29話:黄色い悪魔の季節です
やつらが、やつらがやってくる……
明日は立春である。
暦の上では春だが、それを実感できる日はまだ遠い。
目を閉じ、故郷の景色を思い浮かべる。
穏やかな陽光が、山々の冬の衣装を脱ぎ捨てさせ、重い荷物を下ろした木々は息を吹き返す。
草木は新たな命を育もうとし、芽を出し、花を咲かせ、これでもかとばかりに花粉を撒き散らす。
ひっくしゅっ!!
ちくしょう、奴らもうきやがったのか。
気圧配置の関係から、中国大陸から日本列島に向かって強い風が吹く。
そう、これはひと足早い黄砂。うん、黄砂に違いない。
ほうら、強い風が山々のスギ花粉を鷲掴みにして空を黄色く染めているじゃないか。
……いや、(リアルでは)まだだけど。(笑)
ほら、日記っぽい感じで書いてるから、たまには時事ネタとかいうか、季節に合わせたお題を投げたいのです。
でも、街に出てくるついでにネットカフェに寄って……なので、基本は予約投稿の形になり、お約束なネタしか季節に合わせられないのがちょっと歯がゆい。
と、いうわけで花粉症な私です。
両親、兄二人、みんなそろって花粉症。
故郷の山は、本当に黄色く染まりますからねえ……子供の頃から花粉を浴びまくって、ついに『もう辛抱たまらん』とばかりに花粉症の発症とか、笑い話にもなりませんわ。
今や、ありふれた話ですからね。
まあ、立春を過ぎたあたりから奴らの気配を感じるのは本当です。
いきなり鼻の奥にツンと来て、くしゃみしながら春の訪れを感じるのです。
花粉症じゃない人にはわからない超感覚……ニュータイプですね。
毎朝毎朝、『今日の花粉情報』などと知りたくもない悲しい現実を、微笑みで視聴者に突きつけるアナウンサーをぶん殴りたくなったのも過去の話。
花粉情報よりも、自分の鼻の方がよっぽど優れたセンサーだからというわけではなく、テレビを見なくなったから。(笑)
明けない夜がないように、季節は巡りて春が来る。
春が来れば思い出す、鼻の奥の痛みと流れる涙。
ひび割れた唇は言葉を無くし、かさついた肌から失われる生気。
あぁ、春よ。
新たな命を育む偉大なる母よ。
アンタ、俺らから生命力を吸ってないか?
漢詩の素養があったなら、こんな感じのを一発かますんですけどねえ。(笑)
この最後の一行で台無しにするのが楽しそう。
そういや同じく花粉症の知人は、『この時期にニュースで山火事が報道されるたびに、花粉症患者による放火なんじゃないかと思ってしまう』などと言ってました。
うん、気持ちはわかる。
電車の中で、鼻をぐしゅぐしゅさせてる人を見かけたら、ぽんと肩を叩いて『暴れていいよ』などと囁いてみたい私がいる。(笑)
春はどこまでも巡っていく。
私が死ぬその日まで。
もしくは花粉症の簡便な治療法が確立される日まで。




