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ものすごくデジャブな理事長室。だがそこにいる人物の数は2人から4人に増えていた。
「いま、なんとおっしゃいました?」
「王命によりミーシャ様にドレスを着てもらいます。これは、王命ですから私程度の地位でなんとかできるものでないことはあしからず」
「本当に王命なのですか」
私が理事長を睨みつけると校長が一枚の紙を差し出した。
紙の内容は、私にドレスを着せて今日の舞踏会に出席すること。文の最後には、父の名と王の印である太陽と蔓が捺されていた。最後に何度も読み返すが打開策が見つからない。
「確かに王命‥‥例え王女でも王命には逆らえない」
してやられたものだ。自分達でなんとかできないならもっと上に助けをもとめるのは子どもでもわかるのに!
「この判断は、我々が下したものではない。陛下が直々に命令されたものだ」
いつもは校長の腰巾着で私の前では、ぶるぶる震える教頭が自信満々に言った。ここで挑発にのったら負けだ。この3人から出来る限り情報を搾り取る。
「この王命を運んだのはどなたですか。ここから城まで早馬でも3日間かかるでしょうに日付は昨日ですのね」
「陛下が昨日書かれてからナルソニア家の早馬を使ってここに送ってこられたのですよ」
ナルソニア家は、貴族でありながら商売をしている。主に馬の貸し出しを行っているため各地に小店舗を構える。
おそらくこの王命は、先の戦争で使用した馬をリレーのように走らせる方法を使ったと思われる。この方法を使えば休憩がいらないので常時トップスピードで走ることができ、早馬を一頭だけ走らせるより早い。
だが問題は、料金が一頭ずつかかるため金額が高くなる。今回の件に関して資金の潤沢な誰かもしくはナルソニア家が関与しているに違いない。
ナルソニア家が関係しているなら話が早い。司書姫ことアリアは、ナルソニア家の一人娘。噂ではナルソニア家の当主はアリアに甘いと有名なのでなんとかなる。だが別の金持ちによる策略なら面倒くさいことになる。どこのだれだかわからなければ対処しようがない。
と、考えているとこの場に似つかわしくない煌びやかな格好をした男性が入ってきた。
「ちょっと、話が長すぎ!芸術には時間が必要なの!」
「いま話が終わりました。連れて行ってください」
「はい、はーい」
私は、男にがしっと腕を掴まれ引きずられる。体制が悪いためふりほどけない。
「黒髪かぁ。でも光に当てるとちょっと髪が赤いわね。黒か赤がいいかしら?」
「あの!自分で歩くので腕を放してもらえませんか。痛いです!」
「ごめんなさい。でも、あと少しだから待って」
そういうと普段入らない教室の扉を開けた。
「なに‥‥これ?」
「なにこれ?ってドレスよ。ドレス!」
壁やハンガーに様々な形や色のドレスがかかっている。
「驚いたかしらここは、芸術科の被服室。そしてあたしは、芸術科の花!ラルフ。今日はあたしがあなたの花を開く手伝いをするわ」
「はっ‥はぁ」
「まずはドレスよ!」
私、大丈夫かな?