48話:ホワイトなデイ。
倍返し、じゃなくて3倍返しだ。
このネタ、既に賞味期限すぎてるんでしょうね……結局ドラマは見てないんですけど。
というわけで、ホワイトデー。
そういや、バレンタインについて書くの忘れてたなあ……成人式も書くの忘れてた……などと、過ぎ去ってから気づく悲しみを癒すため、私は書くのだ。
私が初めてお返しをしたのは、小学校高学年の時。
なんかいきなりだったから、この頃バレンタインデーという文化が生まれたのかもしれないが……既に『3倍返し』とか『マシュマロとかキャンデー』とかの認識が存在していたことを考えると、私の住む田舎に伝わってきたのがその頃だったということか。
穿った見方をすれば、業界の策略というか『バレンタインデーとホワイトデー』がセットでお得な広報努力がなされたのかもしれませんね。
まあ、何はともあれ義理だろうが本命だろうがもらったからにはお返ししなければいけないという空気は既に濃厚であり、回避不可能であったとだけ。(笑)
そもそも『お返しヨロシク』とにっこにこで渡されたあたり、甘酸っぱいあれやこれとは関係なく、最初からお返し目的の、投資の一環でしかないことは明らかであったが。
甘酸っぱいアレやこれやは、中学にあがってからのおはなしだ……まあ、機会があればその時に。
さあ、お返しだ。
しかし、いきなりの絶望である。
1人で校区外に出かけてはいけないのだ。
はっきり言おう、校区内に商店はない。(笑)
小学2年生まで駄菓子屋が一軒あったが、おばあちゃんが亡くなられて閉店してしまった。
両親と一緒に買い物に行けばいいじゃないというかもしれないが、当方、男の子なのである。
女の子へのお返しのための買い物というか、そもそもどんな名目であれ女の子からそれをもらったことを親に知られたくないのだ。
だって男の子だもん。(笑)
それが男の子だもん。
可愛くもないのに、どこか可愛い……それが子供の理不尽さである。
校則を守るより大事なことがある。
少年は少し大人になり、自転車に乗って街へと出かける。
焦ってはいけないが、ゆっくりともしていられない。
買い物に出かけた母親が帰ってくるまでに、自動車に乗って出かけた母親が行くスーパーよりも遠くの店に、自動車よりも遅い自転車で行って帰ってこなければならないのだ。
気づけ、子供の頃の私。
そんなことは不可能だ。(笑)
そして、既に帰宅していた母親の目を避けつつこそこそと自室に戻ろうとした私に向かって、母親が笑っていった。
「あんた、〇〇ちゃんからチョコもらったんやろ?これ、お返しに渡し」
バレバレじゃねえか、チクショー!
自分で食べると文句を言われそうだったので、仕方なく自分で買ったモノと母親が買ってきたものを合わせて〇〇ちゃんにお返しした。
1年後、同学年の女の子がみんな揃ってニコニコ笑いながら私にチョコをくれたのは言うまでもない。
良いカモだと思われたんですね、チクショー!
そして私は、ほんの少しだけ大人になった……ちょっぴりゆがんだ形で。(笑)




