とある寮の一室
「さすが怪物姫と呼ばれるだけある。なかなか落ちないな」
「"なかなか落ちないな"じゃないですよ。そもそもいつもなら相手が泣こうがものにしている人が」
アレンがバルトの前に飲み物をだした。バルトが口をつけたが熱かったのか湯冷ましをはじめる。
「それを聞くと俺悪人みたいだけど」
「悪人より悪魔ですよ。心の弱いとき甘い言葉を囁いて落とすんですから。その手で何人落としてきました?」
「うーん、1・2・3・4・5・6・7・8・9・10‥指が足んないな。国の発展がかかってるからって兄貴無理難題押し付けてくれたよな」
「確かにそうです。でもこれをクリアすれば命の保証と小さいですが自治区をくれると約束なされたのですよ。本当ならばナルソス様が皇帝に即位されたとき事故死か病死していたのに」
事故死か病死か‥‥。王家の半端者で恥曝しは闇に消すってか。長男は政治、次男は軍事、三男は経済、四男は芸術が得意。そして俺は得意なことがない。あえてあげるなら女口説き?一時期色々な女性を口説きすぎて帝国にいた時大変だった。その手のまずい話は、兄貴達がもみ消したみたいだけど。
「若気のいたりだよ。いくら俺でもあの姫様を口説くのは大変そうだ」
泣かれた瞬間に罪悪感を感じるのは初めてだ。いままで顔ではそう出していたが思ったことはないというのに。
「バルト様、期限は半年ですよ。それを重々承知してください」
「わかってる。もう、休ませてくれ」
「かしこまりました」
アレンが頭を下げて部屋から出て行った。寝台近くのろうそくも消す。
「‥‥月だ」
バルトは、ぼんやり月を眺めた。