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「クソっ」
今さらだ。
もう引けないんだから進むしかないだろが。
「ペンタマ……ってもう死んでるー!?」
弱い、あまりにも弱いぞペンギン! ごペンなさいしなさい!!
「一体、何体のパルを奴隷にしているのですか」
「あと2体」
まだだ。
俺にはまだ新しい切り札だってあるんだ。
取って来たばかりのフラリーナを召喚。
「その子は……まさか、聖域のパルを!?」
「捕まえてきてやったぜ」
「警備の者はどうしたのですか!」
「あ? いなかったよ、そんなやつら」
「不在を狙うとは、なんと非道な……!」
「いや、そっちのスケジュールなんて知らないんだが」
リリクインは爆散する種をばらまき攻撃を仕掛けてくる。
ゾーイたちをも巻き込む広範囲攻撃だったが、さすがはエリートパル。耐える。
HPが通常のパルと比較にならないほど高い。ゾーイのスマイルほどじゃないが、戦える。
いいぞ、こいつを軸に、時間をかければ勝てる。
俺は必死に大地を転がりながら、三連弓をありったけ振り絞って放った。
100本以上あった矢筒が、空になった。
「ぜひー、ぜひー……おい、ゾーイ、HPは」
「はぁ……まだ、余裕」
まだ余裕ですか、そうですか。
こっちはもう手持ちが尽きて目の前が真っ白になってるぜ。
俺は久しぶりに槍を握った。
ほとんど使うこともなかった石の槍。
舞踏家みたいに、格好よく槍をぶんぶん振り回してアチョーとかできない。
愚直に突いて攻めるしかないが。
「……」
間近に捉えたリリィ&リリクインが、とてつもなく大きく見えた。
俺のパルたちは、こんなデカいのとやり合っていたのか。
草の葉を散らす攻撃も、周囲一帯に炸裂弾を放つタネマシンガンも食らい、バリアはあっという間に剝がされて肉が抉れた。
ダメージが、蓄積されて。
HP6万に対して、俺のHPは700しかなくて。
その差はすぐに開いていって。
―――ジジ。
死を覚えた瞬間に聞こえた、ノイズ音。
『00:03』。
……!?
見れば、リリィ&リリクインの体力ゲージの下に、時間がカウントダウンされていた。
いつから?
いや、最初から?
頭の中が高速回転する。
何のためのカウントダウン? 時間制限? 何の。ボスの? 戦闘時間に制限が? だとしたら。
3……2……1……。
『DEFEAT』。
「……は?」
思わず声に出た。
DEFEAT。敗北の文字に。
まだ敗けてないとは言えなくて。
俺は、俺とゾーイは、塔の外に摘まみ出されていた。




