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150話:秋の夜長のカップ焼きそば

 私が大学生だった頃というか、大学の知人の間では、『カップ麺はリッチなやつの食べ物』という認識が一般的でした。

 漫画とかでよく貧乏生活のネタにされるカップ麺ですが、本当に金に困っているなら、カップ麺じゃなくて袋ラーメンを食べます。

 丼に麺とスープの粉を入れて、熱湯を注いで蓋をする。

 手間は同じなのに、値段は袋ラーメンの方が安いのです。

 もっと夢も希望もない話をすれば(笑)、カップ麺及び袋ラーメンの『麺』容量は80グラム程度。

 つまり、パスタや素麺に目を向ければ、もっと安く同容量の麺を食べることができたわけで。

 原料は同じだからなどと小麦粉買って、具のない塩味(もしくは醤油)の小麦粉焼き……までいくと、お腹は満ちても心が貧しくなりますが。


 まあカップ麺のイメージが『安価』だったことには変わりはないので、200円を越す商品が登場してきた時は、衝撃でしたね。


 さて、近年の日本ではカップめんの販売が増加しているようですが、世界全体では減少傾向だそうです。

 世界における減少の理由は、中国(全体の4割を占めています)での販売不振。

 カップ麺のイメージが、身体に悪いとか安っぽいという感じに固まっていて、敬遠されているのが原因だろうと。

 その反面、日本における販売増は高級感のイメージ定着に成功とか、豊富な種類がどうとか言ってますが……家計の食費にかける金額の落ち込みを見れば、欺瞞以外の何ものでもありません。

 食費に金をかけたくない、金をかけられない購買層の増加……ですね。


 私もまた食費に金をかけたくない人間ではありますが、カップ麺はあまり食べません。

 あまりといっても、平均的にどのぐらい食されているのかわからないのであれですが、防災というか、食料備蓄のために3~4ヶ月に一回4~5コ購入、消費の繰り返し。

 1ヶ月に約1食というのは、少なくないかもしれませんが、多くはないでしょう、たぶん。

 まあ、袋ラーメンだと3ヶ月に10食程度になりますが。(笑)


 あまり食べないといっても、私にも好みはあります。

 高いものは自動的に買わないので、基本は安いものになってしまうのですが、いわゆるカップうどん系。

 昔からあるお揚げのついた……などと書くと、自動的に2種類のブランドに限定されてしまいますが、その片方ですね。

 購入の際、興味もあるので色々と種類を分けて買うのですが、このカップうどんだけは必ず買います。

 あの平打麺とちぢれが生み出す、食感の違いが私を楽しませてくれるのです。

 値段的には、自分で作るほうが安いのですが、カップうどん独特のあの食感は、スーパーで手軽に買えるうどんの生麺では再現できません。

 お揚げに関してはなんとかなるのですけどね。


 さて、そろそろ『タイトルどこ行った?』と言われそうですが。

 カップ焼きそば。

 昔知人と語り合ったことがあるのですが、『カップめんの発明は確かにすごいんだろうが、カップ焼きそばを開発した奴は天才だ。というか、ソース。このソースは、ノーベル賞もんだろ』と。

 私、麺食いですから。

 でも、カップ焼きそばのソースはすごいと思います。

 カレーやうなぎなど、暴力的な香りの破壊力は今更語るまでもありませんが……いやあ、値段の7割は、このソースの価値ですよね、きっと。(笑)


 そんなに好きなら、カップうどんと一緒に買わないの?


 そう疑問に思われるかもしれません。

 あくまでも個人的にですが、私はカップ焼きそばは秋の食べ物だよなあと。

 それも、朝や昼や夕ではいけません。

 夜。

 秋の夜の食べ物。


 湯を沸かす。

 湯を投入する。

 湯を捨てる。

 べこん、の音を楽しむ。(笑)

 湯を捨てる際の中身ぶちまけとか、具を投入するの忘れてたとか、カップめんの癖でソースとふりかけ混じりのお湯が流れるのを見て、声にならない悲鳴を上げるとかのお約束(一部は不可能な時代になりましたが)はおいといて。

 この一連の動作というか作業の、何とも言えない物悲しさが良いのです。

 春はダメ。

 夏もダメ。

 冬は、お湯の暖かさが心をほっこりさせるからダメ。

 秋が良い。

 フタを親指で押さえて、湯切り口から流れていく油混じりのお湯を眺める自分。

 咳をしても一人、ではないが、膨張と収縮でべコンと音を立て(耐久的に問題があるので多用は避けましょう…というか、最近はそうならないように設計されているようです)、それが響く際の、あの何とも言えない物寂しい気持ち。

 あの、強制的に何かに想いを馳せてしまう不思議空間、たぶん、わびさびの心。

 これで終われば悲しい。

 だが、カップ焼きそばはここで反転する。

 蓋を取り去り、ソースをかける。

 それまで感じていた物悲しさが、プラスアルファで食欲に変換。

 げに恐ろしきは、ソースの魔力である。


 反論も、異論も、なんでも認めます。(笑)

 カップ焼きそばは、秋の夜が良い。




 応用編。

 カップ焼きそばは、カップめんに比べるとカロリーが高い。

 これはソースに含まれる脂分が主な原因なのですが、関係ありません。

 いやむしろ足りない。(笑)

 そんな方には、焼きそばセットの麺をひとつ追加で突っ込んでみましょう。

 ブランドにもよりますが、押し込めば入ります。

 わずか30円ほどで、200キロカロリーを越すボリュームアップです。

 いつもの感覚でお湯を入れると溢れるからそれは注意で。

 無論、ボリュームが増えた分、ソースが足りません。

 焼きそばセットに含まれる、調味料のソース粉末の出番です。

 個人の好みはあるでしょうが、本来のカップ焼きそばのソースと、粉末ソース(半分ぐらい)を混ぜ合わせる際に、市販の焼きそばソースやお好みソースをブレンドしたり、砂糖、醤油、オリジナルブレンドを楽しめるほどに、秋の夜長を楽しみましょう。


 今もブランドによっては乾燥具が袋入りのタイプもあるみたいですね。

 小説で、『具の袋を貯めておいて、一気に6個投入。すげえ、リッチな気分』などと楽しげに話す弟分に涙する主人公がいましたが……やってみたことがあります。

 なんというか、開発者はすごいなあと。

 あのソースの量は、本当にぴったりなんです。

 麺を増やすと足りなくなるように、具が増えると足りなくなります。


 自分でも普通に焼きそばはつくるんですけどね、どうも自分は炒め物が苦手な感じで……カップ焼きそばのほうが美味しいよなあと。

 昔、屋台とかそういうのじゃなくて、外食で焼きそばを食べた時も、ああ、カップ焼きそばの方が美味しいよなあ、と。

 正直、麺の味はそんな変わらないとすると……やっぱりあのソースは最強ではないかと。

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