171話:全身麻酔の思い出。
麻酔は、わりと経験した人間が多いと思う。
うん、歯医者とか歯医者とか歯医者とか。(笑)
でも、全身麻酔を経験した人はそれほど多くないようだ。
麻酔のリスクというものが存在するため、できる限り部分麻酔で済ませるというのが今の流れだろう。
さて、私は全身麻酔の経験がある。
例によって、大学時代の、私の野球生命にトドメを刺してくれたあれだ。
まあ、既に瀕死状態だったじゃないかと言われたらそれまでなのだが……まあ、手術することになった。
私は、麻酔をかけられて、少しずつ意識が朦朧となって……そういうイメージを持っていた。
だが実際は。
電化製品のスイッチのように、いきなり意識が落ちます。(笑)
いや、医者の語りかけとか、看護師さんの動きとかくっきり意識できてる状態が、いきなりブツっと。
で、『終わったよ』などと、医者が私の頬をペシペシ叩いて起こしてくれるのだ。
これがものすごい不愉快だった。
ものすごい深い眠りから、なかなか目が覚めないというか……意識は戻っても、身体が動かない。
夜の病室で、目は覚めているけど身体が動かず、倦怠感と、腰の痛みだけが友達状態。
何かあったらナースコールをって、手が動かないから押せませんがな。
というか、2時間の予定だった手術がなんで5時間もかかったし。(笑)
執刀医いわく『君の身体、ものすごく鍛えてあるねえ』だとさ。
筋肉の層が分厚くて、予想以上に手こずったとかなんとか。
ちなみに手術の前に、お腹の中をきれいにします。(控えめな表現)
看護師さんの手によって……特に新しい扉が開くことはありませんでした。
さて、動かなかった身体も、翌日にはなんとか動けるように。
しかし、この下半身の違和感はなんだろう?
と、いうかトイレに行きたいとか全く思わないのはどうして?
まあ、カテーテル突っ込まれていたからです。
尿道にきゅっと。
抜けたりしないように、中が膨らんでて。
うん、わかってるね。
突っ込まれたものは抜かなきゃならない。
医者とか看護師さんって、『ちょっとチクッとします』とか『少し痛みがあるかもしれません』などと、マイルドな言い方をすることが多いじゃないですか。
それを踏まえたうえで、カテーテルを抜く時、看護師さんが満面の笑みを浮かべて(私にはそう見えた)こう言いました。
ものすごく痛いですから覚悟を決めてくださいね。
……人間、本当に痛いと悲鳴は出ません。
あの看護師さんはSだと思う。




