あめふる天の川
星の世界の空を、私は特に急ぐ用事も無いのでのんびりと飛んでいました。
空では砂糖をちりばめたように星達が輝いていました。
私はあまりにも気持ちがいいので少し遠出したくなりました。
深い深い青色の夜空をどこまでも飛んでゆきます。
「はぁ……」
下の方で溜息が聞こえたので私は降りていきました。
綺麗な空の下で憂鬱になるなんて、酷い事があったのでしょう。
「お嬢さん、顔をおあげ下さい」
私は下を向いて項垂れている若く、美しい女性に声を掛けました。
お嬢さんはゆっくり私の方を向きました
「八咫烏さんですか。私は織姫という者です」
織姫は言葉を続けます。
「今日は七夕の日です。愛する夫と一年に一度会えるはずの日なのに、下界の天気が良く無いのでしょう。天の川に架かっている橋が渡れないのです」
天の川といえば、この星の世界を二つに分けている大きな川のことです。
本当はこの辺りに橋があるはずなのに見当たりません。
天の川のある方向には濃い霧がかかっていました。
「あの霧は惑いの霧です。橋を見つけて渡ろうとしても気づくとここに戻ってきているのです。夫と会えるのはまた一年後になりそうですね」
そう言ったきり、織姫さんは黙り込んでしまいました。
私はハッと、名案を思いつきます。
「織姫さん、私の背に乗りなさい。織姫さん一人乗せるぐらいなら、私はなんともありません」
織姫さんは「ご迷惑をかけるわけには……」と最初は渋っていましたが、私の背に乗ってくれました。
私は大きく翼を広げて、風にうまく乗ります。
私の体は織姫さんを乗せたまま中に浮かび上がりました。
天の川の対岸に近づくに連れて、織姫さんの胸の鼓動が早くなっていくのが分かりました。
星達は何処までも私達の背中をついてきました。




