159話:剣道は難しい。
中学の体育では、剣道の授業が必須でした。
高校は、1年時に剣道がなく柔道が必須だったんですが……柔道の授業で起きる事故については、本当に事故としか言えないケースと、教師と生徒の認識のズレが生む、事件としか思えないケースがあって、まあ難しいですね。
柔道の未経験者でも知識があるかそうでないかでかなり違いますし、柔道じゃなくて本格的な運動未経験者で知識がない人間を指導する経験が、教師側に乏しいケースが……というと、酷なんですが。
私は柔道未経験者でしたが、人間の体をどうしたらこうなる的な知識はありましたし、子供の頃から暴れん坊長兄によるいろんな指導もありましたし、プロレスも好きだったし、腕力もありましたから……まあ、クラスの授業レベルでは無敵でした。
と、いうか……柔道未経験者を相手にして、怖くて投げなんてできません。
なので、出足払いをはじめとした足技のみで、相手が頭を強打することがないように気をつけるだけの余裕があったのは幸いだったと思います。
今思うと、未経験者の生徒同士の試合なんてやらせるもんじゃないと思います。
試合というか、技の掛け合いもやめたほうが。
知識のない人間は本当にこっちがびっくりするぐらい知らないんです。
でも教師は教えなきゃいけないわけで……少数相手ならともかく、そもそも無理があるというのが私個人の意見です。
と、言うわけで剣道です。
高校の柔道ではあれでしたが、中学の剣道ではどうにもならなかったという記憶があります。
まず、未経験者は相手の竹刀がどう動くのかを知らないために、軌道予測ができません。
つまり、相手の竹刀が見えません。
ああ、野球未経験者が経験者の投げたボールを目で追えないってのはこういうことなんだなあ……としみじみ思いながら、経験者相手にパンパンパンパン打たれましたよ。(笑)
打ってくる場所が決まっているだけに、反応じゃなくて読みで防御しても、連続技でパン。
たぶん、素人は二刀流の方が防御しやすい。
バスケットのボールさばきなんかもそうですが、経験者と未経験者の差が悲しいぐらいにでますね、剣道は。
竹刀さばき以前の問題というか。
剣道の授業中にひたすら経験者の動きを追って、最後の最後でほんの少しだけ動きを読めるようになりましたが……それでようやく、なんとなく竹刀の動きが見えるような気がするレベルでしかありません。
見えるような気がすると、つい反射的に動いてしまい、フェイントや連続技に面白いように引っかかってしまう。
1歩進んで、3歩ぐらい下がる感じ。
そこを越えると面白くなってくるんじゃないかなとは思ったんですが、あいにく、苦労と苦痛だけを味わって授業終了ですね。(笑)
そういう意味では、剣道は私にとって『非日常』に位置する存在だったんだと思います。
相撲、卓球、バドミントン、陸上競技、テニスなどなど、経験者が相手でも、自分の想像の延長線上にあるなぁと思えたのです。
剣道は、全くそうは思えませんでした。
子供の頃にチャンバラ遊びでもやってたら少しは違ってたのかもしれません。
まあ、剣道の授業で学んだ竹刀の手入れとか……全員購入させられるあたりに黒いものを感じましたが、私は兄の竹刀があるからと、購入を拒否しました。
もちろん、剣道経験者および、剣道部員なんかもそう。
高校の授業の柔道着も、全員購入させられたんですよねぇ……必須授業は、何に対しての必須なのか。
ははは、教育の名のもとに安定したメーカー支援ができるということは、これはこれで文化保護の一環であります。(お目目ぐーるぐる)




