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165話:進学塾の思い出

 小学6年生。

 前々から薄々感じていたのだが、私は学校教育の限界を感じていた。

 5年生の担任教師は私の知識欲を悟ってくれたのか、時折放課後に時間を取ってくれて中学校の数学などを教えてくれていたが、そうした好意にも限度があるわけで。

 実際、私が近づくと逃げる先生がいた。

 まあ、子供とは言え6年生ともなればそれなりに現実も世間も見えてきます。

 学校の教育の限界を感じるのも自然なことだっただろう。

 そして、高校受験を控えていた次兄が、何やら街の進学塾に行かされることになった。


 これだ。


 私はそれに飛びついた。

 まあ、そもそも次兄は両親からの制約を受けたくなくて手を抜きまくっている人間なのだから、塾に行かされるなど『合法的に街に出かけられる(週一)以外のメリットはない』……でかいな。(笑)

 そして私は、勉強が好きというよりも、いろんなことを知りたかっただけの馬鹿である。

 高校進学の際に、『野球が第一目標だったら、学校の成績なんか平均でいいだろ?下手に良い成績を残したら、親が夢を見るのは当たり前だろ?そもそも、お前の想定が甘すぎ。世の中が自分中心に回ると思うな。親とかいっても欲目が入る分他人より気をつけなきゃいかん存在だろうが』などと次兄に諭されたのは苦い記憶だ。

 しかし、勉強はするがテストでわざと点を落とすってのは……自己顕示欲に溢れる思春期にはつらいですよ、次兄様。


 と、いうわけで私は入塾試験を受けて、人の多さに興奮して浮き足立ちまくった。(笑)

 初めての授業の次の週に試験があって、その次の週に授業を受けようと思ったら、『お前、上のクラスにいけ』と言われて、顔も名前もあやふやだった仲間とお別れ。

 まあ、入塾試験の出来が悪かったんだろうなあ、と。(笑)

 その上のクラスも、2ヶ月ほどで試験があってサヨウナラする羽目に。

 クラスによってテキストが違ってて、内容も小学校とは全然違ってて、むちゃくちゃドキドキしながら読みましたね、あれは楽しかった。

 週に一回の授業で課題がどっさり出て、全国規模の学力試験が結構な頻度であって、夏休みと冬休みは集中講座があって……まあ、海外旅行の感覚と同じく、経験するものすべてが新鮮で、無意識にそれを高評価したのは言うまでもない。

 まあ、月謝が高いだけのことはある(まあ、ほかの塾の月謝の相場なんか知りませんが)というか、面白かったですね。

 小学校のクラスメイトよりよっぽど話はあいましたし、自分が考える世界の外にいくらでも世界があるということがわかったのも良かったと思います。


 まあ、街の進学塾でも高評価ってのが、後に私の首を絞めまくったのは言うまでもありませんが。

 だって、私の第一目標というか、野球のための高校進学ですよ?

 ちなみにこの塾の私がいたクラス。

 中学1年生の秋の時点で、公立高校の模擬試験を受けさせられます。

 ええ、私の志望校の数々は余裕で合格ラインを突破しました。(笑)

 あれ、もう俺って勉強する意味なくね……などと、この時初めて違和感を覚えたのですが、自分の中の知識欲に負けました。

 それと同時に、某私立高校の過去問題を解かされて……もう、全然わけがわからないんですよ。(笑)

 問題文を読んでも聞いたことがないとか、何をどうすればよいのかわからないとか。

 ちなみに、数学は100点満点で17点しかとれませんでした。

 ほかの科目は……極端に言えば、知識を持てば解ける問題がほとんどだから大きなショックはうけませんでしたね。

 でも数学は、わからないことを分からないで済ませるのではなく、自分の手持ちのカードを弄り回してなんとか解決方法を見出そうとする過程が楽しかったなあと。

 この時の経験が、なんとなく私の人格形成において何らかの意味を持っているような気がします。


 さて中学2年で、普通に高校の授業内容を進めていく……あたりでようやく自分の中の違和感の正体がわかりました。

 受験という意味で考えたら、合格ラインをどの段階で突破するかだけの問題だな、と。

 この進学塾は、速度と深みはあるけど、意欲と時間でカバーできることを先取りしてるだけ、と。

 友人たちとの別れは寂しかったですが、野球に専念したいからという理由で私は塾をやめました。

 まあ、既に手遅れだったんですけどね。

 私に必要だったのは、教科書であり、参考書だったんだと思います。

 つまり、本屋に行ってレベルの高いものを購入して自分で勉強すればよかっただけの話。

 次兄から見れば、私の姿は滑稽だったでしょうね。(笑)

 だからわざわざ……。


 手遅れになってから私に忠告する。(笑)


 いい性格してるよなあ……私も人のことは言えませんが。

 まあ、塾での思い出やら、先生、友人との出会いが無駄だったとは思いませんし、小中学校を通じてそっちのほうが印象深かったりもします。

 つーか、昨日まで同じクラスだった人間が試験の結果で消えていくとか……なかなかシビアな世界ではありましたが。

 ちなみに、大学で再会した人もいたり。

 私個人の考えとしては、塾に限った事ではなく、学校以外の世界を子どもに与えるというか、そういう機会を持たせることは大事かなあと思います。

 世界が変われば人付き合いも変わる。

 それは、複数の視点を持つ助けになるでしょう。

小学6年生のお正月。

塾の課題をこなすのに必死で初詣も行けず、睡眠時間を削り、疲労か、ストレスか、常に変なにおいを感じるようになって、頭がおかしくなったんじゃなかろうかと悩んだ思い出。

うん、体育会系も勉強も、突き詰めたらやることは同じですね。

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