされていたのは言うまでもありません。
指摘してくれないのは、田舎のいやらしさであり、優しさでもあり、残酷さでもあります。
まあ、今でこそ私もそういう知識がありますが、田舎の人間だから農業に詳しいというのは幻想ですね。中学生に上がるまで、連作障害すら知りませんでしたから、お恥ずかしい話ですよ。
農家は農家で、自分の専門作物に対する専門家であって、専門外については今ひとつなケースも多々。
それで、いちごの話。
ハウス栽培が主流ですが、露地栽培によるイチゴの収穫は基本的に春から初夏にかけて。
ちなみに、クリスマス需要に対してどう対応しているかというと、夏場にイチゴの苗を人為的に低温状態において、秋になってからハウスに植える感じです。
さて露地栽培ですが、意外にも苗を植えるのは10月頃。(当然地域の平均気温によってずれます)
イチゴの苗が越冬する事が、子供だった私にはとても意外だったことを記憶してます。
越冬させるためには、こまめに枯葉を取り除いたりする手間がかかりますので……まあ、大した手間ではありませんが。
まあ、このあたりの話はネットで調べたほうが早いでしょうから割愛します。
タイトルにもつながるのですが、ちょうどこの時期にイチゴの苗からランナーが走るのです。
実際にランナーというのかどうか知りませんが、私にそれを教えてくれた農家のおじさんはそう呼んでました。
まあ、苗からにょーんと、芽というかツルというかがのびて地面に接地、ここに子株ができるのです。
親株は苺の実がそろそろ収穫できそうな状態で、新しく子株が生まれる。
その子株が成長し、また新たな子株が……。
畑の畝に沿って、ランナーが走る走る。
子供心に、どんどんと伸びていくランナー、どんどん増えていく子株……これが見ていてとても楽しかったんですね。
子供ってのは、目に見える変化を好みますから。(笑)
さて、肝心の収穫に関しては、素人が適当に世話している露地栽培のイチゴがそれほど美味しいわけでもなく(といっても、当時のいちごはそれなりに珍しい)、家庭菜園の運命ですが、毎日毎日そんなイチゴが食卓に並んで……美味しくないものの運命など残酷なものでした。
今思うと、やたら白いイチゴを見かけたような……病気?
最後には収穫すらしなくなって、アリの餌ですわ。
とりあえず、イチゴの栽培はアブラムシとハダニとアリが天敵って感じでした。
まあ、ハダニはともかく、アブラムシとアリはほぼセットですし。
ちなみに、コンテナでも栽培できます。
20(縦)、60(横)、20(深さ)ぐらいのサイズで、苗が3つ。
もちろん肥料は必要ですが、ベランダでも十分いけるはず。
イチゴの花は白い花で、観賞用としても……うん、花より団子だ人間は。
親株、子株、孫株と増えていきますが、苗取りは孫株からの方が良いと農家のおじさんは言ってました。
直系だと、病気が表面化しやすいとかですかね?
興味のある方は、調べてください。




