表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

うちを飛び出し、彼の元へ向かう

作者: WAIai
掲載日:2026/06/24

「遅い」


うちに帰ると、父親が待っていた。

私はまずいと思いつつ、理由を一生懸命、探す。


「ちょっと勉強を教わっていたから、遅くなって…」

「ほう。何の勉強だ?」

「え、えっと…」


しどろもどろになる私。


父親は小さい頃、一緒に遊んでくれたり、ドライブに連れて行ってくれたり、好きだったのだが、今は会話すらあまりしていなかった。


「私、疲れたから、その、休むね」

「ちょっと待て」


父親が私の腕を掴み、ゆっくり言ってくる。


「どうしてこんなに時間がかかったのか言え」

「それは…別にいいでしょ!!」


手を強く払うと、私は外へ飛び出したのだった。


「こら…!!」


父親の怒鳴り声が聞こえたが、無視してスマホを取り出す。

彼に真っ先に聞いて欲しかった。


「もしもし?」

「あの!! 私!!」

「どうしたんだ?」


落ち着く柔らかな声。

私は泣きそうになりながら、一気に喋る。

「お父さんがうちにいて、何してたんだって怒ったのよ!! 私、無視しようとしたんだけど、しつこくて。飛び出して来ちゃった」

「お前、今、どこにいるんだ?」

「えっと…スーパーの近く」


私は明かりにつられる虫みたいに、スーパーに近づいていく。


「そこにいろ。俺が迎えに行くから。なるべく明るいところにいろ。分かったな?」

「うん」


スマホを切ると、私は入り口付近を選び、立つ。

ここなら彼も分かりやすいだろうと、思ってのことだった。


私は悪くない。お父さんが厳しすぎるんだ。


門限が決まっていて、ちゃんと守ったのに、怒るほうがどうかしている。

私は1人で怒り、足を鳴らす。


しばらくして彼がやって来た。


「あの…!!」

「良かった。無事だな?」


彼の心配そうな声に、自然とうなずく。

どうやら全力で走ってくれたようで、息が荒かった。


「俺が送って行くから、うちに帰るぞ」

「え…。それは!!」

「お前の気持ちは分かる。分かるけど、俺も心配だし、親だって心配していると思うぞ」


彼は私を説得しようとしているらしかった。

私も馬鹿ではないので、彼の言いたいことはよく分かった。


2人の間を、風が流れていく。

彼は息を落ち着かせると、私に優しく言ってくる。


「帰ろう? お前がふらふらしていると、俺も気が気でないし」

「…その、あの」


その時、スマホが鳴った。相手は母親だった。


「もしもし?」

「あなた、今、どこにいるの!?」


母親の心配そうな声に、私は反省し、告げる。


「スーパーにいるの。…え? お母さんが迎えに来てくれるの? うん、うん」


彼をちらりと見ると、安心したようにうなずく。

私は離れがたかったが、母親に答える。


「分かった。待っているから、迎えに来てくれる?」


それでスマホを切ると、彼が言ってくる。


「俺、お母さんが来るまで一緒いてやる」

「ありがとう」


彼は周りを見回し、私を見せないように、立ち位置を変えたのだった。


「心配してもらえるだけ、ありがたいと思わないと」

「うん。ごめんね」


素直に詫びると、腕をぽんと叩かれる。

私は彼に頭を下げ、道路を眺める。


「あ、来たかも」


黒い軽自動車を運転しているのは、母親だった。


私が明るい声を出すと、彼が動き出す。


「俺とのことは内緒な。じゃあ、また明日」

「私、自分のことばかりで、ごめんね」

「馬鹿。お互い様だ」


彼は笑みを浮かべると、車に軽く頭を下げ、行ってしまう。


私は腕を伸ばしかけたが、我慢し、車に向かって行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ