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10話:高校球児のプライバシー

ははは……(乾いた笑い)。

 そんなものありません。


 それで終わるとわけわからないですね。

 くどいようですが、私が現役の時とは状況が変化しているので、昔話と思ってください。


 高校球児。

 甲子園。


 まあ、野球というコンテンツの継続的ビジネス化の一環として、ある意味格別の取扱いを世間から受けているのが高校球児です。

 野球少年を卒業し、高校でも野球を続ける人間の大半は、経済的、スポーツ的資質に恵まれています。

 別に選民思想というわけではなくて、こういう前提があるのです……という理解を求める語りかけです。

 例えば、私はチームで一番足が遅かったわけですが、100メートルのタイムはギリギリ12秒台でした。

 このタイム、世間一般平均だと割と上位のはずです。

 高校でのマラソン大会において、陸上部の人間を抑えて、トップ5を野球部で独占したり……まあ、運動のできる子供はそれで稼げる可能性のある野球をやらせろ……的な時代があったと思ってください。

 ある地域の子供の数が有限である限り、特定の種目に競技人口が集中することは、それ以外の種目の衰退というか圧迫を意味します……悲しいことに。

 ちなみに、経済的なお話で。

 高校時代に野球をするためのコストがどのくらいかかるかというと……これまた、私の例で申し訳ないですが、こんな感じ(金額は当時)。

 部費……月1万。

 保護者会会費……月2千円。

 年2回の遠征費……10万。(5万×2)

 試合用ユニフォーム、遠征用バッグ、ウインドブレーカーなど一式……8万。

 硬式野球用グラブ……2~4万。

 練習用ユニフォーム、スパイク、アップシューズ……その他。

 うわあ計算したくない。

 ちなみに、練習用スパイクは半年ぐらいでぶっ壊れる(安いやつ1万)、アップシューズは1か月から2ヶ月で壊れる(数千円)……怪我をすれば治療費もかかる。


 えっと、甲子園を目指す名門校だと、もっとかかるからね。(にっこり)

 比較的裕福な家庭じゃないと、この経済的負担を無条件で容認はできないと思います。


 ……なんだろう、高校野球の経済学ってタイトルで書き直したほうが良いような気がしてきました。

 

 気を取り直して……上記の前提を踏まえたうえで、高校球児は、自分が主役であることに慣れています。

 まあ、プライドを綺麗に叩きおられる人間の方が多いんですけど。

 周囲から注目を浴びることになれているにも関わらず、高校球児は常日頃から周囲からのプレッシャーにさらされ続けます。

 今は表面的にそんなことなさそうですが……まず、連帯責任です。

 高校に入ってポッキリとプライドが折れ、退部していった元部員。

 野球のために高校に入った人間が、野球を奪われたら目的を見失います。

 全てがそうではないというより、むしろ少数派なのですが、生活が荒れて問題行動を起こしたときなど。


 かつては、元部員の暴力行為で出場停止などが普通にありました。

 まあ、大抵は内部でもみ消すんですが……有力校同士の駆け引きというか、政治的やり取りを含めてどうしようもなくなるというパターンですね。

 今はどうか知りませんが、私が現役の頃は大会前になると地域の高校野球連盟に密告の電話がじゃんじゃんかかっていたようです。

 どこそこの部員がタバコを吸っていたのを目撃した……など。

 不思議なことに、1回戦、2回戦で負けるようなチームに対する情報はほぼ皆無らしいんですけどね。


 ……ちなみに、ネットなんかなかった時代です。

 個人的情報なんて概念が、世間で共有されて無かった時代です。


 『〇高の高塔という部員が、夜遅くに繁華街をうろついていた。高校生としてあるまじき行動であり、野球部の指導に問題が……云々』


 ……などというタレコミが県の高野連にあったなどと、監督から告げられた私。(笑)

 まず言い訳として。

 帰り道ですから、そりゃ自転車に乗って、通りがかります。

 それと、練習終わったら、夜ですから。

 でも大事なところはそこじゃない。

 市外から学校に通っていた私を、どうやって特定しやがった?

 自慢じゃないが、私は補欠で有名選手でもなんでもないのに。


 今はどうか知りませんし、私の出身地以外の地域がどうかも知りたくないですが。

 夏の大会前に、各学校の野球部部員の情報が顔写真入りで載っている小冊子というかなんというか……発行されるんです。

 出身校とか当然ありで。


 当然、密告されるのは私だけじゃなく……『誰それが、女の子と2人で歩いていた』とか、『誰それがタバコ屋の周りをうろついていた』とか……。


 ……うん、本当に大事なことはそこじゃない。(笑)

 高野連への密告というか情報が、現場(各学校の)に漏れているのは何故?

 それはね、甲子園が狙えるような学校と、高野連の職員がズブズブの……おや、こんな時間に誰か来たようだ……。


 各学校の後援会の代表は、地元での有力者であることが多いので、そういった情報は野球とは関係ない力関係や政治的やりとりにおいて表面化するかしないかが決定づけられるわけです。

 そのあたりはさておき、高校球児は不特定多数の視線にさらされていることだけは確かでした。

 私はせめてもの抵抗として、学校名入りのバッグの使用を控え、慎ましく慎ましく生活していたわけですよ……。


 甲子園で活躍した選手の家にファンレターが直接届く。

 うん、個人情報どうなってんだ……古き良き時代ですねー。

 便箋2枚に、選手の名前だけがびっしりとかかれていて、速攻で焼き捨てたらしいです。

 ははは、ストーカーなんて言葉がなかった平和な時代ですねー。


 今はかゆいところに手が届くまでネットが普及しているから、名門校は選手にマスコミ対策として受け答えやら、表情のつくり方やらを指導する時代です。

 高校球児は、高校生である前に芸人というか……まあ、さらし者ぐらいの覚悟を決めなきゃダメな時代ですね、きっと。


 高校球児に幸あれ!

 

 まあ、後援会の人が監督なりコーチに告げ口するケースもあるんですけどね。

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