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149話:稲刈り

ひと刈りいこうぜ。

 気が付けば10月。

 1年をひとつのスパンと考えると、最後の直線に入った感じですか。


 秋の長雨といいますが、地域的な差異はあれど、まあ9月の下旬頃というイメージを私は持ってます。

 そして10月といえば日本晴れ。

 近年の体育の日は日付が固定されていませんが、元々は10月10日。

 1964年の東京オリンピックの開催を記念として、その開幕の日を体育の日と定め、祝日としたそうです。

 さて、なぜ10月10日を開幕日と決めたかというと……過去の東京の天気を数十年分調べ上げ、晴れだった日の割合が一番高かったのがこの日だったとか。

 いや、ただの偶然でしょ……と言いたくなる気持ちも分かりますが、数十年レベルで見ると、この手の偏りは馬鹿にしたものでもありません。

 何故かその日だけ妙な偏りがある……そういう日が存在していて、一般的には特異日と呼ばれています。

 そして、10月開催そのものは、やはり日本(東京)の気候の特徴的に、10月は天気の日が続くというか、そういう認識だったのは間違いないでしょう。


 と、いうわけで、稲刈りです。

 苗作りの為の種まきから考えて……150~160日ぐらいになるんでしょうか。

 早すぎれば中身のスカスカなコメ(未熟粒)が多くなって収穫量が落ち、かと言って遅すぎると、籾が熟れすぎて米の色艶が悪くなります。

 まあ、品質が落ちるってことですね。

 ちなみに、収穫時の米というか籾は水分含有量が20%を超えていて、温度が高いと変質を始めます。

 私も専門家ではないので詳しい説明は省きますが、稲穂の状態はもちろんですが、気温が下がってこないと下手に刈り取りもできないのですよ。(即乾燥工程まで行ける農家は省きます)

 つまり。

 稲を刈る。(この10日前ぐらいから田んぼの水を抜きます)

 稲を干す。(1週間程度……で、水分含有量が15%程になると言われてます)

 この期間、雨が降ると泣けます。

 刈り取った稲は、種ですからね。

 10月の気温と水分を与えると、いちはやく苗作りが。(笑)


 晴天に恵まれる10月が、稲刈りの時期になるのはまあ……定めというものですよ。

 というより、この時期に収穫できるように計算して苗を作り、田植えをするということです。


 さて、稲刈りといっても、私が子供の頃には偉大なるコン〇インが人類にもたらされていました。

 個人で即導入した農家もあれば、各農家が共同で購入したり、代価を払うことで借りたり……そのあたりの農協(当時)をからめた魑魅魍魎どもの駆け引きときたらもう……。

 と、いうわけで家族総出の稲刈りとは無縁の世代です、私は。

 まあ、台風のせいで稲が倒れると、否応なしに稲刈りしなきゃいけなくなったり(芽が出る)、倒れてるから勇者コン〇インが役立たずになったり。

 しかし、最近のコン〇イン様はすごい高性能らしく、『んー、最近のは時速7キロ(秒速約2メートル)で刈れる』とか聞いて『マジで!?』とか叫んじゃいましたよ。

 私が子供の頃は、だっだっだっと、歩くより遅い速度で機械が刈る背後で、稲の束をまとめたりする人間が必要でしたね。

 そして、『部屋の隅を丸く掃く』という言葉がありますが、当時の家の勇者コン〇イン様は、田んぼの隅の収穫がうまくできませんでした……なので、その部分は人の手で刈ります。(笑)

 今は、刈り取り、脱穀、袋詰めまで勇者様が……まあ、そんな勇者様の場合、その日のうちに運搬されて機械乾燥までやらないといけませんが。

 私が子供の頃のそれと、今の最新式のそれとはいろいろ違うので話が飛びまくりますが、最新式の稲刈りができる農家はそれほど多くないとだけは言っておきます。

 稲を刈る、まとめる、稲を干す。

 この稲を干すものが、地域によって呼び名はまちまちっぽく、稲架、稲掛け、はさ掛けあたりが、私の知ってる言葉です。

 私の家では、稲掛けと呼んでました。

 あ、私の家は第3種(笑)兼業農家……本業があって、家と親戚で食べる分程度の収穫……なので、農家とはいえません。

 ちなみに稲掛け。

 イメージとしては、木の棒を三本紐で縛って、三脚みたいに田んぼに突き立てます。

 その3脚と3脚の間に、物干し竿みたいに木の棒をかけます。

 洗濯物よろしく、束ねた稲をそこにかけていきます。

 まあ、この稲掛け用の木の棒が、農機具と一緒に祖父の家の倉庫に片付けられていたのです……まあ、それなりの長さと太さのある木の棒は、それだけで資源と言えましょう。

 あ、稲を干す時は崩れないように、左の端にかけたら次は右の端にかけるというように、バランスをとりながらお願いします。

 さあ、これでひと段落。

 ははは、何を言っておられます。

 次の田んぼに行きますよ。(笑)


 稲刈りと稲を干すのにかかる時間を計算して、この田んぼは何日、こっちの田んぼは何日に稲刈り……と計算してスケジュールを立てるということは、田んぼの水抜きもずらさなきゃいけないし、それはつまり田植えの時期もずれるわけで、農薬散布の時期もずれる。

 機械化される以前は、田植え、稲刈りは周囲の人間と協力しながらやるものだったからか、両親の世代はどこが誰の田んぼなのかということをほぼ完全に把握しています。

 当然、それをしてないと農薬散布で文句を言われたりします(時期が違う)から……まあ、小規模の田んぼが複雑に絡んで位置する田舎の農業だと、コミュ障は確実に村八分ですな。


 そして干された稲は、脱穀されます。

 とりあえず、機械化って素敵。

 夜遅くまで、ごぉんごぉんと機械が唸ってたのを覚えています……当時はすごいと思いましたが、結局は機械を使った唐箕ですな。

 風を起こして、籾とワラくずを選別する、と。

 ちなみに、祖父の家には千把こきっぽいものがありました……学校の教科書でそれを知って、驚いたのを覚えています。


 うん、本業じゃない、兼業でもない、家庭栽培レベルの米作りでさえ、こんな感じですよ。

 挙句の果てに、生産調整で田んぼ潰せとか言われますよ。

 ウチは関係ねえだろと言いたいところですが、関係ないからこそ潰せるという意味もある。

 父親の代から兼業農家になったというか、農協には登録されているというか……つまり、目標数値達成のためには手頃な物件だったのかもしれませんね。

 今の実家は田んぼだった場所ですし、家の隣の畑ももとは田んぼ。

 私が小学校に上がるまで住んでいたところも、元々は田んぼだったところ。

 家の前の田んぼも私が高校に上がるときに潰してしまいました。

 ウチの両親も、息子たちに農業をやらせようとは思ってなかったんでしょうね……あまり手伝いもさせてもらえませんでした。

 邪魔だったというのもあるんでしょうが、『仕事の邪魔をする存在は殴られても仕方ない』というのが、当たり前の認識でしたからね、当時は。

 当時じゃなく、地域と言っておきましょうか。(笑)


 両親が亡くなって、農家を継ぐつもりもないから、田んぼ買ってくれとか言われますよ。

 影でさんざん悪口言ってたくせに、『近所(笑)のよしみで』とか、『昔は世話にもなっただろ?』とか、こちらを人でなしのように……てめーがそんなんだから、てめえらの息子と娘は、学校で総スカン食ってたんだよなどという言葉を、そっと語り合う中学生の私と、高校生の次兄。


 売れるような良い田んぼは、本業の方が放っておきません。

 まあ、うちの父親がある意味素人だから、だましに来てるわけですが。(推測)

 はは、ウチの親父は農業は素人かもしれないが、商売と腕力は(以下略)。

 素敵ですね、田舎のスローライフ。

 スローはスローでも、悪意が投げつけられるのスローじゃないかしら。


 まあ、いつの時代もそういうことがあったのかどうか……ウチの田んぼは、家周辺の田んぼと、神社そばの田んぼと、人に貸してる田んぼが……。

 じいちゃんだろ?じいちゃんのせいだな?

 アンタ、近所でめっちゃ嫌われてたって聞いてるぞ。(笑)

 どうなってんだ、ウチの家系。

 でもなあ、ニコニコ笑いながら子供の私にお菓子を食べさせて『アンタのおじいちゃん、このあたりでめちゃくちゃ嫌われててなあ』などと話す、近所のおばあちゃん(非親戚)のほうが怖いと思う。

 『お前、〇〇とこの孫か』などと、吐き捨ててきたおじいちゃんの方がマシというか安心できます。

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