異世界転移男オンボロ食堂を救う
小池風太は、普段から新しいグルメ情報を追い求める若いサラリーマンだった。自宅のソファに座りながらお気に入りのグルメ番組を見ていると、ふとスマホをいじりたくなり、画面に目を落とした。スクロールしていると、突然、部屋が青い光に包まれた。何が起きたのか理解できないまま、彼は気を失い、次に目を覚ましたときには異世界に立っていた。
「ここはどこだ……?」
見渡すと、建物は古びた石造りで、空は薄曇り。まるで昔のヨーロッパに飛び込んだようだ。周りの人々は中世の衣装を身にまとい、街は賑やかだが、風太は自分の目的地が分からず途方に暮れてしまった。ふと、近くの小さな食堂が目に留まった。
その食堂は一見すると、かなりの老朽化が進んでいるようだった。窓は汚れていて、入り口にはボロボロの看板が立てかけられている。だが、興味を持った風太が近づくと、店主らしき年配の男性が彼を呼び止めた。
「若者よ、君も食べ物に興味があるのかい?ここは私の食堂だが、手が足りなくて困っているんだ」
風太はその言葉に少し心が動いた。彼は料理を楽しむのが大好きで、グルメ探訪をするほどの情熱を抱えていた。そして、異世界で生活するには、お金も食べ物も必要だ。いざ、食堂で住み込みで働くことに決めたのだ。
しかし、食堂の現状は厳しかった。名物と呼べる料理はなく、客足もまばらで、店主はどこか疲れた様子だった。風太は自分の好きな料理や新しいレシピを生かし、なんとかこの食堂を立て直そうと決意する。
最初のアイデアは、地元の食材を使った「海老のクリームパスタ」だった。彼は食堂の厨房で、混ぜる、焼く、煮るの手法を用いて、地道に料理を仕上げていった。まずは試作を行い、試食してもらった。そして、少しずつではあるが、食堂の雰囲気もよくなり始めた。
風太は週に一度、特別メニューを用意することにし、地元の人たちを食堂に呼び寄せた。料理の評判は広まり、次第に食堂は活気を取り戻していった。彼の情熱と努力の結果、食堂にはいつしか多くの客が訪れるようになり、街の名物となっていった。
異世界での奮闘は続く。風太は、オンボロ食堂を救っただけでなく、自分自身のグルメのセンスを磨くことにも成功したのだった。彼は新たなレシピや食材を探求し、異世界の食文化にも興味を持つようになった。
「この食堂には俺の情熱が詰まってる。こうやって人を笑顔にする料理を作り続けることが、俺の一番の幸せだ」
風太が今後どのような料理を生み出していくのか、そして異世界の人々との交流はどのように深まっていくのか、それはまた別の物語なのだろう。彼の異世界転移の冒険は、まだ始まったばかりだった。




