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131話:虻とクラゲ

 海水浴に対してよく言われる言葉。

 お盆を過ぎたらクラゲが出る。

 実際に刺されたことがある人間はわかるでしょうけど、クラゲは洒落になりません。

 そもそも場所が海ですから、周囲に人がいない状態でクラゲに囲まれてやられたら……ああ、これは死ぬよなと思います。

 まあ、最近のクラゲといえば、エチゼンクラゲとか、洒落にならない毒を持つクラゲ……名前は忘れました。

 親戚の伯母さんの『自然が、もう泳ぐ時期じゃないよと教えてくれているんだよ』の言葉が心に残っている。

 上品で穏やかな言い回し……私もそんな大人になりたかった。


 まあ、ウチの家系からして腹の中で何を考えているかわからないのですけどね。(笑)


 しかし、私は海の子ではないので、泳ぎというならプールの子。

 そう、小学校は周囲に多くの水田が存在していた。

 子供の頃は、『農薬散布が始まったら全力で逃げなさい』と周囲の大人に強い口調で指導されたものだ。

 全力で逃げなきゃいけないようなものを散布しているのかなどというツッコミはしない。

 無農薬だの、有機栽培だのという言葉がまだなかったし、それがどれだけの苦労を強いるか、当時の子供たちは、肌で分かっている。

 と、いうわけで……お盆が過ぎたら虻の季節である。

 やつらは、プールで泳ぐ子供たちを狙ってやってくる。

 風の強い日はマシなのだが、休憩時間に甲羅干しをやっている子供たちに襲いかかるのだ。

 虻に襲われそうになったらプールに飛び込む。

 虻に襲われなくてもプールに飛び込む。

 監視員の教師や保護者に怒られたら、『虻に刺されそうになったから』ですむ。

 便利な魔法の言葉だった。(笑)

 子供たちは、無邪気かもしれないが、計算高い。


 実際、アレはなんだろうと思う。

 外見は、透明なハエといった感じだったが、実際ハエの仲間というか、ハエの亜種にあたるらしい。

 あ、虻にもいろいろ種類があるので、外見に関しては色々あると思います。

 いわゆる、牛などにまとわりつく虻が一般的なのかもしれないが、私が経験した虻は、水田付近で何を狙っていたのだろう?

 普通に考えると、水田付近で見られる細かな羽虫がえさなんだろうが……だったら人を刺すなと愚痴りたくなる。

 中学校の時は、虻なんて見ることもなかった。

 高校の時も。

 大学以降、『虻』という言葉そのものをほとんど耳にしない。

 刺されると、その瞬間はものすごく痛い。

 腫れるのだが、蜂ほどではない。

 というか、痒くなる。

 そのせいで、お盆を過ぎるとプールに通う子供は少なくなった。

 みんな虻が嫌いだったし、多分みんながやられた。

 そうか、こういう時にあの言葉か。


 自然が、もう泳ぐ時期じゃないと教えてくれているんだよ。(にっこり)


 そうか?

 クラゲと違ってなんだか納得いかない。

 人徳の差か。(笑)

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