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32話:蝶の呪い。

 新婦の友人であるという彼女たちがその歌を歌い出したとき、私はぎょっとした。

 結婚式だから。

 結婚式に、蝶の歌はまずいって。

 焦りつつ周囲に視線を向けたのだが……あれ?

 ノーリアクションというか、みんな普通にそれを聞いてるというか、見てるというか。

 あれれれれ?

 首をひねってひねって、司馬懿を目指すも途中で挫折した私に気づき、知人が胡乱げな視線を向けてきた。

「……何しとん?」

「あ、いや……(声を潜めつつ)結婚式に蝶って……いいの?」

「……は?」

 知人の反応に、あ、これって俺の常識が世間の非常識のパターンだと悟り、口をつぐんで曖昧に誤魔化すことにした。

 とりあえず、その場はそれですんだのだが……。


 さて、どうやら全然一般的でも何でもない『結婚式に蝶はやめて』のネタについて。

 蝶の道(正確には蝶道)をご存知でしょうか。

 春の野原やら畑で蝶々にまとわりつかれた経験が誰にでも……あ、田舎もんだけですか、そういう経験があるのは。

 蝶々には、同じ道を行ったり来たりする性質があります。

 直線往復運動をイメージして下さればそれでオッケー。

 ちなみに蝶々にまとわりつかれるのは、蝶の道をふさいでいるから。

 間違っても、俺(私)、蝶々に好かれてるなどと勘違いしてはいけません。

 察しの良い方は、ここでピンときますかね。

 同じ道を、行って戻ってくる。

 うん、出戻りですね。


 嫁に出した娘が、1年も経たずに『(戻って)きちゃった…』などと、実家の玄関に佇むのを喜ぶのは、娘さんを溺愛する父親だけかと。


 と、いうわけで……結婚のお祝いなんかに蝶々のアクセサリーやら、服やら、そういうのは不吉というか、あまりよろしくないよね、という考えが……一般的ではなかったんですね。(笑)

 ここで終われば、ただのうんちく話なのだが……ちょっとばかり続きがある。

 二次会において知人が私の反応を蒸し返し、それを説明したのだ。

 説明が終わり、チューハイで喉を湿らせた私の隣に女性が座る。

 例の歌を歌った、新婦の友人のひとり。

 私の肩を指先でつつき、耳元で囁いてきたのだ。


 知ってたよ、私。




 いえ、私はそんな生々しい人間関係は知りたくなかったです。


……この物語はフィクションであり、実在する人物とは一切無関係ということにしておいてください。(手遅れ感)

 その後が気になる方のために、一言。


 蝶々の呪いは発動しました。



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