176話:留学生との異文化交流(お好み焼き編)
近年、留学先として日本は魅力的と思われておらず、人気が低い……的なニュースを目にしたが、『まあそうだろうな』と思ってしまう部分と『まあ、時代のトレンドに左右されるからな』とやや否定的に思ってしまう部分と、『このニュースは何を狙って流されたものなのか』と、懐疑的に感じてしまう部分があるわけで。
まあ、人間1人においてもこの有様だから、人間社会が難しいものになるのは仕方のないところでしょう。
私が大学生だった頃は、アジア系の国からの留学生が目立っていました。
まあ、留学生の人数、傾向は、大学にもよりますので、あくまでも私の主観の問題です。
聞くと見るのは大違いと言いますが、留学生は留学生でグループを作って固まっていることが多かったのは、おそらく日本という国が持つ集団的な排他性の部分が主な理由ではないかと私は思っています。
さて、交流はともかく、人の話を聞くのが好きというか、自分の知らないことを聞くのが好きだった私は、ちょくちょく彼らのグループに特攻し、ぎこちない会話を楽しんでおりました。
ちなみに、私は英語がダメです。
留学生は、基本的に英語ができました。
なので、日本語と英語、辞書片手に筆談との並行で、ものすっごい手間をかけて意思の疎通を図る羽目になりました。
彼らの苦笑が、本当の意味で『苦笑』だったなら幸いなんですけどね。
はてさて、内心でどう思われていたやら。
ああ、私の丸坊主の頭を楽しそうに撫でている人もいたので、多分国際標準のコミュニュケーションツールだと思われます。(絶対違う)
さて、お好み焼きだ。
広島と大阪の仁義なき戦いなんかはおいといて。
彼ら留学生が、『名前だけ知っている日本の食べ物』を説明というか、紹介することに関して、私はちょっと便利な存在だったのかもしれません。
もちろん、辞書片手に、カタコト英語と筆談必須でしたが。
まあ、そういう感じで、私は『お好み焼き』を説明しました。
そして、留学生の1人、彼女から帰ってきた言葉がこれ。
ああ、パンケーキの一種なんですね。
こ、こ、小麦粉を生地にして、様々な具材を用いて焼き……外見は薄く丸い料理……だよ。
そ、そうか……そう言われると、そういう解釈もありなのかと。
そうか、これが異文化交流だ。
などと、理性をねじ伏せようと頑張ったのだが、私の体の中に流れる母親(大阪出身)の血が、『否ァッ!断じて否ァッ!!』と叫ぶのである。
認めてはならぬ、決してそれを認めてはならぬ。
食わせるしかあるまい。(笑)
そのうえでまだ、『パンケーキの一種』というなら、それを認めよう。
食い物の恨みは恐ろしいというが、食い物にかける情念が膨大である裏返しなのだろう。
そこで店に連れていくのではなくて、自分で作ろうと思うところがおかしいと日本人の知人に言われ、留学生の一部からは『日本人はこういうホームパーティみたいなのは嫌いだと思ってた』などと言われた。
いやだって、宗教やら、慣習やら、いちいちダメな食材を店側に伝えたりするのって、面倒というか、問題を引き起こすフラグとしか思えなかったので。
そもそも、お好み焼き屋の店を探すって……特定地域じゃないと、そうホイホイ見つかるものでもないと思う。
つーか、一人暮らしのアパートの台所でそんな大掛かりにやれるはずもないので、構内の食堂に話をつけて、食材は自分たちで用意して、まあ、色々と。
私たち日本人の思う『普通』の大きさでやると、向こうにすれば食べにくいだろうし、いろんな種類を食べ比べる楽しさもないなあと思ったので、色々とソースの種類も用意して、手軽に食べられるサイズでひょいひょいと焼いたのですが。
うん、多分それがダメだったと思う。
日本にはこんなパンケーキもあるんですね。
いや、ちゃうねん。
本来のサイズは……こうなんだよ。
未知のものに対して何らかの名称をつけることで、それを定義してしまう……ラベリング効果。
普通のサイズのものも焼き上げたのですが、彼女の中でお好み焼きは『ジャパニーズ・パンケーキ』で定着してしまいました。(笑)
まあ、当時の私にとってパンケーキはおやつのイメージだったんですが、パンケーキって普通にご飯として食べたりするんですね。
私、覚えた。
余談ですが、食材にタコを使おうと思ったらマジに怒り出した留学生がいました。(笑)
さらに余談ですが、『これは、私の国にある料理だね。日本の料理じゃないよ。しかも作り方を間違っている』などという留学生のことはスルーしました。
今思えば、パンケーキの『パン』はフライパンの『パン』だったか。
つまり、パンケーキ。
いや、ケーキ?
うごごご…(感情が激しく抵抗する)




