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124話:運動ができる人間は皆歌が上手い……本当に?

音痴に関して、あなたを不快にさせる恐れのある表現があります。

 スポーツができる人間は皆歌が上手い。

 私が子供の頃、既にこれは定説のように口にされていた。

 今はそんなテレビ番組があるかどうか知らないが、プロスポーツ選手が見事な歌を披露するのはお約束。


 私は中学生に上がった頃に、その説について間違ってはいないだろうと結論づけていた。

 なぜかというと、運動というかスポーツにおいて、リズム感が重要だと思っていたから。

 走る、跳ぶ、投げる……筋肉の収縮タイミング、溜め、自身のエネルギーロスをどれだけ低く抑えるかによって最適化を目指す。

 そして、対戦相手のそれを妨げるにはどうすればよいか。

 結局、対戦系統のスポーツは、心理的読み合いも含めてお互いのリズムの奪い合いに尽きる……というのが、当時の私が抱いていたスポーツ論というか。

 つまり、優れたリズム感を持っていたら、当然音楽におけるリズム感にも応用が効く。

 運動能力にリズム感が大きく貢献するなら、自動的に運動ができる人間は歌も上手いだろう。


 と、私は半ば結論づけていた。

 ……高校2年になるまでは。


 私は勘違いしていた。

 リズム感云々はさておき、いわゆる音痴には2種類のタイプがある。

 一つは、歌のリズムを外すタイプ。

 そしてもう一つは、音階を外すタイプ。

 前者に対して、私の理論はさほど問題はない。

 しかし、後者である。

 田舎の人間だから、そもそも被験者の絶対数が足りなかったのだ。

 私は、高校2年になって野球部の後輩を得た。

 そこに、彼がいた。

 まあ、詳しくは個人への悪口になってしまいそうだから控えます。

 強肩強打。

 間違いなく、野球部の主力になるであろう彼の音痴が発覚したのは、監督の気まぐれが原因だ。


 お前ら、甲子園で勝って、校歌を歌う準備は出来てるか?


 と、いうわけでグランドで野球部全員で校歌の合唱(斉唱?)。(笑)

 その途中で、何故か1年生が数人悶えていた。

 練習後に理由を聞いて、そして彼の歌を聞いて……。


 よし落ち着こう。

 私は、歌が上手い下手ではなく、割と音楽が得意な人間で、楽器演奏も含めてそれなりの知識もあったので色々と彼に質問して、判明しました。

 彼、リズム感には全く問題がないのですが、音階が狂っているのです。

 ドーレーミーと、口ずさんでから、彼にそれをやらせると、見事にバラバラ。

 声が高い低いなら良いのですが、極端な話、『ド・レ・ミ』が『ファ・シ・レ』になって返ってきたりするのです。

 つまり、彼にとっては耳で聞いた音階をそう認識しているのか。

 私は専門家じゃないし、そうした検査を行うつもりもなかったのであれなのですが、音階の聞き取り能力に問題があるのか、それとも発する時の変換過程に何らかの問題が生じているのか……。

 かつて絶対音感なんて言葉が流行りましたが、それは絶対じゃない音感が多数を占めるということで、その差というか狂いの幅がたまたま大きかったのが彼ということになるのでしょう。


 おそらく、彼にリズムゲームをプレイさせたらかなり優秀な成績を出すのでしょうが、歌を歌わせて、それを他人が評価すると良い評価は得られないでしょう。

 彼は間違いなく優秀な野球選手で、運動のできる人間でした。

 でも、歌が上手いという評価は得られない。

 つまり、運動ができる人間は皆歌が上手いというのは、少なくとも絶対とは言えない。


 

 私も含めて、彼を笑った野球部員に不快感を覚える方もいるかもしれませんが、特に悪意があるわけではありません。

 走るのが早い、絵が上手い、手先が器用、勉強が得意、といった部分を、私は人間の個性ととらえていますが、彼は野球がうまかった。

 私たち野球部員にとって、野球の能力のあるなしが一番重要な個性なのです。

 もちろん、彼がそれに傷ついたと言われたら、何も言い返せないのですが……足が遅いとか、成績悪すぎと言った言葉が普通に飛び交うチームメイトでした。

 そのあたりの配慮を願えたら……と、望みます。

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