#2:キャンプに住む褐色の少年
For:佐竹様
アドバイスありがとうございました♪
その意見を生かせるよう、これからもがんばらせていただきます!!!
それでは続きをどうぞ。
#2:キャンプに住む褐色の少年
キャンプ内はやはり街より設備も少なく、もはや山でのハイキングとかわらなかった。
周囲は荒原の土や岩石で囲まれており、上に灰色の空が目立つようにあっただけだ。
その中にこの広いキャンプはあった。中央に大きな見張り塔がそびえたち、そのまわりにはきちんと並んでテントが張られている。
キャンプの北端にはひとつだけ、ほかのテントよりも断然大きい、すこし古めのテントが貼られていた。きっとこのキャンプの長がいるのだろう、と僕は思った。
見張り塔近くの特殊輸送装置のところでは女性が井戸端会議を開き、少しでも広い場所があると子供たちが遊びだす。
街ではよくみかけられる行動が、このキャンプにもあった。
街と違うところは、建物がテントであるか否かというだけで、それ以外はほとんどまったく街と同じだった。
「兄ちゃん、どこからきたの?」
ふと、さっきの少年に、そう質問された。
少年の特徴を言うならば、ひざ丈のズボンに土汚れの目立つ白いTシャツを着ていて髪は少し長め、肌の色は褐色であるということだろう。
褐色の肌はほかにもいたが、彼だけはなぜか集団から浮いて見えた。
特殊なオーラとか、そこにいる違和感などのような信じがたいものではなかったが、彼はどこか特別だと僕は思った。
なぜそう思ったのかはわからないが、とにかく僕は質問に答えた。
「ここからは大分遠いところだよ。」
「へぇ、そうなんだ…。」
会話が続かなかった。
彼の声が終わると再び子供の騒ぎ声だけが耳に入ってきた。
会話を続けるのは苦手な方ではあったが、どうもこの少年とはそれ以上に何を話せばいいのかわからなかった。
しどろもどろしていると、再び彼は僕に話しかけてくれた。
「兄ちゃん、族長のところ行ってみない?」
「え…?」
「このキャンプの族長だよ、キャンプには1か所に1人は族長がいるって知らないの?」
「いや、知ってるけど…大丈夫なのか?」
「なら行こうよ、ちょっといかついけどいい人だって。はい、決まり。ついてきて〜。」
というと、少年はさっさと歩き始めた。裸足の足が砂をけり上げている。
僕は呼び止めることもできず、ブーツで黒く染まった足を地面から離しだした。
一応追いつき、彼の速足にしっかりとついていった。
彼の歩き方はしっかりしていた。「そこに道がある限り歩く」とでも言いたそうな歩き方だ。
街の人は僕をテントの中や通りがけにじっとみていた。でも、目が合いそうになるとすぐにそらされた。
この視線を投げつけられるのにもすでに慣れていた。
インパクトが起こる前、僕が子供のころ街に住んでいたころからずっとだったから。
僕や兄はそれがいやでたまらなかった。兄はいつもふさぎこみ、僕はいつも母に抱いてもらって泣いていた。
もちろん、耳がとがっているからと、何も知らない子どもにいじめられることも少なくなかった。だが、僕たちは身の上の問題で、文句を言うことはできなかった。
ついに、兄は我慢できなくなり、いじめっ子の子供と大ゲンカをした。僕はそれを見ていることしかできなかったのを覚えている。
殴り殴られ、その繰り返しで兄はたくさんあざを作った。なのに、いじめは止まることがなかった。
僕たちはいつも、ぼろぼろになって、泣いている僕を兄が慰めながら夕焼けの道を歩いて帰った。
喧嘩は何日も続いたが、いつも結果は同じだった。兄の方が強いはずなのに、僕が足を引っ張っていたからだった。
親はもちろん心配したが、それで相手の親に文句を言うことはもちろんできなかった。
我慢の限界を超えたとき、父母が僕たちをつれて荒原の片隅、この世界の片隅といわれる場所へ身を移した。
人は来ることのできない魔境へ、僕たちだけの楽園へ引っ越していった。
それから、僕たちは人と触れ合うことがほとんどなくなった。
買物は移動は父の作った装置ででき、人の目を極力避けた状態で買い物をし、歩き回ることなく片隅へ帰った。
過去が過去だったために、僕たちは人としゃべりたいと思わなかった。街にいたいと思うこともなかった。
僕たちは、一刻も早く片隅へ帰りたいとしか思わなくなっていた。
ビルや鉄柱の並び立つ街を久々にじっくりと見たのは、僕が兄を探し始めてからだった。
そして、僕は少年に話しかけた。
「君の名前は?」と。
そして、少年は僕に答えた。
「カッパ。」と。
#02 End