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「コンビニ」「花束」「瞬きする」

 コンビニ。

 それは全国のどこでも概ね同じ商品を取り扱ってくれているありがたい店舗である。

 値付けこそスーパーなどの量販店より少し割高な傾向はあるが、それでも衣服に雑貨飲み物に食料品、なにかが入り用な時はコンビニを訪ねれば大概解決する。何か物入りな時、近くにあると助かる存在だ。


 しかし、時にはその期待した物がない事もある。


「あの、ここって仏花は取り扱っていないんでしょうか?」

「すいません、うちでは取り扱ってなくて」


「そうですか」と肩を落として出ていく客を、レジカウンターの中で店員は頭を下げて見送った。客の姿が見えなくなって、


「店長ぉー。やっぱりうちで花取り扱いましょうよー。毎日同じこと聞かれて頭下げるの私もう嫌ッスよぉー」

「しかしねえ、生花ってのはねえ。管理するのに手間かかりそうだしねえ。仕事増えちゃうしの嫌だしねえ」


 のんびりした感じに間延びした声で、店長がバックヤードから顔を出した。どこか気の弱そうな、しかし言い逃れだけは上手そうな、そんな笑顔を顔に浮かべている店長に、店員は語気も強めに唇を尖らせて言った。


「毎日毎日『ありません』って頭を下げるのだって手間ですよ。同じ手間かかるなら、花の方がマシじゃないですか。花には頭下げる必要ないんだから」

「そうかなあ? しかし、それにしても、なんだってうちに来る客は皆花束なんか欲しがるのかねえ」

「そんなの見りゃわかるでしょう」


 店員はこれみよがしなため息をついて、視線を自動ドアに向けた。

 大手コンビニのロゴが入ったガラスの向こうに大きな案内板が立っていて、そこにはやはりでかでかと「其処寺霊園」と書いてある。


「隣が墓地なんスよ」


 しかも其処寺霊園はそれなりに大きな霊園で、毎日そこそこの人入りがある。そのため隣に立っているこのコンビニに、献花用の花を求める人は後を絶たないのだった。


「花を売るのは花屋さんの仕事だと思うんだよねえ。ほら、昔から言うじゃない『餅は餅屋』」

「よろず商いのコンビニ店長がなに言ってんスか。とにかく、花売りましょうよ花を」

「そうだねえ……」


 そういうことになった。



「すんません、ここって花は売ってないんです?」

「すいません、うちではまだ取り扱ってなくて」


 レジカウンターで店員はいつも通り頭を下げた。「参ったなあ」と肩を落とし、客は踵を返す。

 と、バックヤードから間延びした声が、


「あ、花なら今朝入ったよ」

「え、マジですか? なら表に出しといてくださいよ」客を呼び止め、「すいません、あるみたいなんですぐ出します」

「しかしねえ、ちょっと手違いがあったというか、」

「いいから店長、早く持って来て下さいよ」


 いかにも気が進まない、という顔の店長が手にブツを抱えてバックヤードから出てきた。

 店員は眉を顰めて、


「……あの、店長。これ、確かに花は花ですけど、」

「いや、しかしね。案外こういうのだってウケるかもしれないじゃない」

「お墓参りでウケ狙う人ってあんまりいないと思うんですけど」


 とにかく花は花なんだから。そう言うように身振りで話を打ち切って、店長は持ってきた花束を客に差し出した。いつにない営業スマイルを顔に浮かべて、


「どうでしょう、お墓にたまには彩を」


 差し出された「薔薇の花束」を見つめて、客の目がぱちくりと瞬いた。


終わり。

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