120話:蝉時雨と蛙の合唱。
都会では星が見えない……などというと怒られます。
どこであろうと、その場所なりの星が見えますよ。
まあ、私が子供の頃に見た大阪の空は……ひたすら怖かったですね。
ちょうど到着したのが夕方だったんですが、夕焼けが紫色だったんですよ。
正直、初めて見た色というか、一体何が起こっているのかとか、これからなにか恐ろしい事が起こるんじゃないのかとか……怖くて、ちょっとだけ泣きました。
ぶっちゃけ、大気汚染ですけどね。(笑)
と、いうわけで……都会では街灯が灯り、立ち並ぶ住宅からこぼれる光は闇を照らし、文明というものを目に見えて教えてくれます。
迂遠な書き方をしましたが……その、文明の光のせいで、セミが夜中やら、明け方やらに容赦なく鳴きまくる環境に慣れるまで、少々時間がかかった記憶があります。
セミといえばアブラゼミ。
乾燥と高温に強く、コンクリートジャングルの都市部において猛威を振るい、アブラゼミ以外の鳴き声を生で聞いたことがない子供たちも続出しているとか。(笑)
というか、コンクリートジャングルとは無縁の我が故郷においても……私が子供の頃はもう、アブラゼミが大きな顔をして鳴きまくっておりましたが。
正式名称に自信がないのですが、クマゼミはそこそこレアで、ニイニイゼミはアブラゼミの次ぐらいにのさばっていて、ほかのセミが鳴かない時間帯に鳴くことで存在感をアピールするヒグラシ(実際に見つけるのは難しかった)に、ミンミンゼミはなんか山の方に行かないと見つからなかった記憶がある。
あと、小柄なセミで……チッと短く鳴くやつは、なんて名前なんでしょうね?
身近というか、覚えているのはこのぐらい。
夏の日に網戸にへばりついて鳴き始めるセミを見ては、殺虫剤で歓迎してやったものです。
そして日が沈むと。
今度は、家の周囲の水路からカエルの大合唱。
高校のチームメイトが私の家に泊まったことがあるのですが、慣れないとなかなかに厳しい環境であるそうな。
しかしこのカエルの合唱も不思議なもので、父や母は『ウシガエルだよ』というのですが、当然この水路は私にとっても子供の頃からの良い遊び場でして。
目撃したことないんですよ、ウシガエル。
とにかく、食用という知識と噂によって『でかい、説明無用!』というイメージがあったんですが、大学生の時に『でかいって、たぶんそれはアフリカウシガエルのことだと思う』などと突っ込まれ、私の中のイメージ崩壊。
もしかすると、梅雨時期によく見かけたあのオタマジャクシは、ウシガエルの幼生体だったのか。
アマガエルのオタマジャクシとは大きさが違うというか、私のイメージでは『アマガエル:小さい』『ウシガエル:でかい』で、あのオタマジャクシは『普通』の大きさだと思ってたので。
ただ、あれだけ毎年毎年泣きまくるウシガエルですから、それに関する個体は当たり前に目撃できてなきゃおかしい。
それがわかったところで、毎夜毎夜の大合唱はどうにもならないんですけどね。
ちなみに、蛍もいた。(笑)
私が子供の頃は姿を消していたそうなのですが、高校ぐらいから復活したというか……まあ、水田の農薬とかそのあたりの絡みの問題だったんでしょうけどね。
ただ、私が故郷を離れてから山の方で開発があったそうで……その影響が出たなら、また蛍が消える可能性はありますね。
夜に部屋の電気をつけてカーテンを開けたら、蚊が、セミが、蛾が、部屋にめがけて飛んでくる。
かなりレアだったが、カブトムシが飛んできたことも。
田舎なら無条件にと思っている人もいますが、あれはあれで生育条件があって、場所を選ばないとそうそう見かけることはありませんでした。
ちょっと山の方に行かないと。
やや話が冗漫に流れましたが、田舎の夏の夜は都会よりも騒がしいです。(笑)
秋は秋で、虫の音がうるさいです。




