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17話:勇者はどこにでもいた

酒場になんか行かなくても、世の中勇者だらけですよね。

『自転車の三角乗り、二人乗り、三人乗り以上は禁止する』


 中学生になって、初めての夏休み。

 クラスに配られた夏休みの注意事項のプリントの一文に、目が止まった。

 三角乗りってなんだ?

 ネット全盛の現代と違って、当時の知識伝播は活字か伝聞に頼るしかありません。

 まともな知識は本や大人から、まともじゃない知識は先輩後輩のつながりなどから。

 危険な遊びやら、喧嘩の際に攻撃しちゃいけない場所やら……今思うと、格闘技の知識なんかなかったであろうに、攻撃したら危険な場所は、本当に危険な場所だったんですよね。

 それは専門家からもたらされたのか、それとも『経験則』なのか……後者なんだろうなあ。

 怖いけど、経験ってすごいや。


 話がそれました。

 そういう時代でしたから、わからないことは他人に聞きます。

 ググレカス、などと返されたりしません。

 わけのわからないことを言う奴は、普通に鉄拳が飛ぶワイルドな時代というか、ワイルドな田舎でした。

 何人かあたるうちに、クラスメイトの一人が知っていて、教えてもらいました。

 その結果。

「この記述、いらないよな?」

 多分、昔からの惰性で同じ文章が使われてきたんだろうなあ……と、意見が一致。(笑)

 この頃、というかこの地域では、中学生(男子)の乗る自転車は6段変速のモノ。

 ママチャリとは違うシルエット。

 メカメカしい(今なら笑われそうですが、そういう時代だったのです)姿に、中学生男子の心は鷲掴み状態だったのです。

 ギアチェンジが楽しくてひたすらガチャガチャしてるうちに壊れるとか、荷台の変形やらサドルやら改造して教師に殴られるとか(くどいようですが、当時の感覚として普通のことです)……しかし男子全員が同じような自転車って、絶対に業者との癒着とかあったんだろうなあ。


 また話がそれました。

 三角乗りの記述は必要ないやろ……と、あらためてプリントを読んで、首をかしげました。

『二人乗り、三人乗り以上は禁止する』

 何故、二人乗り以上禁止と書かなかったのか?

 少なくとも、当時はほぼ知名度のなかった『三角乗り』の記述が残っていることから察するに、これはおそらく最初は『二人乗りは禁止する』で終わってたのではないか?

 つまり『三人乗り』の記述は、後から付け加えられたものじゃないのかなあ……と、いくらバカ中学生とはいえ、もっとほかのことに脳みそを使ってもいいようなものですが、当時の私たちは真剣でした。

 言い換えると、真剣に馬鹿だったんですね。


『二人乗り禁止?三人乗りなら問題ナッシングだぜぇ~』


 などとバカをかまして教師に殴られた挙句、次の年のプリントに『三人乗り禁止』が付け加えられ。


『だったら今度は四人乗りだ。ヒャッハー』


 教師に殴られ(以下略)。


「……つまり、俺らの行動しだいで新たな禁止事項が付け加えられるわけか?」

 私のつぶやきに頷く馬鹿連中。

 三人寄れば文殊の知恵と言いますが、バカが三人集まればろくなことが起こりません。

 もう、言葉はいらない。

 僕たちは、若い血潮を滾らせて一体何処に向かおうとしていたのか?



 私が中学校を卒業してから、もう30年が過ぎようとしている。


『テラスを伝って、下の階に飛び移らない』

『廊下を濡れ雑巾ですべらない』


 この二つの校則は、今もまだ生き残っているだろうか?

 私の頭をヘルメットで乱打し、尻が腫れ上がるまで竹刀でしばき倒したW先生はお元気だろうか?


 

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