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27話:隠してこその本音

 ちょいと毒多め。

 なお、女性に対する蔑視を意識しての内容ではありません。

 そもそも、私は人間そのものに対してある程度のあきらめの念を抱いていますので、男とか女とか、それ以前の問題であります。(笑)

 まあ、私本人が男性であるであるという事実から逃れることはできませんので、意図せざるところでそう感じさせる可能性は多分にあると思います。

 今住んでいる場所に引っ越す前のことだが、私はコンビニで働いていたことがある。

 それ以前に働いていた書店の客層とは随分違うなあというか、つくづく自分は客商売には向いてないと知ることができた貴重な経験だったと思う。


『お客様は神様です』


 まあ、有名な言葉ではあるのだが……いや、某演歌歌手の方じゃなくて、百貨店の、明治時代のアレ。

 そもそもこの言葉、当時の売る側と買う側のパワーバランスを是正するためのカウンターとして使われたものである。

 意識革命のため、大きな目標を掲げるアレである。

 座標(8・0)にある現状に対して、目標値が(0・0)であった場合、目標を(0・0)に掲げてしまうと、いいとこ(4・0)ぐらい、へたすると(7・0)ぐらいで停滞し、目標に遠く届かないケースは往々にしてみられる。

 つまり、本来の目標地点に対してではなく極端な(-8・0)を目標として掲げ、それが与える衝撃を利用しつつ、実際の目標に近づけようという……職場の、上から命じられたノルマ達成に必死こいて部下に無理難題を吹っかけ、『できない、は聞きたくない』とかどこかで聞きかじった話を持ち出して……(中略)……などの、全国どこにでもいるクソ中間管理職上司の方が、イメージ湧きやすいでしょうか。(笑)

 まあちょいと話が脱線しましたが、結局『お客様は神様云々』の言葉は、売り手と買い手が平等というか対等な、ニュートラルな立ち位置を目指してものだった……と、自伝か何かの本で読んだ記憶があります。

 しかし、この言葉は戦後教育やら個人主義やらの波を受けて一人歩きを始め、『お客様は王様です』などと揶揄される言葉が生まれるにいたっては、行き過ぎてるのが現状だなあと個人的には思います。

 最初は何を言ってるのかわかりませんでしたが、本当に、本当によくあるこのセリフ。


『すみません、子供が落としちゃって……』


 などと、割れた卵パック、崩れたデザートやらを差し出してくるのである。

 ああ、保護者であるあなたが責任とって買い上げてくれるのねと、レジ打ちしようとするとものすごく不満そうな表情を浮かべるのである。

 人によっては、文句まで口にする……というか、本社に抗議の電話をかけたりする。

 少なくとも、私の知る田舎の集落でそんな言動を取る人間は間違いなく八分にされて、皆から相手にされなくなる。

 農作業をしている大人の邪魔をする子供はその場で怒られるし、後で親に報告及び文句が言われ、親からも怒られる……まあ、今の世の中ではできないのか、これ。

 迷子に話しかけたら事案発生の世の中だし。(笑)

 また話がそれた。

 上記に対する、店員の正しい(?)反応はというと。

 お客様及び、お子様に怪我がなかったかを確かめ、何の問題もありませんよとお客様を安心させ、求めるならば壊れていない商品を新たに示してお買い上げ頂く……。


 店長曰く、『子供が落としちゃって』と、『子供のやったこと』を口にする人間には、基本的に弁償の意思はない。

 少なくとも、本人の過失であることを認めたくない人間。

 そもそも、ただ壊して弁償するつもりなら、『子供』を口にする必要性がないだろ、と。

 それと、弁償したくないだけの人間は店員にそれを持ってこない。

 わざわざそれを持ってくる人間が望んでいることは、『店員から、無罪放免の言質を取る』こと。

 それを汲み取って、わざわざ茶番じみたやり取りをしてる……まあサービスの一環と割り切らないと、精神衛生上よくないし、割り切れない人間は接客業に向いてない。

 

 それを聞いて、私は目からウロコでした。

 そうか、あれはサービスなのか……と。

『子供が落としちゃって……』の後の言葉を濁すのは、自分の口じゃなく店員からそれを言わせるサービスを求めてだったのか。

 あれ?サービスって与えられるものであって、要求するものではないような……などと考えてはいけないのだきっと。


 しかし、ここで問題がある。

 壊れた商品はどうなるか?

 自分が働いていたコンビニの他、知り合いやらバイト仲間やらから聞いた他のコンビニも含めてなので、ちゃんとした統計ではないし、絶対数が少ないから普遍的な対応とも考えないで欲しい。


 1位:お客様に渡された商品を受け取った人間がお金を払って買い取る。

 2位:その時間に働いている人間で、リーダー格の方がお金を払って買い取る。

 3位:壊れた商品はのけておいて、後で店長がお金を払って買い取る。

 4位:店で廃棄登録をして、損失計上する。


 この現状を知ってなお、『すみません、子供が落としちゃって……』と言えるかな?

 言うんだろうな、やっぱり。

 店長、割り切るもなにも、『店員さん、これ壊しちゃったからあなたが買っといて』などと言われて、何を割り切るというんですか?(笑)


 それにしても、いやあ、日本語って素晴らしい。

『すみません、子供が落としちゃって……』という短い言葉の中に、込められた想いの膨大なこと。

 素直に謝れば無罪放免。

 子供のやることは大目に見る。

 この日本独自の道徳観を巧みに利用しつつ、あえて中途半端なところで言葉尻を捨て、それを相手に拾わせることで自らが言い出したことではないと周囲及び、自分自身に言い訳を与える。

 もしかしたら、ほんの少しばかり自分が悪いことしたのかもなんて思っていたけど、店員さんが『お気になさらず』と言ってくれたから、やっぱり私は悪くない。

 もうこの子のせいで、余計な気をつかっちゃったわ……(どうやら頭の中で、本当に子供が落としてしまったものと記憶が捏造されてしまったらしい)。


 あ、この書き方だと女性限定になっちゃうな。

 経験則ですが、『子供が……』を口にするのは圧倒的に女性が多いです。

 まあそもそも、子供と一緒に来るのはほとんど母親ですから、分析以前の問題になりますが。

 ちなみに男性は、何も言わずに逃亡がほとんどです。


 余談というか、面白いことにトイレ使用後に詰まった(水が流れない)ケースだと逆になります。

 女性は何も言わずに逃亡。(報告に来る人は珍しいが、決まって自分が使用する前に詰まってたという)

 男性はトイレが詰まった(もしくは詰まってる)などと報告に来る。

 そして子供は、自分でどうにかしようと試みて事態を悪化させる……で逃亡。


 これも余談ですが、本屋で実際にお子様がやらかした場合。

 謝りながら、買い上げて下さるお客様がほとんどなのです。

 ……解せぬ。 

 

 さてさて、今日もどこかでこんなやりとり(心の中)が。


『店員さん。これ、本当は私が壊しちゃったんだけど、子供がやったことだからって言い訳を与えてあげるから、あなたが処理しておいて。それと、私がこのあとも気分良く過ごせるように、私には何の責任もありませんって笑顔で明言しなさい』


『はっはっはっ、まーた人の皮かぶった野蛮人がわけわかんないこと言ってますね。まあいいですよ。世の中わけわかんない連中は総じて声がでかいですからね。どうせパワハラなんて言葉、されることはあっても、自分がやってるなんて夢にも思ってないんでしょ?』


『おい、この廃棄なんだ?店の損害になるから、お前が自腹切れよ。誰が給料払ってると思ってるんだ』


 ……あれ、最後のセリフ、本音と建前が一緒になって……。(笑)


 ……でも、店長のセリフじゃないのよ。(笑)

 

 法律云々はさておき、多くの店で労働者に対するこのような無言(笑)の圧力というか、商品破損に対する自腹システムが存在してることは想像に難くありません。

 まあ、自分のミスでやらかした際の自腹については、特に思うこともありませんけど。


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