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153話:私の世代のロマンは、異世界よりも改造だったなあ。

あまり知られてはいませんが、異世界モノの歴史は古い。

アーサー王の時代でヤンキーが内政チートとかやらかす小説なんて、どれだけ時代を先取りしているのか。(笑)

恐るべし、マーク〇ウェイン。


 真面目に読んだわけでも、統計を取ったわけでもないと前置きしておきます。


 異世界でチートもらってヒャッハー。


 まあ、そのものが好きになれない人もいれば、異世界モノばかりが多すぎることに不満を感じる人もいるわけで、不満にもいろいろ種類があるから、単純にひとまとめにするわけにも。

 そんな中に、『こうした異世界モノばかりがでてくるのは、現実世界の閉塞感を表しており、現実逃避の現れである』などという、ちょっとばかり乱暴と思われる意見もあるわけで。

 現実逃避、いいじゃない。(笑)

 所詮、物語、フィクション最高。


 まあ、そういうこと言い出したらあれですよ。

 1970年代から1980年代にかけて、ハードボイルドものがもてはやされた時代がありました。

 もちろん、本家というかアメリカのその手の作家の成功を受けて……という流れはあるわけですが。

 核家族化、人口の都市集中、そしてコンクリートジャングルという時代の流れが生んだ人の心の有り様にフィットした物語形式などというと、風情がないし、野暮でもありますね。

 まあ、この時期は出版業界そのものが拡大時期にあったというか……いわゆるハードボイルド作家と呼ばれる作家が多数誕生しました。

 さて、当然一発屋の作家もいたわけですが……世間に受け入れられ、生き残る作家もいました。

 しかし90年代に入ると、これらのハードボイルド作家と呼ばれた作家たちの多くが、歴史小説を手がけるようになります。

 まあ、それぞれの作家が思うところを語ったり、もしくは語らなかったり。

 そんな中で、ある作家がこんな言葉を残しています。


 リアルに限界を感じた。


 まあ、正確には、リアルの中では主人公を思うように躍動させられなくなった……でしたか。

 惚れた女性のために、悪と戦う。

 たった一人でも、相手が複数でも戦う。

 こちらが素手で、相手が拳銃を持っていても戦う。

 自分の中の、捨てられぬ想いと、誇りのために、ひたすら戦う。


 読者を酔わせて正常な判断力を失わせるのが作家の実力というと乱暴ですが、現代社会はひたすらリアルという名の往復ビンタを繰り出してくる毎日です。

 リアルにさらされている読み手が、物語を手にって『いや、無理でしょ。拳銃相手に素手で立ち向かうなんて馬鹿じゃん。警察呼べよ』と思ったら、これは文字通りお話にならないのです。

 社会悪と知恵で戦う系のお話ならともかく、肉体言語系のお話は時代の流れの中で難しくなったというか……まあ、リアルで殴り合いの一つもしたことのない人間が多数の時代に、暴力そのものにリアルを感じさせるのも難しいかもしれません。

 たとえば、私が子供の頃楽しんだ刑事もののドラマにしたって、『普通の刑事が、狙撃なんかするはず無いじゃん。ありえねえ』などと言われたらおしまいなのです。

 私が野球のネタで醒めた視線の現実を提供するのと同じく、読者がリアルを知れば知るほど酔うのが難しくなります。

 同時に、現実離れしすぎていても、読者は酔えません。

 リアルと幻想の間のグレーゾーンを、タップダンスしながら通り過ぎていくのが大事……私個人は、そう認識しています。


 現代社会を舞台にしたら主人公を躍動させられない。

 主人公を躍動させるためにはどうすればよいか。

 いや、主人公を躍動させられる舞台はどこにあるのか?

 ハードボイルド作家の多くは、現代社会の舞台から、歴史の舞台へと転進……乱暴な言い方をすれば、逃げたといえるでしょう。


 歴史小説は、現代社会を生きる私たちにとってリアルじゃないから。

 でも、幻想というほどでもない。

 冷静なツッコミ力というか、『ああ、そういうこともあるかも』という曖昧な部分が、読者を酔わせる原動力になれます。

 プロレスを見て、『なんでロープに振られて素直に戻ってくるの?』ではなく、『体勢を崩されてロープに勢いよく振られたらもちろん戻ってくるよな』という、適度に酔っ払った部分が、ノリと勢いと、夢をうみます。

某作品の『あの頃のプロレスファンは優しかった』というのは名言だと思います。 

 まあ、現実にプロレスラーの方に勢いよくロープに振られたら、『ロープを掴む以前に、素直に戻ってくることすら困難でした』が。

 あと、マット。

 あそこに背中から落とされたら……プロレスラーは、私たちが思うのとは別の方向ですごいです。



 と、いうわけで。

 リアルから逃避した舞台を求めるのは何の問題もないというか、何もおかしくはありません。

 物語の主人公をこういうふうに動かしたい……あ、リアルじゃ無理と思って、異世界ならイケルと思った。

 それだけかなあ、と私は思います。

 異世界を舞台にしても、現代社会の感覚を適度に生かすことで、ちょうどよいグレーゾーンを模索しているということでしょう。

『異世界モノここがおかしい』的なお話は、どちらかといえばメタ的なネタではないかと。

 もちろん、自然環境のあり方から文化まで、すべて想像しましたぁ…の、ハイファンタジーを否定するつもりはないです。


 さて、私が子供の頃は異世界召喚とかを夢見たことはありませんでしたね。

 異世界モノは、SF小説などでもちろん知識はあったのですが……秘められた特殊能力とか、いわゆる思春期病のひとつとしては、やはりタイトルにも書きましたが、改造でしょうか。


 いきなり、さらわれる。

 目が覚めたら、知らない場所。

 手、足、明らかに、自分の身体が、なんか違う。

 そうか、俺はこれから人知れず悪と戦うのだな、と。(笑)

 夢も希望もなく、自分を衝き動かすものは怒り。

 しかし、戦いの中でふと芽生える……奴らを生かしてはおけないという、自分以外の誰かに対する真摯な思い。

 これは、ロマンですねえ。

 まあ、日本における『正義の味方』という概念は、海外では……ラテン語文化圏ではあまり通用しません。

 正義という言葉は、向こうの言葉を日本語に訳したものでしかありませんから。

 日本において正義と訳される言葉は、向こうの世界では『現社会体制に与するもの』というイメージです。

 なので、某マスクの改造ヒーローは、向こうだと『ダークヒーロー』と訳されてしまいます。

 もちろん、日本の一部の文化に詳しいオタクな人々の間では、話がちょっと変わってくるのですけど。

マスクッ!

圧倒的、マスクッ! 

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