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53話:大根飯を作ろう。

 野球はお金がかかります。

 つまり、野球が続けられなくなったら、金銭的余裕ができるし、練習時間分だけの時間の余裕もできるし、趣味はもちろんバイトする時間も取れるし、栄養とかあまり考えなくてもいいから食べたいものが食べられるぜ……いやっほう!

 などと、アスリートとしての絶望的挫折によって、私の大学生活はにわかに楽しくなってきたのでした。


 (ツッコミ待ちスペース)


 と、いうわけで……子供の頃やたら流行った朝ドラの中で気になったあれをつくろうと思ったのですよ。

 え?人生の目的を見失って、迷走してるんじゃないかって?

 はははは、これが若さだ。

 と、いうわけで大根飯である。

 金もかからないし、季節さえ選べば材料も手軽に入手できるわけで。

 とりあえず最初は、普通に作ってみましょうかと。

 大根は1センチ程のサイコロ切りにして、葉っぱは小さく刻んでから軽く湯掻いておきます。

 油揚げなんかも混ぜたいところだけど、ここはシンプルに。

 米6、大根4ぐらいで、醤油とだし汁、みりん少々……。


 で、出来上がったものを食べたら普通にうまい。

 と、言うことは……あの朝ドラの中で語られる大根飯は、これじゃない。

 まあそりゃそうだ。

 冷害と言うか飢饉というか、米の代わりに大根ブチ込んでるようなもんだからして。

 さあ、リアルに迫るぜ。

 米1、大根9。

 ふはははは、水に大根がプカプカ浮いてやがる……待て。

 大根には水分が多く含まれているから、炊飯のつもりでやるとベチャベチャになるだろう。

 水量調整……マニュアルないので、これまでに育んだキッチンスキルというか、勘で。


 で、炊き上がったものは……まだ水が多かったのか、おじや風。

 苦笑しつつ食べると、普通に美味しい。

 出汁を吸った大根がほのかに甘く、これはこれで。

 あれ?

 えーと、ヒロインの口の周りに米だか大根だかがはりついて……もうちょい固めに?

 いや、それ以前に出来立ては美味しいよ。

 つまり、炊き上がったものをおひつに移して、冷え切ったものを……。

 ふむ、冷えた分、味付けが濃く感じられてこれはこれでなかなか……。


 違う、何か違う。


 問答無用の大根10。(笑)

 今でこそ炊飯器を使った料理なんかのレシピがありますが、当時はものすごく違和感を覚えたとだけ。

 うん、大根の煮物ですね。

 私の好物です。


 ちゃうねん。


 米は贅沢品。

 つまり、大根飯と言いながら、米は使われてなかったのだきっと。

 第一候補、麦。

 稗、粟などの雑穀も手に入れてみる。

 しかし、炊飯器で麦やら雑穀やら……少し悩んだが、水の量だけ気をつけてやってみることにした。

 ほほう、麦飯は学校給食で経験済みだったけど、雑穀もなかなかに新鮮で面白い。


 多分、品種改良ってすごい。

 あと、調味料。


 最終的には、炊き込みご飯という感覚を排除して、本当に米を炊く方法でやってみました。

 つまり、味をつけない。

 麦と大根を、ただ水で煮るだけ。


 ああ、うん……なるほどねえ。

 多分こんな感じというか、実際はもっとアレなんだろうけど。

 麦というか、穀物の炊き上がったあの匂いと、大根のほのかな甘さがものすごくガチで殴り合ってる感じがたまりませんな。(笑)

 水分を少なめに、歯ごたえを残した感じにするとその感覚は薄まりますが、今度は微妙に大根の青臭さが感じられて……まあ、我慢できなくもないけど、毎日毎日これだとさすがにきついかもしれません。

 そして、これを冷やしてパッサパサにしてから食べると……うん、美食に慣れきった現代っ子を泣かせる味だぜ。(笑)

 でも多分、実際はもっとアレなんだと思われる。


 実際食べてみればわかるのですが、大根は消化に良いというか消化が早いというか……すぐにお腹が減るのだ。

 ああ、常に空きっ腹を抱えている状態で、これはきつい。

 美味い不味いよりも、大根飯の辛さってのは、案外ここにあったのかもしれない。 

大根の炊き込み飯は、今でも割とつくります。

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