168話:飲み会の幹事
大学のゼミ長としてやったのが、先輩の追い出しコンパとか、新入りの歓迎会とか、ゼミ旅行の仕切り。
まあ、周囲からはめんどくさそうと思われていたが、精々30名ほどの規模であり、大学の周囲には需要と供給というか、その手の店はたくさんあった。
正直、大まかに全員の予定をまとめ、調整した上で、予算や希望などをからめて店を選んで予約を取るだけの話だから。
ただ、ゼミ旅行はちょっと大変だった。
あの頃、ネットがあれば……とも思うが、あればあったで別の苦労をしたのだろう。
さて、社会人の飲み会はまた話が変わってくるが……大学生の飲み会で、体育会系のものは色々と話が変わってくる。
100名を超える規模が少なくない。
これだけで、店選びというか選択肢が減る。
部員というか、参加者がフリーダムというか、連絡もなしにすっぽかしたりする人間が……。
まあ、人数が増えると、連絡方法もそうだが、場所の周知やら、知っているものとそうでないものを分け、待ち合わせのできる人間を選別したり……など、やるべきことが急激に増えます。
繰り返していうが、ネットもラ〇ンもない時代だ。(笑)
メール一斉送信とか、便利な手段はない。
まあ、そういう手段があっても、多分別の苦労は出てくるんだろうなあ……と、経験則からそう思う。
大学生といえば下宿と言いたいところだが、当然実家から通っている学生もたくさんいます。
なので、飲み会の場所は単純に大学の近くでいいかというと、そうでもない。
時間帯によっては、参加者、参加希望者の住所もポイントになってくる。
最大公約数的な場所選びというか、大学の近くではなく、その地域の中心都市を選ぶことで、全員にとって多少の不便程度で済むこともあるからだ。
一部の人間だけ超便利みたいな場所選びは、幹事としての心構えとしては間違っている。
大学に入ってすぐ、野球部の新歓コンパでこういう気遣いを先輩から教わり、なるほどと頷いたものだ。
今思えば、この時点で私は既に目をつけられていたのだろう。
飲み会の幹事は3年の先輩、その補佐は2年の先輩がやっていて……その2年の先輩があれこれと私に教えてくれていたのだから。(笑)
まあ、それはさておき。
この野球部の新歓コンパ、なぜか終電を逃すまで二次会三次会が続く。(笑)
『よし、〇〇方面(大学近辺)下宿者集合!』
繁華街に響く、先輩の声。
『今からランニングで帰る!』
口笛、大音量の奇声。
こうはなりたくない、私はしみじみ思った。
人間、酔っ払ってはいけない。
人間という生き物は、理性を持って処することで初めて人間となるのだ。
酔っ払うということは、人間であることを放棄するのと同じことだ。
だから、新入生の音頭を取りつつ大声をあげていた生き物は決して私ではない。
あれは人間ではない、おぞましい別の何かです、きっと。
いや、走って帰りましたよ。(笑)
何人も吐いてましたけどね。
医学部の先輩もいて、『あ、コイツまずい。タクシー止めて』などと、安全に考慮した方式です。
絶対違うと思う。
まあ、反面教師という言葉があるように、その気さえあれば人は何からでも学べる生き物です。
深夜の街(道路)を、掛け声をかけながら走り抜ける数十人の集団。
平和な時代でしたねというか、絶対通報されたと思う。
当然新入生は、未成年がほとんどでした。
今なら犯罪の、飲み方もバンバンやってました。
ただ、全員が騒ぐのではなく、自然な形で世話役係の人間が待機しているのが、セーフティネットといえばそうなのかもしれない。
お酒は危険、マジで。
昔許されたこと、それはただ周囲に見逃されていただけ。
許されていたことと、許可を得ることとは違う。




