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#01:荒原のキャンプ

―西暦6XXXX年


生命の織り成した技術が張り巡るイレサートの世界


ヒューミス、アンドロイド、そして様々な小動物型ロボット…


すでにこの世界で滅亡した動物は数知れないほどに至っていた


ヒューミスが世界の技術を作り、アンドロイドは思うままに動かされていた



しかし、ヒューミスを、アンドロイドは攻撃した


それが、「ロイド・インパクト」と名づけられ、ヒューミスの数は半分になった


イレサートには、廃墟や荒原がとても広く分布していた


ヒューミスの暮らしは、アンドロイドによって決められてきた


負の遺産を、ヒューミスは残してしまったのだ




―その廃墟を歩く、一人の青年


この青年が、この物語の主人公となるだろう


「ロイド・インパクト」に続いた「セロの悲劇」


隠された種族「ラクーナ」によって起された史上最悪の悲劇




それを解くカギは、彼が持ち歩いている

























悲禍劇『Zello』






















#01:荒原のキャンプ


 僕の背中の剣がカチャカチャ鳴っているのだけが聞こえる。

この荒原を歩き続けてもう何日経ったのか、食料や水だけは絶えることがないのに、一向に街は見えてこない。

見渡すかぎり、灰色の岩と空。赤茶色の土のせいで少しだけ赤っぽく見える。

歩くことにはなれたが、さすがに1週間も荒原の中にいたことはめったにない。

すごく疲れるし、気が遠くなる。

そんなとき、僕はとりあえず水を飲む。そして、その場にパタリと倒れる。

座ることなく寝転がったまま体を休めて、夜になったらテントを張って眠る。

そして、キメラが襲ってきたら有無を言わずたたっ斬る。

キメラを斬るたび、僕は街を見つけることがつい億劫になってしまう。

キメラはアンドロイドと同じだ。僕は、彼らをとてもかわいそうに思う。

ヒューミスは今頃アンドロイドと見せかけの「共同生活」を送っているだろう。

キメラは、アンドロイドのように役に立たないからこんな荒原に捨てられているんだ。

 だが皮肉なことに、このキメラたちは僕の食料の一部となってくれている。

まずいトラベルフードの気持ち悪い固形物より、こっちの新鮮な肉の方が何十倍もおいしいし、スタミナがつく。

荒原を1週間も歩き続けられるのは彼らのおかげ、といっても過言ではない。

 歩き続けていたら、夜になった。

この間狩った彼らの肉を焼くためにライターと燃料を出し、そこらへんの燃えそうな草や葉、枝を集め、肉をあぶる。

灰色の空も、夜になると紺色の星の光る奇麗な空へと変わる。

満天の星空の下で、僕は焚き火を燃やし、その火を見て、消して、テントに入って眠る。

もうそろそろ街が近いと言うのは、昼の空の色で分かっていた。

明日はキメラを作ったヒューミスの街へたどりつく。いや、ひょっとしたら遺跡かもしれない。

僕ははっと気づき、ライターで昔ながらのランプを灯した。こいつは、電池みたいにいらなくなったものが出ないからずっと使っている。

いわば、僕の旅の相棒だ。

 相棒が照らしてくれる光の下で、僕は地図とコンパスを見た。

コンパスは北を指し、地図は僕を導いてくれる。このふたつも、僕の旅の相棒だ。

地図を見たところ、僕が向かっている方角は北西、向かった先にあるのは小さなキャンプだった。

名前は「セロファーガキャンプ」。

荒原の中の一つの地区、セロファーガ地区に創設されているからと前の街で聞いたことがあった。

あの時教えてくれたのも、たしかアンドロイドだった。

 調べ終わった僕は、ランプの灯を消してまたブランケットに潜った。

疲れていたためか、その日は何も考えずあっさりと眠りにつけた。


夢を見た、僕が誰もいない遺跡を歩く夢。

そこの壁には意味のわからない文字、たくさんの武器や人の絵がたくさん刻まれていた。

後ろは真っ暗できた道もわからないほど、なのに前は火が付いていて明瞭に見える。

その先をずっと進んでいる。壁のわけのわからない落書きのような文字はまだまだ続く。

僕は一心に歩き続けた。その先を目指して、曲がり角は一切曲がらなかった。

そこに現れた、二つの道が。どちらかを選ばなければ僕は谷底に落ちてしまう。

右か、左か…

 そこへ、人が来た。後ろが真っ暗だったから、顔は見えなかった。

男の人だというのはわかった。そして、横に来た時は服装も。

彼は、黒いパンツに黒いブラウス、黒いブーツに黒いコートとすべてが黒だった。

しかし、顔だけはどうしてもわからなかった。彼も隠しているわけではないのに、顔だけはどうしてもわからなかった。

そして、彼は僕に小さく、こう告げた。


「俺は先に行く、お前は自分の道へ行け」


そして、彼は左の道へ進んだ。

そこで、目が覚めた。


テントから出ると、空の灰色は少しだけ朝日に染まっていた。

僕は、テントをサッサとたたみ、昨日の残った肉を全部腹の中に押し込み、出発した。



4時間ぐらいしたのだろうか、昼ごろになってようやくキャンプの証であるテントが見えてきた。

僕は足を速めてテントへ向かった。

億劫ではあったが、僕も早く情報を欲しがった。それに、燃料も切れかかっていたので補給しておきたかったからだ。

ヒューミスに会えることより、自分の都合に対して喜んだ。

ヒューミスに会うことは、正直どうでもいいことだったから。


30分ばかり歩くと、僕はキャンプの入り口に着いた。

木でつくられた小さな門の横には、トランスファーマシンが置いてあった。

これも、最先端技術で作られたものだ。

こんな小さなキャンプにも、最先端技術の手はちゃんと行き届いているのだから、ヒューミスの力は侮れない。

そして、一人の少年は、僕を見てある事に気がついた。


「兄ちゃん、耳とがってるね、なんで???」


この何気ない質問は、ヒューミスの彼にとって本当に純粋なものだった。

だが…

彼にとって、僕たちのことは、本当に「隠された種族」だったのだ。

誰も知らない種族、それが僕たち「ラクーナ」。

このキャンプで改めて思い知らされた、僕たちの希少価値。






この世にいるラクーナは…1人だけだったはずなのに。

もうひとり、ここにラクーナは存在しているのに。

世の中に知れ渡っているラクーナは「セロ」だけだった。

僕は、少しずつ悲しみにおぼれていった。

僕が認められていない存在にではない。

「セロ」に会えない、その悲しみに…。





#01 End

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