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160話:ピッチャーマウンドの攻防(裏)

 以前に書きましたが、私たちの学年はつなぎの世代という評価でした。

 裏を返せば、ひとつの上の先輩の学年と、ひとつ下の後輩の学年は、周囲から期待されてたということになります。

 ドラフトにこそかからなかったものの、評判を聞いてプロのスカウトが見に来るレベルの投手が二人いたのが上の学年で……まあ、そういう感じですね。

 今だから言えますが、私の中の評価ではエースの扱いを受けていた先輩の方が下で、控えの先輩の評価を上にしてました。

 まあ、このあたりは個人の好みもあるのだろうけど……単純に、シートバッティングなどで打席に立った上での評価。

 エースの先輩なら楽に打てるけど、控えの先輩は打つのに苦労しそう……と。

 レギュラーにもなれなかった人間が大きく出たなと言われそうですが、怪我をするまでは上の学年も含めて打撃『だけ』はチームで1、2と期待されてはいたのです。(泣)


 と、ここで語るのはエースの先輩のおはなし。

 控えの先輩が速球とキレのある変化球とのコンビネーションで戦う技巧派だったのに対し、エースの先輩は速球派……もちろん、変化球も普通に良い球を投げる。

 さて、エースの先輩。

 全身を使った躍動感溢れる投球フォームなのだが、踏み出し足の幅が普通の投手より1足弱(20センチ)広かったんですね。

 良い球を投げるのに、足場の安定は重要……と、イニングの始まりや、試合の最中に、やたらめったら足場を掘って整地するくせがありました。

 審判に注意されても、気にしません。(笑)

 先輩に対する審判の判定が全体的に辛かったのって、反感もたれてたからですよ、きっと。


 さて、視点が変わって相手ピッチャーの立場から。

 自分が踏み出す足が地面に着く……その少し向こうに穴が掘れている。

 めっちゃ投げにくい。(笑)

 いや、しっかりと大地を踏みしめて運動エネルギーを伝達しようとするときに、足元がぐらついたらどうにもなりません。

 なので、今度は相手投手が穴を埋めて、新しく自分のために穴を掘ります。


 さて、この時期、この地域には右の本格派投手として評価されていた選手が二名いました。

 ひとりは、先輩。

 そしてもうひとりは、有力校のエース。

 夏ではなく、春の選抜を目指す秋季大会でこのふたりが激突。

 このふたりがマウンドで、ひたすら穴を埋めて掘るの繰り返し。

 いや、あれはもうお互いがお互いに嫌がらせとしてやってるだろと。

 まあ、中学時代から、お互い意識しあう関係だったらしく……いやあ、いろんな意味でヒートアップしていくのを眺めながら、笑いをこらえるので必死でした。

 イニングチェンジで、相手の投手が先輩にボールを投げてよこしたりするんですけどね、手が滑ったふりを装ってあさっての方向にトスしたり、先輩は先輩で、マウンドにそっとボールを置きつつ……土を擦り付けたり。(笑)

 この醜い争いが終わったあと、下の学年は苦笑いしながらお互いの先輩を笑ってました。(当然相手チームに知り合いが居る)


 まあ、相手投手の足跡と違うのは……大きく違ってると問題はないんですけどね、つま先が穴のふちに当たるとか、少しの差異がある場合、ちょっとナーバスになりますね。

 ちなみに、当時言われていた投手の踏み出し足は平均7足ぐらいでしたね。

 基本的に、踏み出し足が遠くなればなるほど技術が必要になると言われてました。

 私は、コントロール重視と体力温存のために5足半ぐらいで投げてました。

 いわゆる、メジャーの投手に見られる上半身主体の投法なので、相手投手の足跡に悩まされた記憶はほとんどありません。

 もし機会があれば、イニング交代の際の投手の行動に注意してみましょう。

 やたら足場を気にする投手がいたら……それは神経質なのではなく、相手チームから何かを仕掛けられているのかもしれません。(笑)

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