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11話:こみゅにけーしょん

さて、同じ時間に予約投稿すると…大丈夫なのかどうか?

 ……難しいですね。


 言葉というモノは、お互いの共通認識を利用したツールです。

『空が青い』という言葉に対して、『空』と『青』の概念を認識していないと、我々は同じ光景(もしくは似通った光景)を思い浮かべることができません。

 それゆえに、人の感覚だよりになる言葉は、すれ違いを生む原因になりがちです。

 『今日は寒いなあ』という呟きに、『本当、寒いよなあ』と思う人もいれば、『え?寒いか?』と首をかしげる人もいるわけで。

 大学受験の時に、北海道出身の方と鹿児島出身の人と隣の座席に座った縁で会話をしたのですが、『寒さ』に対する概念の違いを強く感じました。

 Tシャツにセーター一枚で平然としてる人と、シャツ2枚にトレーナーとコート(カイロ付き)で震えてる人と、間に挟まれた私。

 話を合わせようという意識がなければ、会話が成り立たないレベル。(笑)

 受験前だというのに、のんきに日本は広いなあと考えてましたよ。

 私もそれほど寒さに強いわけではありませんが、『バットで殴られたように感じる』寒風とやらを、一度味わってみたいような、味わってみたくないような……。


 人間の耳は、言葉の5~7割程度しか聞き取っていないそうです。

 聞き取れなかった空白の部分を、私たち人間は無意識に補って会話を成立させているらしいです。

 あなたの友人・知人関係で、会話の際に聞き間違いが頻繁に起こる相手はいませんか?

 その相手とは、趣味が合わないというか、異なっている事が多いのはそのせいだと……ああなるほどなあ、と私は頷くような気持ちになりました。

 聞き取れなかった部分を埋める作業において、本人の知識やら何やら、人生における性質が絡んでくるのでしょうから、相手が自分と同じような連想をするかしないかで言葉がきちんと伝わるかどうかの伝達率が変化するのは当然と言えましょう。

 マニュアル社会と言われて久しいですが、マニュアルそのものが発生・発達・システム化したのはアメリカだと言われています。

 様々な人種・民族が混在する社会において、必要に迫られたところが大きいのでしょうね。

 ……あまり、ピンと来ませんか?

 では、ちょっと実話をもとにした例え話を。


 新しく入ったバイトに、仕事の一つとしてトイレの掃除を教えようとしました。

 トイレの掃除といっても、学校の清掃やら、家の掃除やら、テレビや新聞などで得た知識が結集されてひとつの技術に昇華しているわけで。

 彼は、『まあ、特に変わったことをするわけでもないしな』と、自分のトイレの掃除を新人に一通り見物させて、「今、俺がやったようにすれば問題ないから」と言って、締めました。

 さて、次の仕事の日に新人が清掃し終えたトイレを見て。

「……うん、やたら早かったから疑問だったんだけど。俺がやったのと同じようにしたのか?」

「え、よく覚えてないです」

「……なるほど」

 まあ、最初だしなと……最初から清掃をやり直した上で。

「あくまでもこれは俺のやり方だから。自分のやりやすい方法で、要は綺麗になっていればいいから」

「はいわかりました」

 その次の機会。

「……うん、やたら早かったから疑問だったんだけど。綺麗になってないからダメだ」

「え、綺麗になってるじゃないですか」

「……なるほど」

 『綺麗』というのは感覚に頼る言葉です。

 自分と彼では、『綺麗』の感覚が違うのだなあと納得し、もう一度初めから清掃をやり直すと、時計を指して言いました。

「まあ、状況によっても変化するけど……20分ぐらいかかる。次は、時間を20分かけて清掃に取り組んでみてくれ」

「はい」

 その次の機会。

「……えっと、20分経ってないよな?」

「綺麗になりました」

「……そうか」

 言葉少なに、まずは清掃用具を綺麗に洗ってから、もう一度清掃を最初からやり直した上で、汚れた清掃用具を見せました。

「大掃除と違って、普段の清掃レベルでこうなるってことは、汚れが落ちてないってことなんだ。それはわかるな?」

「……はい」

「うん、まずは20分清掃する。できるだけ俺がやった通りに作業に進める。この二つに注意してやってくれ」

「……はい」

 その次の機会。

「……まだ10分しか経ってないんだが」

「……綺麗になりました」

「……そうか」

 言葉を言葉通りに受けとってようやくレベル1です。

 実際は、言葉を言葉通りに受け取るまでにもそれなりのハードルがあるのですが。

 ここはおそらく、その上のレベルを求められているのだろうと考えて、彼の言葉の裏にあるもの……いわゆる行間を読む。


 店長に『彼は仕事に向いてないです』と告げて、クビにしてもらいました。


「……つまり、彼は仕事をしたくなかったんだよ」

「うん、間違ってないとは言わないけど、意図的に別の解釈してるよな、それ」

「俺は、彼の望みを叶えてあげた。うん、俺って素敵」

 などと、酒を飲みながら、ひたすら自分を誤魔化そうとする誰かさん。

 そのぐらいで良心を痛めるなんて、優しい男だなあ……としか私は思いませんでしたが。


私なら、さっさとクビにするけど。 

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