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祭りのあと、雑記

この作品の大筋はノンフィクションですが、個人の特定を避けるため一部に脚色・創作を加えています。

 今回の入院にかかった費用は、二回の入院と外来診療でしめて二十万円と少し。プラス、入院中のアメニティセットレンタル料が一万二千円ほど請求された。


 ご存じの方も多いと思うが、健康保険には高額療養費制度というのがあって、一ヶ月の医療費が上限額を超えると差額が払い戻される制度がある。併せて限度額適用認定を申請すれば、病院窓口で支払いをする際に上限額を計算されて、超過分は請求されなくなる。

 ただこの制度、適用が月単位で、月を跨いでしまうとリセットがかかる。今回は五月から六月にかけての入院・通院だったが、これが同じ月内にまとまっていれば費用面がもう少しお得になっていたかもしれない。

 とはいえ、ありがたい制度に助けられて、延べ二週間も入院した割にはお安く済んだと思う。


 さらに私には強い味方がいた。二十年以上かけている生命保険である。家族は夫だけなので、死亡給付よりも医療・介護に強いプランにしていた。

 担当の外交員さんは、独身時代からずっとお世話になっている人で、年齢も同年代。用のない時でも、たまにLINEのやり取りをしていた。

 一回目の入院をした時にさっそく連絡を入れたら、すぐに返信があって、お見舞いの言葉と一緒に保険給付の説明が送られてきた。実に頼もしい。


 入院費用と、それに付随する外来診療費分も補償されるタイプにしておいてよかった。ステントの抜去処置が完了してから、まとめて給付の請求手続きをした。ネットで必要事項を入力して、領収書の画像を添付して送信。とっても簡単。

 二週間ほどで給付金満額が振り込まれた。実費を遥かに超える金額で、こりゃ詐欺をする人の気持ちが分かるわ、と複雑な気持ちになった。


 医療保険、大事です。若いうちなら保険料も安いはずだから、万一に備えて入っておくことをお薦めします。

 それから、自分の会社の規定や、健康保険制度をよく調べておくことも重要。私は有給休暇を充てたけれど、欠勤になると当然にその分の給料が減ってしまう。健康保険には傷病欠勤中の給与の一部を補償する制度もあるので、会社の担当者に相談してみるといいだろう。




 日本人で胆石を持っている人の割合は、十人に一人と言われている。


 胆嚢の中で大人しくしていて、特に悪さをしなければ、経過観察のみで治療を要しない。実際、父方の祖母は胆石持ちだったが、症状が出ないまま、一昨年百一歳で他界するまで逃げ切った。

 一方、同じ身内でも父方の叔父は、十年以上前に胆嚢摘出手術を受けていた。結構悪化させてしまったらしく、腹痛と高熱でえらい目に遭ったとのこと。

 それから最近になって知ったのだが、父方の叔母と、母方の祖父も同じ手術を受けていたのだそうだ。こうなるともう遺伝かな、とも思えてしまう。

 母方の祖父はすでに鬼籍に入っているが、叔父と叔母は今でも元気だ。というか、彼らくらいの年齢になるとそれぞれ別の健康問題が降りかかってきていて、胆嚢の有無などほとんど関係なくなっているようだ。


 私はと言うと、手術後しばらくは消化不良を起こしやすくなって、ちょっと食べ過ぎるとお腹が緩くなったり、今まではほとんど経験のなかった胸焼けを感じたりした。胆汁を濃縮する器官がなくなって、十二指腸に直に放流されているのだから仕方がない。

 しかしそれも時間の経過とともに収まって、今日現在、日常生活に支障はない。ただし、脂っぽい物は摂りすぎないように気をつけている。

 お腹の傷は、穴を開けたところは虫刺されの痕のようになっている。メスの入ったお(へそ)はというと、ソーセージはなくなったが、中に豆が詰まったような見た目になった。ぎりぎりデベソではないと信じたい。


 少しばかり痕が残ってしまったが、もうあの痛みを感じなくてすむようになったと思うと、ものすごい開放感である。

 特に今年の春頃は毎週のように腹痛が起きていたので、食事の度に気がかりだった。今でも体があのキリキリを覚えていて、少し不安になることもあるくらいだ。


 消化器官に負担をかけないよう、暴飲暴食は控え、バランスの良い食事を心がけたい。

 自分の体との約束である。

  



 最後に――。


 持ち帰った胆石を収納するため、ジュエリーケースを購入した。指輪やピアス用のごく小さなもので、カラフルなガラスビースで装飾されている。

 そんなもん取っといてどうするの、と同僚や友人に呆れられたけれど、捨ててしまうのも忍びない。自分の体で生成されたものだし、たぶん成分は赤血球のなれの果てである。

 ずいぶん痛い思いをさせられたが、何かの縁で体に留まってくれたのだろうから、粗末には扱えない気がした。


 二十八粒の黒い石は、ケースにぴったり収まった。


 私が先に旅立ったら、夫はこれの処遇に困ってしまうかもしれない。形見にされるのも気色悪いので、棺に入れるよう遺言を書いておこうと思っている。




「アラフィフ女の入院日記」完

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― 新着の感想 ―
軽く読んじゃいけないものなのかもしれないけど、エッセイで語りかけてくる感じがとっても親近感の湧く感じのものだったので僕的に気軽にドンドン読んでいってる感触でした。でも、なんでしょうね。ご主人様との夫婦…
 完結まで拝読させていただきました。  実に面白く(と言ってはお体のことなので失礼だけれど)、ためになるエッセイでした。  経験したのない分野の体験や仕事といったものを具に聞くのは、やはり興あることで…
投稿お疲れさまでした。 実は私も5年前、コロナの真っ最中に同じ病にかかりまして。胆管炎で入院して、そのあと胆嚢摘出したのは同じなのですが、途中にCTで別の問題が見つかりましてそちらの対処を先にしたので…
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