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173話:都会から田舎にやってきた母の苦労を妄想する

 以前に触れたが、私の母は大阪出身だ。

 しかも都市部だ。

 シティ・ガール(笑)がなんの因果であんな田舎にやってきたのか……。


 実家の近くに、牛舎があった。

 それほど規模が大きくはなかったが……どうも、テレビや教科書から学ぶ、酪農とはちょっと違うような気がして、子供心には謎だった。

 あまり家同士の付き合いはなかったが、親に言われて二度ほど、牛乳を(ぴー)に行ったことがある。

 当時はそんなこと知らなかったが、いわゆる加熱殺菌処理をしていない……自己責任で飲む分には何の問題もないが、生の牛乳は販売してはいけないらしい。

『スーパーで買う牛乳と違うぞ』などと親に言われ、飲むと確かに違うのだが……特に美味しいとは感じなかった。

 それが紙パックの牛乳に慣らされた私の味覚の問題だったのか、牛乳に問題があったのかはわからない。

 ただ……表層に浮いたあのつぶつぶした食感(笑)は、子供心には謎だった。

 牛乳の定義が乱れるとでも言っておけばいいのだろうか。


 さて、母である。

 こちらにやってきて20年近く経った状態でも、『臭くてかなわん』などとぶうぶう文句を垂れていた。

 まあ、確かに夏になると臭う。

 でも、私を含めた3兄弟からすれば『牛飼ってりゃ、臭うの当たり前じゃん』という認識なのである。

 というか、長兄と私は、牛糞を引っ掻き回してせっせとミミズを捕まえて釣りの餌にしていたから、そんなことを気にしてはいられなかった。(笑)

 まあ、次兄は……当たり前と思いつつ、あの臭いを敬遠していた気がする。


 だからどうしたというわけでもないが。

 なんというか、母は都会から田舎にやってきて、順応するというか、諦めるのにどのぐらいの時間が必要だったのかなあと、思ったりする。

 私が実家に居た頃は、立派なおばちゃんへとクラスチェンジを果たしつつも、都会もんから田舎もんへのクラスチェンジはできてなかったような気がする。

 まあ、田舎以前に、父の家に嫁いでくるという面で苦労したんだろうなあというのは、嫌でもわかるだけに……そんな苦労は、いくら時が経とうとも笑い話には変わらないと思う。

 まあ、母に対して甘くなるのは、マザコンというより、父に対する強烈な嫌悪からです。

 私が大学生の頃、次兄に『結婚とか考えてる?』と尋ねたら『あれの遺伝子を残すとかないわ』と真顔で言われた。

 まあ、私も『だよな』と同意したから同類だ。(笑)


 子供がそこまで絶望する家系。(笑)


 たぶん、大抵の人はこれを読んでドン引きするだろう。

 だからこそ、母の苦悩は深いと妄想してしまう。

 60を超えた頃『生きてると毎日楽しいやん』などといっていたが、もし本当なら幸いだと思う。

 現実は残酷だが、苦労した人間はそれなりに報われて欲しいぐらいのことを私だって考える。

 なんだろう、田舎が問題なんじゃなくて、家系が問題だったような気がしてきた。


 母が笑って最後の日を迎えることが出来るのならいいなと思うが、その笑みはおそらく他人に対する仮面となるだろう。

 なかなかに難しいものだと思う。

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