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次の日の朝に爆弾が投下された。
"今夜7時から舞踏会を開催する。必ず主席して服装は、正装を着て出席するように。正装がないものは学生課に申し出ること"
舞踏会は苦手だ。人が大勢いて疲れるし人に酔う。できれば椅子に座り静かにテーブルに置かれている花瓶の花でも見ていたい。
「んっ?下にも小さい注意書きがあるな‥‥」
“コーセル・フォン=ミーシャは男装で来ないこと。武術科のソーン・カーターは途中で抜けださないこと。政治学のウィルソン・フォン=エドガーは必ず主席すること成績優秀者でも容赦しません”
「‥‥‥」
要注意人物の中に私も入ってるの!?男装の何が悪い!
「怪物姫もそれを読んだか。釘刺されちまったな。でも今回は抜け出さねーよ」
「珍しい。バイト命でしょ」
「ちょっとな」
なに意味深に笑ってんのよ。気味が悪い。
「確かに今回は気になるよね。力入りまくりじゃん衣装の貸し出しまでするなんてさ。どこからそんな資金がでたのやら」
「舞踏会にでれば自ずとわかるはず。‥‥‥‥でも一番の問題は、私ドレスなんて着たくない」
「そろそろ男装を止めたら?これがいい引き際だと思うけど」
男装を止めたら女であることを認めたも同じ。私は女と認識されるのが嫌。
「男装とかってさ個人の自由じゃね?命令される筋合いはないと思うぞ」
カーターの言葉にホッとする。そう思っているのは自分だけじゃない。
「俺はミーちゃんのドレス姿がみたいな~。バルキリーがどんな変身をするか楽しみじゃないか」
「確かに楽しみです」
余計な輩まで出て来たな。
「私はこの格好が気に入ってるんです」
「残念。でも今日は、強制的にドレスを着せられると思うよ?」
「なぜ」
思わず眉間に皺がよる。動揺していることがただ漏れだ。現にバルトは、面白いといった笑顔をこちらに向ける。
「さぁね、行こうかアレン」
「はい!バルト様」
余裕といった様子で去るバルト。負けた感じがしてものすごく気分が悪い。
「まぁまぁ、怒んな。それにさ、怪物姫が男装じゃないと悲しむ奴いるし」
「‥‥‥誰?」
「まさか気がついてないの?文学科の司書姫だよ。パーティーの度にエスコートしてるだろう」
確かに司書姫ことアリアのエスコートを毎回しているが悲しむほどなのか?あぁあれか、踊る相手がいなくなるからか。
「これじゃ、わかってないぞ」
「そうみたいだね。とりあえず僕は先に行かせてもらうよ。今日は一番遠い棟だからね」
「走って喘息起こさないでね。人がいないと見つかるの遅くなるし」
「そんな愚を何度も起こさないよ」
エドガーはローブを翻して廊下を颯爽と歩いて行った。
「ふぅ‥‥、なんだか嫌な予感がするな。当たる確率は五分五分なんだけど」
私が守ってきたものが壊されてしまうのか?
「不安がるなよ。いつもの威勢はどこいった?」
「ピーマン頭のカーターにしてはいうじゃない」
「ピーマンってどういうことだよ。おい!」
頭が空っぽってことです。でもいいこと言ったのは事実。
「ありがと」
「なんか言ったか?もしかしてエドガーみたいにバカって言ったんじゃないよな」
「言ってないよ」
「そういえばお前講義は?」
講義?
10:30開始だよね。で現在10:25‥‥。
「遅れる。じゃ!」
窓から外に飛び出た。今から行く教室は、中庭を挟んで反対側にあるから突っ切った方が早い。私は全速力で走った。
「あれで王女なんだよなぁ‥‥。自覚が足りないけど」