41話:賢者の贈り物。
注意:少々残酷なイメージを与えるかも知れない記述があります。
クリスマス直前、フランスから優しい微笑みを浮かべる老女が日本へとやってきた。
息子夫婦が仕事の関係で日本に住むことになって数年、息子夫婦に会いにというより、気軽に会えなくなった可愛い孫二人の成分が不足したのが来日の主な理由であろうと推測される。
もちろん、孫はほかにもいるのだが。(笑)
初めての日本、数年ぶりに会う孫、そしてクリスマス。
祖母のテンションは高かった……息子夫婦が苦笑し、孫ふたりが少々引くほどに。
さてクリスマスイブである。
孫は学校、息子夫婦は仕事と用事で出かけて家には祖母一人。
さすがに一人で日本の街中へ繰り出すほど無謀ではなかった彼女は、みんなのために料理の腕を振るうことにしました。
息子夫婦はもちろん、孫二人も学校の後友人と遊んでから帰る……と、必然祖母のそれは夕食の準備となります。新たに買い物というのもおぼつかないため、既に家にある材料を使った料理という縛りを受けて、息子が大好きだった、自分の得意料理を作ることに決めました。
と、いうことで祖母は腕をふるいました。
慣れないキッチンでしたが、満足できる仕上がり。
みんな喜んでくれるだろう……そう、思っていたのです。
一番早くそれに気づいたのは息子さんでした。
思わず手で顔を覆います。
やや遅れて、奥さんがそれに気づきました。
ほんの少しばかり遠い目をして……今更どうしようもないと、苦笑しつつそれを口にしました。
ああ、確かにこれは美味しいわ……と、子供たちに視線を向けます。
何も知らず、何も気づかずに、子供たちは『美味しいよ、お祖母ちゃん』などと、嬉しそうな祖母とのスキンシップに勤しんでいます。
祖母が作ったのはシチュー。
ウサギの肉を使ったシチューです。
祖母にとって、ウサギは子供の頃から親しんだ食べ物であり、家で飼っているウサギは、『家畜』の認識でした。
そして、孫にとってウサギは『ペット』だったのです……。
「それから5年、グランマとは口もきかなかったよ」
「そ、そうなんだ……」
「クリスマスカードも贈らなかったしね」
冗談ぽく喋ってるけど、ここは笑っちゃいけないとこなんだろなぁ……と、私は言葉を濁すしかなかったのでした。
小学校で飼ってたチャボ。
卵を産まなくなると、首をきゅっと……それを聞いて、何人か泣いてました。
私は、肉は誰が処理したのかなぁなどと考えてましたが。
ちなみに、ウサギは足の部分をぐるっと切ってから革をはいでいくそうな。




