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38話:なでポは夢か?

 高校球児はなぜか、最後の夏の大会が終わるとみんな髪を伸ばしたがる。

 幼稚園の頃から丸坊主だった私には、その思想は正直なところよく理解できなかった。

 そもそも、中学校は男子の丸坊主が強制だった……今なら、人権がどうとか、保護者が騒ぎ立てるのかもしれないが、私にはどうでもよかった。

 高校では、野球部員は丸坊主を強制された……これもどうでもよかった。

 最後の夏の大会が終わっても丸坊主で、チームメイトやらクラスメイトから『まだ現役か?』などとからかわれ、仕方なく角刈りにジョブチェンジを果たした。


 ジョブチェンジになってねえよ!などと、一斉にツッコミを受けたが。


 子供の頃から丸坊主だったせいか、耳に髪の毛が触れると落ち着かないのである、イライラするのである。

 髪を乾かすのが面倒くさいし、リンスで髪の毛をケアするのも面倒くさい。散髪屋でアレコレ説明するのも面倒くさい。

 髪の毛が痛んできたら、というか痛む前に丸刈りである。

 実にシンプル。

 ただ、外国の人間にとっては丸坊主は囚人を連想させるケースがあるらしく、大学において留学生の人間にいろいろ尋ねられ、私はようやく短めのスポーツ刈りへとクラスチェンジした。


 さて、以前書いたが、大学において私は大怪我をした。

 手術が必要で、しばらく利き腕が不自由になることから、私は再び頭部の装備を丸坊主へとチェンジした。

 そして、大学の講義へ……。


 人が群がってきました。(笑)

 なぜかみんな、生暖かい笑顔で頭を撫でるのである。

 男子学生だけじゃなく、女子学生まで何故か楽しそうに私の頭を撫でる。

 後に、丸坊主がある種のファッションとして流行したような気がするが、あいにくそんな時代ではなかった。

 首から後頭部にかけて髪の流れに逆らうようになで上げる感触がたまらないという派閥と、頭頂部付近を撫で回すことによって与えられる手のひらへの絶妙な刺激が最高という2大派閥が存在してしまったり。(あと少数派)

 なでなでなでなでなでなでなで。

 私は皆のなすがままに撫でられ続け、自分の大怪我という事実から多少目をそらすことができたので、特に不愉快には思わなかった。

 さて、私の頭なでブームはしばらく続いたのだが、その中の一人、女子学生なのだが、何度も何度も機会を見つけては私の頭を撫でに来るので不思議に思って尋ねてみた。

 彼女は小柄だった。

 女子の平均身長が150センチ後半の中、彼女は自己申告で145センチ。

 彼女いわく、『ちっちゃいってだけで、とにかく撫でくり回される』のだそうだ。

 やめてといっても、撫でられる。

 仲間内のそれが発展し、調子に乗って男子まで撫でてくる。

 女子はともかく、好きでもない男子に触られるなんて気持ち悪い、と。


 あー、うん、つまりこれは、八つ当たりなのかね?


 うん。

 あら、とっても良い笑顔で言われちゃいました。(笑)

 じゃあ、仕方ないね。

 ああ、彼女は頭頂部派閥……多分、身長のコンプレックスが影響したものと思われる。


 ちなみに当時、なでポなる言葉はなかった。

 彼女の意見が絶対とは言わないが、多分普通の意見だとは思う。

 なでポ以前に、触っても嫌がられない時点で、かなりの好意を持たれているのだきっと。

 撫でポではなく、既に、『ポ』なのだ。

 ついでに言うと、小柄な女性の頭を撫でるのはやめたほうが良い。

 彼女たちは、多分怒りをためている。

 ぐつぐつと、マグマのように。

 彼女は中学生の時点で、激おこだったそうな。

 そう、撫でるなら小学生。


 お巡りさんこいつです。(笑)

撫でてる人たちは楽しそうでした。

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