23
「え、あれ、ノーフェ君!?」
前線ではレイン密漁団とパル愛護団体の熾烈な争いが繰り広げられていた。
ちょうど前線から離れたタイミングだったのか、シオラが頬に汗を垂らしながら苦笑している。
「何々? どうなったの?」
ゾーイは塔の外に出されたことに、理解できずにスマイルの上できょろきょろとしている。
「あー、すまん。敗けた」
「なんで!?」
「タイムアップだ」
俺は、素直にそう白状した。
手持ちのパルも全滅。
俺の体力も、ゼロになったらどうなるのか知らんけど、死んだら死ぬだろうし、そもそも。
そんなリスクを冒してまで、俺がやることじゃねぇだろ。
「おーい、再戦してくれよ。君にはパルボックスから無限の戦力があるはずだろう?」
「えー、いいよ。シオラは見てねーからわかんねーかもしれないけど、無理だよあんなんに勝つの」
「すでに何人も重傷者が出ている。今さら退けないぞ」
「お宅らの喧嘩だろ。俺が知ったこっちゃねー」
「いや、君が始めた物語だ」
ばしゅ、と弩が撃ち放たれ、シオラはそれを眼前でばぎりと剣を振るって叩き潰す。
何だよ、俺が始めた物語って。お前はアーロンかエレンイェーガーかよ。
「……ノーフェ、大丈夫? いけそう?」
「いや、無理そ」
「そんな……ねぇ、もう一回挑戦しようよ! 向こうだって弱ってるかもだし、今度は勝てるかも!」
「あー、んー」
俺はもう本当に正直、どうでもよくなっていた。
一度敗けて思い知ったということもある。
でも本心は、多分、違う。
怖いんだ。
パルをすべて失い、あんな強大な敵とやり合ったあの戦闘が。
負けたら恥ずかしいとかみっともないとかじゃないんだ。
死ぬんだ。
人生のすべてが終わるんだ。
そんな重大な選択がさ。
俺にとって「クッソどうでもいい組織同士のいがみ合い」で決めたくないんだ。
だから、もう。
どうでもいいんだ。
「……あたしは行くよ」
「ゾーイ?」
「あたしはあたしとみんなのために、最後まで戦う。塔なんてどうでもいいけどさ、あたしに残されたみんなのけじめをつけて、次に進むよ」
「次?」
「あたしはゾーイ密漁団を辞めて、新しい旅に出るの」
「何を目指すの?」
「新しいあたし!」
そう言ってゾーイは、朗らかに笑った。
「あんたとの冒険、まぁまぁ楽しかった」
ツインテールの先を指でくるくるしながら。
「組織のしがらみにも縛られず、行きたい場所に行って、望んだ空気を吸うの」
びしっ、とパル愛護団体の塔を指さす。
「それがあたし、ゾーイ・レインの人生になるの!」
そして、俺のほうをちらりと見た。
「……その旅に、あんたがいてくれてもいいわ。ひ、ひとりよりはマシだからね!」
意外と寂しがり屋の孤独なボス。
「……お守り、ありがと。行ってくる」
そして、ゾーイは塔の中に入っていった。
そうか、あいつも塔には入れるのか。
「あー…………」たっぷり空を見上げてから、嘆息。「クソ」
古代端末からパル端末を選択する。
『特殊な施設に近すぎるため建設できません』。
空気読めよ、お前は。




