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1.プロローグ
高校生の頃。
教室の真ん中で、笑っていた“同級生”が――
今では、テレビの向こう側で、誰かの憧れになっている。
街を歩けば、雑踏の中に君がいる。
ビルの広告、電車の中吊り、雑誌の表紙。
眩しすぎるほどの笑顔が、いたるところに咲いている。
あの頃の私は、
君を“ただの同級生”だと思っていた。
だけど今の君は、“誰かの特別”になってしまった。
人だかりの隙間から、ふいに目が合う。
向けられたその笑顔を、“特別”だなんて――思えない。
思う勇気も、持てなかった。
「高橋!」
名前を呼ばれる、その一瞬さえ。
あの日と同じ声も。
“特別”なんて、思ってはいけない気がして。
私は今日も、
君の“ただの同級生”を演じる。