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47話:親方(相撲じゃない)

 大学時代、土木関係のバイトをした。

 昔風の言い方をすれば、土方だ。

 その地域の下請けの下請けぐらいを任される、大きくはない事務所ぐらいの規模。

 地方自治の公共事業というか、工事関連の落札には色々と規則が有り、事業規模とかその他いろいろあって、自由に参加できるわけではない。

 大きな会社が落札し、下請けにまかす。

 その下請けが、さらに下請けに……。

 うん、中抜きがどうとか、怖いから書かない。昔の話ですし。(笑)

 現場にほんの少しだけ現れて、あとは全部こっち任せなのに、管理責任者の名前が違う名義で、『これだけであいつら(ピー)%も持って行きやがる』などの話も、怖いから書かない。うん昔の話だから。

 落札によってコストが抑えられるとか言うけど、仮に競争の結果ギリギリの落札価格だったとして、そこから下請けに回す場合、当然紹介料とか名義貸しの名目で金を抜かれるから、実際に工事に当たる集団において、採算面を割り込んだ価格になって、それをどうにかするためにどうにかして、後々ものすごい騒ぎになったりしないのだろうか……などとバイトの考えることじゃない。(笑)

 バイトの考えることじゃないのだが、書類作成やら、簿記資料やら、バイトにやらせるのはどうかと思う。

 それが出来てしまった私の自業自得かもしれないが、重宝されたというか、可愛がってもらった。


 と、いうわけで現場監督……いわゆる親方の話である。

 バイト当時はなんとも思わなかった(人格面で言うなら、良い人でした)のだが、皮肉なことに、後にコンビニのバイトを始めて、あの親方がとても優秀というか、思慮深い方だったのだなあと。

 正直、尊敬の念すら抱いている。


 工事現場に出るとき、履いている靴とは別の靴を用意しておけと言われたことがありました。

 道路のガードレールの設置工事なんかは良いのですが、現場によっては下が土の時があります。

 当然そこで作業すれば、靴が土で汚れますし、水を使う作業だったり、天候次第では泥にまみれることになります。

 さて、休憩時間。

 近くの商店・コンビニで買い物するなら、靴を履き変えていけ、と。

 床を汚して迷惑をかけるなよ、と。

 そのための、靴の用意ですね。

 これだけでもわかるように、親方の気配りというか、物事の段取りについては、まさにかゆいところに手が届くケアだった。

 工事現場をきちんと確認する。

 近くに昼食を取れる(買い物含めて)場所はあるか、トイレの有無、作業スペースの確認……それを踏まえて、バイト連中に指示を出してくれる。

 指示を守らずに怒られて、クビになったバカもいたが。

 社員というか、バイトじゃない人たちにいちいち細かい指示は出してなかったので、そのあたりはちゃんと教育されていたのだろうと思う。


 俺らは正直周囲から尊敬されるような仕事というか、評価をされない。

 それだけに、周囲からの目に注意しろ。

 周囲に迷惑をかけるな。

 ……今思うと、昔気質の人だったのかもしれない。

 今なら、『仕事に貴賎なし。人類平等だから気にする必要はない』などとうそぶく人間の方が多いかもしれないが。


 で、コンビニのバイトを始めてみれば。

 泥だらけの靴で歩き回り、床をどろどろにする。

 トイレを使って手を洗い、周りを水でビシャビシャにしたまま放置。

 ゴミを持って帰らず、捨てていく。


 あぁ、あの親方が特別だったんだ。

 自分にとって、あれは良縁だったのだなあ、幸運だったのだなあ、としみじみ思った。

 

 ただ、別の意味で不幸だったのかもしれない。(笑)

 口が肥えたというか、目が肥えたというか……まあそういう意味で。

  

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