51話:4番バッター
10年以上前、どこかの球団を評した『4番バッターばかりを集めても野球は勝てない』なんて言葉が有名になりました。
私個人としては、『は?何言ってんの?』と思ったのですが……ただ単純に、彼の人の言う4番バッターの定義と私の考えるそれとが違っていただけの話なんでしょうか?
3、4、5番を『クリーンアップ』というのですが、その由来は文字通り走者をお掃除……つまりホームへと返すことを期待された打順なわけです。
ツーアウト1塁、ノーアウト2、3塁、ワンアウト1、3塁……状況が違えば、それぞれ求められる打撃も変化するというか、高確率で点が取れるバッティング、あわよくばそれに加えて相手に精神的ダメージを与えるプレイが求められるのが、クリーンアップです。
つまり、彼らに求められるのは、状況をきちんと理解して最適と思われるバッティングというか、プレイをすること。
野球をよく知っていることと、求められるプレイに応えられるだけの技術。
で、最後の……ランナーがいないときでも状況を変化させられる長打力ってのは、どちらかといえば『あったらいいね』という感じ。
『4番バッターばかりを集めても野球は勝てない』という言葉における4番バッターの定義は……まあ、長打力だけあって、状況を理解できずにバットを振り回すバッター……ですよね?
実際問題、『大きいのを狙って振り回す打者』ってのは、4番バッターにはなれません……打率にもよりますが6番とか、8番を打たされることが多いです。
緻密な野球ができないから……を語る人間なら、そんなことは百も承知のはず。
とすると、この言葉の本当の意味は『バカを集めても野球に勝てん』というところでしょう。
ただ、このまま言うと角が立つというか……そのあたりを考慮して、『4番バッターばかりを集めても野球は勝てない』と言葉を飾った言い方だったのではないでしょうか。
私の推測ですが、それなりに自信はあります。
正直、本当に4番バッターばっかり集めたらすごい打線になりますからね。
かつて言われてた『4番バッターに対しては監督が全て任せてサインを出さない』ってのは、監督がサインを出すまでもなく、状況に応じたプレイを出来るからです。(笑)
つまり、本当の意味での4番バッターが存在しないチームは当然あるわけで。
『4番バッターばかりを集めても野球は勝てない』の言葉が有名になってから、どうも4番バッターに対する敬意というか、価値が下がったような気がして。
野球をやる人間にとって、やっぱり4番は憧れなのです。
ブンブン力任せにバットを振るだけのバカには憧れません。
それにしても……ペンは強しというか、言葉というものは怖い。
マスコミはキャッチーな言葉に飛びつきますからね……言葉の裏を読まないと、言葉がひとり歩きしてしまいます。




