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137話:相撲の『投げは小指で打つ』の言葉に隠された意味。

ちょっと変わったところで、漁師さんの『投網は、腰と小指で投げる』なんてのも。

 大型化によって、決まり手の7割以上が、『押し出し』『寄り切り』系になっている大相撲。

 つまり、昔はもっと技が多彩だったことを意味するんでしょうが……勝負に徹すると、むしろ決着はシンプルになっていく事を考えると、単純には言えません。

 さて、そんな相撲の世界で昔から言われている言葉。

『投げは小指で打つ』

『マワシに小指いっぽん残ってれば、問題ない』

 などなど。

 まあ、言葉尻や言い回しは多少違っても、『小指が決めて』、『小指が大事』的な考え方があるのは明らかです。

 相撲以外に目を向けても、野球の『グリップは小指で握れ』とか、剣道の『小指を絞るように持つ』とか、小指を重視する言葉は数多くあります。

 『小指には運動神経が通っているから重要』などという言葉もありますが、小指だけに通っている運動神経ってなんだよ……などと突っ込むと、何故か目をそらすだけの指導者もいます。(笑)

 つまり、言葉を知ってるだけで、意味がわかってる指導者は多分少ない。

 そういえば私の長兄は、『喧嘩でヤバイと思ったら相手の小指を折れ、躊躇するなよ。命に別状がなくて、相手を戦闘不能にできる有効な手段だ』などと教えてくれました。

 うん、小指って重要、超大事。(棒)


 さてさて、なぜ小指が大事なのか。

 相撲のマワシを掴むという行為、力を掛けるベクトルと、人の手の構造についてつらつらと説明できなくもないのですが、ほかのスポーツに汎用性のある部分にスポットを当てます。

 人間の手は、基本的に5本です……豊臣秀吉は6本指(多指)だったとかいう話もありますけどね。

 この5本の指のうち、親指・人差し指の2本と、中指・薬指・小指の3本は、人間の運動面で言うと別のグループに属します。


 え?っと思うかもしれませんが、知識ではなくそれを実感できる実験があります。

 身近に、なにか固定されているもの……家の柱とか動かせない重いものとかあればそれを使います。

 できれば床に座った体勢で行うのがわかりやすいのですが、まず前者の2本(親・人差し)でそれを、ゆっくりと力を入れて引っ張ろうとしてみてください。

 うまくいくかどうか、実感できるかどうかわかりませんが、自分の体(上半身)が引き寄せられるような感覚を得られたら問題ありません。

 次は、後者の3本(中・薬・小)です。

 慌てず、ゆっくりと力を込めます。

 力は入るけど、さっきのように上半身が引き寄せられるような感じにはならないと思います。

 もう一度やってみましょう。

 前者は腕の感覚に注意してください。

 後者は、背中に注意を。

 うまくいかなかったり、感じられなかったらすみません。

 結論から言うと、親指・人差し指2本は、上腕二頭筋……いわゆる、腕を曲げて力こぶのできる部分の筋肉です……と連動しています。

 そして、中指と薬指と小指の3本は、広背筋……背中の筋肉です……と連動しています。

 単純な話ではないのですが、腕力と背中の筋力を比べると、背中の筋力の方が強いです。

 体力テストの背筋力検査で測った数字が、腕力で出せるかというと出せません。

 まあここでは、何かを持ち上げるような強い力を使いたいとき、背筋力を用いるのが有利ぐらいに考えてください。

 相撲でのつり……相手を持ち上げるのは当然、こちら。

 さて、ここで重要なのは……親・人差しの2本の指に力を込めると、反射的に上腕に力が入って……腕をグッとひきつけるような動きをうむということです。

 投げの最中に、腕を引き寄せてしまう……それは、相手を投げようという動きのバランスを崩すと同時に、円の動きの半径を変化させることを意味します。

 それで腰が浮けば、投げられている相手の体の上に乗ってしまい返される危険が増えたりします。

 まあ、専門家でもないのに細かいことを説明されても困りますよね。(笑)

 意味が分かってなくても語り継がれている言葉には何らかの真実がある(間違いだらけなのもありますが)……その場合、ものすごく重要な真実が隠れていたりするのですが、これなんかがそうです。

 つまり、小指に力を入れるというか、小指に意識を集中することで、親指・人差し指の力が自動的に抜ける。

 それは、腕力ではなく広背筋の活用につながると同時に、間合いが重要になってくる相撲において、その間合いというかバランスを崩さずに済む極意を秘めているわけですね。

 野球のバットも、剣道の竹刀も、腕ではなく背中で振るというか……その軌道をぶれさせてはいけないがゆえに『小指』に意識を集中するという教えが伝わっていたのでしょう。


 たとえ、その意味が分かってないにしても。(笑)


 まあ、経験則なんでしょうね。

 いろいろやって、小指に力入れたら、なんか具合が良い…ぐらいの。

 知識だけの頭でっかちも困りますが、理論武装することで、少なくともスランプの期間を大幅に短縮することが可能になります。

 こうすればこうなるってのが判明してるわけですから。


 とりあえず、『こう投げるんじゃ』とか、『こう打つんじゃ』とか、『打たれないたまを投げろ』とか、適当で、理不尽で、ご都合主義の精神論指導者は勘弁してもらいたいです。(笑)

 正直、中学と高校で野球理論について指導してもらったことはないです。

 ああ、サインプレーなんかのプレイそのものは別としてですが。

 それが正しい指導なら、理論抜きでもまだ救いがあるのですけど……。

 実際のところ、私が出会った中で一番理論的だったのは小学校の教頭先生でした。(笑)

 ソフトボールの選手だったらしいのですが、私の投球術と打撃理論はこの教えが原点で……これ以降の指導者はお話にならないレベルでした。

 当時50歳ぐらいだったから……もしかすると、ものすごく先進的な理論の持ち主だったのかもしれませんね。

 私にとって、教頭先生との出会いは貴重だったと思います。

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